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サイズ不足、昇格見送り…反骨心持って成長する静岡学園GK野知滉平は選手権優勝も「まだまだやることはある」

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静岡学園高のGK野知滉平は足元の技術などをより磨いて上のステージへ

[2020シーズンへ向けて](※静岡学園高の協力により、電話取材をさせて頂いています)

 偉業を成し遂げても、「まだまだ」の姿勢で上を目指し続ける。GK野知滉平(3年)は、今年1月の全国高校選手権で静岡学園高の正守護神として日本一。身長は177cmと特別なサイズがある訳ではないが、準決勝の矢板中央高戦や決勝の青森山田高戦では勝負どころで好セーブを見せたほか、クロスへの対応の良さなども発揮し、静岡学園にとって24年ぶりとなる全国制覇に貢献した。

 野知は中学時代、静岡県東部の三島市から清水エスパルスジュニアユースの練習に連日長距離移動して通い、プロを目指していた選手だ。中学3年時はJFAプレミアカップ優勝、全日本ユース(U-15)選手権3位に貢献したが、ユース昇格は叶わず。だが、プロになる夢を諦めることなく、足元の技術を身につけるために“元祖・技巧派軍団”静岡学園へ進学した。

「ユースに上がれなかったというのは一つの大きな分岐点で、自分でプロに行くにはどうしたら良いのか考えて静岡学園に来て、この2年間ちょっとくらいの間がむしゃらにやってきました。自分は背がそんなに大きくなくて、大きなGKと比べてしまうと、身長で勝負する訳にはいかないので、静学に入ったのも“小さいGK”として足元などで勝負したいという思いがあったからです」。

 静岡学園では地道なトレーニングで技術レベルを向上。加えて、現鹿島の先輩MF松村優太らのシュートを受け続けることで磨いた武器・シュートストップの部分などを認められ、2年で先発の座を獲得した。そして、選手権では強力攻撃陣の活躍やDF陣のサポートもあって準決勝まで全5試合無失点。そして、昇格見送りの悔しさを一つ晴らす高校日本一を達成した。個人としても、攻撃型の静岡学園を支えた一人だったことは間違いない。だが、大会優秀選手に選出されることはなかった。

 14年大会以降、選手権優勝校の正GKは同大会の優秀選手に名を連ねている。野知には最後の局面でチームのゴールを守り切り続けたという自負も。その一方で、「優秀選手のGKのプレーを見ると、自分よりも良いプレーをしているなと感じています。他のGKは存在感があったり、チームのリーダーとして堂々とプレーしていた」と素直に力不足を認める。

 だからこそ野知は今年、より存在感のあるGK、そして静岡学園から求められるGKになる意気込みだ。「静学なので、蹴るだけじゃなくて、繋いでGKからも攻撃のチャンスを作ったりというのが(GKコーチの)浅野(利紀)さんや(監督の川口)修さんの考えでもあるので、そこを体現するというのが目標です」。特別な身長の無い野知がプロになるために求めてきた足元の技術。J1優勝GKの朴一圭(横浜FM)のように、後方から攻撃の組み立て、ゲームコントロールする力を磨き、公式戦で表現するつもりでいる。

 選手権で優秀選手に選ばれなかったことはもちろん悔しい。だが、それを後悔したりする以前に、自分のレベルをもっともっと上げなければならないという考えだ。「選手権に出させてもらって優勝したことは凄く大きなことを達成した感じもあったんですけれども、それでも自分の中でパフォーマンスを確認してみたらプロに行くようなGKじゃないなとまた見えてきて、まだまだやることはあるというのが今の感覚です」。現在は新型コロナウイルスの影響で休校が続き、満足なGKトレーニングができていない状況。試合勘の部分など不安はあるが、目標を決めて肉体強化を続けてきた。反骨心を持って成長してきた守護神は、今年も逆境に屈することなく進化して「選手権連覇」やスカウトたちの評価を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)

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