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秋田工が25年ぶりの決勝進出!無名の選手たちが走って、耐えて西目に逆転勝ち!:秋田

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25年ぶりの決勝進出決定。歓喜の秋田工高イレブン

[10.22 選手権秋田県予選準決勝 秋田工高 2-1 西目高 ソユスタ]

 秋田工が25年ぶりの決勝進出! 第99回全国高校サッカー選手権秋田県予選は22日、準決勝を行い、秋田工高が10番FW二木楽人(3年)の2ゴールによって西目高に逆転勝ち。95年度大会以来、25年ぶりとなる決勝進出を果たした。秋田工は、24日の決勝で全国大会初出場を懸けて明桜高と戦う。

 1949、50年度の秋田県予選で優勝している秋田工だが、当時は1県1代表制ではなかった時代。未だ全国大会出場のない伝統校が、悲願の舞台まであと1勝に迫っている。西目の反撃を耐え抜いて掴んだ決勝の切符。CB高橋海主将(3年)は「最後、本当にもうキツかったですね。メンタル的にも、体力的にもキツかったけれど、『絶対に勝つ』という気持ちがあったからこそ、乗り越えられたと思います」と胸を張った。

 伊藤英樹監督は「3年生はスタメンも途中交代もいる。コロナの影響で就職試験も1か月ズレて大変だと思います。でも、彼らは一生懸命頑張って、サッカーが好きでやっている。中学校時代有名選手はいないですけれども、秋田工業に来て、一生懸命やれば決勝に行けると証明してくれた」と“無名の選手たち”が成し遂げた決勝進出を讃えていた。

 対戦した西目は全国大会出場13回の強豪校。安田洋介監督が「3年生が凄く良く頑張る子たちだった」というチームは、準々決勝で宿敵・秋田商高をPK戦の下し、その連覇を5でストップしていた。

 大きな壁を破った西目は、準決勝でもファーストプレーから気迫を感じさせるような動き。2分には、この日右サイドで印象的な動きを続けていたWB熊谷駿(3年)のクロスからFW嵯峨琉央(2年)が決定的なヘッドを放つ。

 だが、常に「守備からだぞ!」という声の出ていた秋田工は、GK草皆竜馬(2年)がビッグセーブ。その後も相手の勢いを凌ぐと、ボールを握って前進する回数を増やしていく。そして、俊足FW二木が突破口となっていたほか、右サイドのMF加賀谷空(2年)らがキープ力を発揮。加えて、前線からの守備がハマっていた秋田工は、幾度から西目のビルドアップをインターセプトし、ショートカウンターへと持ち込んでいた。

 19分には敵陣左サイドで二木がインターセプト。そしてスルーパスでFW鎌田爽太(3年)が抜け出す。GKとの1対1はシュートが左へ外れたものの、相手を脅かすことに成功していた。一方の西目も、ポゼッションに185cmDF佐藤康成(2年)の左足キックや嵯峨のキープ力をアクセントにして攻め返す。

 前半36分にはロングフィードで10番FW伊東真健(3年)が上手く抜け出し、GK不在のゴールへ右足シュート。だが、秋田工は左SB原田隆威(2年)がシュートをブロックして先制点を阻止する。0-0のまま前半を終えると、秋田工は後半開始からFW西井太陽(1年)とMF佐々木敬吾(2年)を同時投入して攻撃のギアを上げる。

 だが、先制したのは西目の方だった。後半3分、MF堀田真央主将(3年)らのパス交換から伊東が右足ミドルにチャレンジ。これがGKの頭上を抜けてゴールに突き刺さった。歓喜の西目イレブン。それでも秋田工は失点直後、西井のパスで右サイドを抜け出した二木が飛び出したGKの脇を抜くシュートを決めて同点に追いついた。

 秋田工はこのゴールで勇気を得た。幾度かゴール前のシーンを作られていたものの、CB池端莉玖(2年)や高橋の好カバーで勝ち越し点を許さない。足を攣らせる選手が増え、体力的には厳しかったはずだが、踏ん張り、次の1点を奪い取る。

 26分、右SB渡邊恭輔(1年)のパスで再び右サイドを抜け出した二木が右足で再びゴールを破る。10番の大仕事で秋田工は逆転。だが、前線でキープ力を発揮していた西井が接触プレーで負傷交代してしまう。

 対する西目は諦めずに攻め続ける。そして、ミドルシュートやクロスを増やした。だが、粘る秋田工の前に決定打を放つことができない。ラストプレーでDF齊藤大空(1年)が合わせたヘディングシュートもわずかに枠上へ外れて万事休す。秋田工が1点リードと決勝への切符を死守した。

 秋田工は一昨年度大会まで3年連続でベスト4。だが、昨年は気負いもあったか、初戦敗退に終わってしまった。「選手も親もこのままではいけないという思いが伝わってきた」(伊藤監督)というチームは昨年末、それまで行っていなかった関東遠征を敢行。強豪校やJクラブユースの胸を借りた。

 選手権出場を実現するため、選手権開催地・関東での冬を過ごした秋田工。高橋は「関東の強いチームとできて、結果的に歯が立たなかったけれど、全国でああいうやつらと『またやりたい』という気持ちができて良かったです」と振り返る。春に再び組んでいた関東勢との練習試合は新型コロナウイルスの影響で実現しなかったが、目線を引き上げてきたチームは日常の努力の成果も発揮して歴史を塗り替えた。

 初の全国出場を懸けた対戦相手は第1シードの明桜。伊藤監督は「こっちはチャレンジャー。今まで通り、普段通り、粘り強さとか、普段の練習の成果が出せれば」と語り、高橋は「もう一個『また越してやろう』という気持ちがありますね。この代で(全国へ)行きたいです」と力を込めた。この日のように全員で粘り強く戦い抜いて、今年の冬は関東で選手権の舞台に立つ。

(取材・文 吉田太郎)
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