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柏U-18MF揖斐俊斗は自己主張力を高めて、世代屈指のレフティへ

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柏レイソルU-18のコンダクター、MF揖斐俊斗

[2020シーズンへ向けて](※柏レイソルの協力により、電話取材をさせて頂いています)

 間違いなく特別な力を秘めている左足を振るい、周囲の耳目を集めるプレーをピッチで繰り出すだけで、もう満足できるレベルではない。その自覚は今まで以上のものを自分に突き付けている。「試合中だったら周りをもっと動かして、自分が守備を動かすぐらいの気持ちでプレーしたり、自分がパスを欲しい所で出なかったりしたら、ボールを持っている人にもうちょっと強く要求してみたり、そういうことをしていきたいですね」。柏レイソルU-18のコンダクター。揖斐俊斗(3年)の“自分革命”は確実に始まっている。

 45分で違いを見せたのは、昨シーズンのプレミアリーグEAST開幕戦に当たる尚志高戦。「1年生の時はベンチ入りしたことがなくて、緊張していたのもあるんですけど、前半が始まった頃はベンチで『プレミアってどんな感じなんだろう』って、観客みたいな感じで見ていました」という揖斐は、1点のビハインドを追いかける後半開始からピッチへ解き放たれる。

 受けて、捌く。付けて、受ける。ボランチの一角に入ると、本来のチームの持ち味であるパスワークに加速装置を設置。すると、スムーズにボールが回り出す。コンビを組んだ戸田伊吹との相性もバッチリ。試合は染野唯月のハットトリックで0-3と敗れたが、「後半にピッチへ入った瞬間『ああ、こんな感じなのか』と。自分が思った以上にやれたというか、周りのサポートがあったからこそなんですけど、やりやすかったですね。たぶん去年で1、2を争うぐらいのゲームでした」と大きな手応えを掴んでみせた。

 2節以降はスタメンをがっちり確保。9月にはケガで数試合を欠場したものの、終盤には戦線復帰し、2位という好結果を支える格好となったが、シーズン全体で考えると、やや満足できないパフォーマンスだったと語る。

「去年は比較的波があったので、良い試合があったり、悪い試合があったりという感じでした。1つ上の代でやっていたという視点から見たら、『良くやれていた方なのかな』とも感じるんですけど、プロになるような選手だったら、もっと活躍できていたし、もっとやれたのかなと。自分のプレーをもっと出せるように主張したり、3年生にもっと自分の思い描いているプレーを伝えることは、できたかもしれないです」。

 それゆえに、最高学年となった今年に懸ける想いも強い。「ボランチということもありますし、チームの中心になって戦ったり、キャプテンではないんですけど、自ら先頭に立ってプレーすることは意識しています」。自らが先頭に立つ。明確な意志が言葉の端々に滲む。

 憧れは小さい頃からチャビとアンドレス・イニエスタだが、参考にしている選手としてアカデミーの先輩を挙げる。「横浜FCの手塚康平くんを参考にしています。ボールの持ち方だったり、キックも上手いですし、ポジショニングもメチャメチャいいので、そういう所が参考になりますね」。ただ、意外なことに、自身がレフティだということへのこだわりはないという。

「左利きの選手をあまり意識してこなかったですし、そんなにストロングだとは感じていないんです。自分のチームは左利きが多いので、そこまで特別な選手ではないですし。でも、自分のプレースタイルで左利きという選手はそんなにいないと思うんですよ。だから、もっと自分を出してもいいのかなというのはあります」。

『自分のプレースタイル』を問うと、すぐに答えが返ってくる。「バランスを取りながらうまくチームを動かしたり、パスで流れを変えたり、攻守においてゲームメイクできる所が一番だと思います。ただ、代表選手はみんな試合を決め切る力だったり、そういう部分が凄いですよね。同点の時に、後半のアディショナルタイムで点を決められる力強さとか」。

 口にした“代表”の2文字。U-17日本代表に招集されたこともあったが、ワールドカップメンバーには選出されなかった。その時の経験も、“自己主張”の重要性を実感する出来事になっている。「自分はサイドバックで代表に選ばれていて、中国遠征で1回だけ中盤もやったんですけど、そこであまり良いプレーが出せなかったので、そう考えても自分の力を出し切る所が、自分にはちょっと足りないかなと思います」。

 U-15から数えて6年目となる今年は、アカデミーで過ごすラストイヤー。レイソルへの感謝が口を衝く。「このチームでできることはもう2度とないと思うので、結果を残したいです。専用のグラウンドがあって、ボールも全部準備されていて、コーチもみんな優しい人たちですし、もう最高で、本当に恵まれています。だから、獲れるタイトルは全部獲りたいです」。そのために自分を変える覚悟は十分に整っている。

「トップの人とかはみんな自己主張が強いと思いますし、そうじゃないと通用しないはずなので、そこは高めていきたいですね。今年だったら試合数は少なくなってしまいますけど、プレミアで5ゴール5アシストぐらいは行っておきたいかなと。個人的には代表に入れるならばもちろん入りたいですし、世界で戦えるような選手になりたいです」。

 心なしか、今まで以上に言葉へ力が宿っているような気がした。柏レイソルU-18のコンダクター。揖斐俊斗の“自分革命”は確実に始まっている。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

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