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課題改善取り組み、体重も8kg増量。矢板中央の大型MF新倉礼偉が“ポテンシャルは…”の評価を覆す

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矢板中央高の大型MF新倉礼偉(右)

[2020シーズンへ向けて](※矢板中央高の協力により、電話取材をさせて頂いています)

「ポテンシャルは、凄い」という評価を今年こそ、覆す。矢板中央高MF新倉礼偉(3年)は、185cm超の身長を持つ大型プレーヤー。高さを活かしたヘッドと運動量を持ち味とする新倉は今年、FWとしてもテストされてプレーの幅を広げている。

 新型コロナウイルスの影響による休校期間は、課題の技術面やアジリティを重点的に自主トレーニング。新倉はテクニカルなチームであるシュートジュニアユースFC(神奈川)出身だが、中学3年間で身長が約30cm伸びたことによって技術が追いつかず、課題となっていた。

 先のことを考え、この休校期間中に自分と向き合ってきた。また、ピッチ外では今まで苦手だったという筋トレや体幹トレに時間をかけ、上半身の日、下半身の日と分けながらそれぞれ約2、3時間実施。加えて体重を増やすために食事は必ず大盛りのご飯3杯、高タンパクの食品やピーナッツなど脂質の高いものも積極的に摂取し、選手権前に比べて8kgも増量したという(現在80kg)。来校した2年前のエースFW飯島翼(現栃木シティ)にも「オマエ太くなったな」と認められた肉体強化。ゲームでどれほど走れるかは全体練習で確認しながらになるが、「(体幹も強化され)当たり負けは結構しないかなと思っています」と手応えを感じている。

 新倉は昨年、インターハイ予選、インターハイ、選手権予選と先発出場。だが、選手権全国大会では先発落ちし、3試合の交代出場のみに終わった。「自分の中で油断とか全くなかったんですけれども、選手権を意識した時に自分のプレーがあまりできなくなっていって、そこから調子を崩していったのがスタメンじゃなかった理由だと思います。(加えて)覚悟や意地が最後の3年生に比べると、自分はそれなりに、でした。それはめちゃくちゃ反省しました」と新倉。だが、3年生の懸ける思いと自分の未熟さを知って3年目に臨むことができるのは大きい。また、彼には覆したい評価がある。

「ずっと小さい頃から“ポテンシャルは高い”みたいなことをずっと言われていて……」。抜群の高さと走れるという武器があることは間違いない。だが、高校進学後、新倉は周囲からの期待に応えられていないと分析する。選手権も与えられたチャンスで結果を残すことができなかった。

「今まで期待されることが凄く多かったんですけれども、期待に応えるような結果を残せた試合がどれだけあったのか考えたらほとんど無いなと思って、今まで自分を信じて使ってくれた(高橋健二)監督や(金子)文三さんやコーチ陣、支えてくれた親、家族には一番最高のステージで結果として恩返ししたいなと思っています」

 金子コーチは新倉について「技術やパワー、スピードにしてもまだまだ未完成です」という一方、「見た目以上に努力家なので、今後が楽しみですし、将来性抜群の選手です」。努力する才能を持っていることが、彼への期待を大きくしている。新倉は1年時から練習では常に最後までグラウンドに残ることを心掛けてきた選手。半年前に先輩たちの覚悟を実感し、より自分の課題と向き合ってきたMFは、さらに強い決意を持ってこれからの半年間に臨む。

 目標は「日本一しか目指していないです」。個人的には無力感だけが残ったという半年前の選手権。同じ思いは絶対にしない。ポテンシャルではなく、プレーを認められる選手になること。そして、矢板中央に栃木連覇、初の日本一をもたらし、チーム・家族に恩返しする。

(取材・文 吉田太郎)

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