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[蹴活生ガイド2020(関西)]“リスタート”4年目。意識、メンタル、そしてプレーも変えた大阪学院大MF川崎健太郎

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大阪学院大の主将を務めるMF川崎健太郎

 関西学生2部Aリーグから1部リーグに復帰する大阪学院大の中心選手として期待されるのが、ボランチのMF川崎健太郎(4年=名古屋U-18)だ。新チームになってからは、1部リーグでの戦いを見据え、「自分たちより格上のチームしかいない。走る部分で上回るしかない」と走り勝つサッカーを志向し、今まで以上に走力トレーニングを重ねてきた。攻守の切り替えも今まで以上に高く意識を保ち、全員で泥臭く戦うのが理想とするスタイルだ。2月に行われた天皇杯予選では組織的なプレスが機能し、手応えを掴んだ。チームのけん引役として獅子奮迅を誓う川崎は、「2部で悔しい想いをしたので、今年は皆でタイトルを獲りたい」と活動再開後を見据える。

 今でこそ頼れる主将としてピッチに君臨する川崎だが、ここまでのキャリアは順調とは言い難い。高校時代は、名古屋U-18の司令塔としてプレー。高校3年生の冬には、Jユースカップで準優勝を果たし、確かな自信を掴んだ大阪体育大へと進んだが、レベルの違いに苦しみ、一年での退学を決意。当時について、川崎はこう振り返る。「大学でやってやろうという気持ちで入学したけど、思い通りに行かなかった。レベルが高くて、自分のプレーが上手く出せなかったのを大学のせいにしてしまった。今になって思うと自分と向き合えていなかった」。

 大阪学院大でリスタートを切ってからも、「『俺は中退してしまった選手なんだ』と心のどこかで引きずっている自分がいた」。新天地では1年目から出場機会を掴んだが、フル出場はごくわずか。「自分が試合に出るので、頭がいっぱいだった」と、目の前の試合をこなすだけで精一杯だった。そうした時期に最寄り駅で偶々出くわしたのが、中学時代からの知り合いだったFW井上直輝(現・秋田)だった。自身の心境を打ち明けると、返ってきた「過去は変わらない。今いる場所で頑張れば良い」との言葉が心に響いたという。

 ライバルの助言や自身の意識変化によって、ここから川崎のメンタルは大きく変わる。「上手く行かないと周りのせいにしていたけど、結局は自分自身がどう動くかが大事だと思えるようになった。今いる場所で結果を残すしかないと思うようになった」。試合への出場時間が増え、2年目の夏には関西選手権初優勝に貢献。「これまではスタメンに定着できていなかったので、自分の良いところを見せようと考えていた。でも、関西選手権から試合に出続け、勝っていくうちに自信がついたし、チームを勝たせたいという意識が強くなった」。

 意識が変われば、プレーも変わる。これまでは武器である左足を駆使した展開力が持ち味だったが、チームを勝たせるために運動量を増やし、より守備を意識するようになった。練習でもボール奪取の激しさを追求し、逞しさは増している。

 大学生活最後の年を迎えた今年は、プロ入りを目標に掲げるが、「チームが勝たないと評価されない。自分が主将なので、チームを勝たせるために引っ張っていきたい」とあくまでチームの勝利を最優先に考える。持ち味の展開力に加え、新たな武器である戦う姿勢を発揮できれば、上のステージも見えるはず。白星を積み重ね、目標を達成できるか期待したい。


※この連載は、各チーム承諾の上、「蹴活生」たちに電話取材しています。

執筆者紹介:森田将義(もりた・まさよし)
1985年、京都府生まれ。路頭に迷っていたころに放送作家事務所の社長に拾われ、10代の頃から在阪テレビ局で構成作家、リサーチとして活動を始める。その後、2年間のサラリーマン生活を経て、2012年から本格的にサッカーライターへと転向。主にジュニアから大学までの育成年代を取材する。ゲキサカの他、エル・ゴラッソ、サッカーダイジェストなどに寄稿している。

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