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福井・丸岡、強豪ひしめくプリンス北信越を初制覇! 県立校の24年ぶり快挙を導いた“中学vs高校”週1マッチ

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プリンスリーグを制した丸岡高

[11.23 プリンスリーグ北信越1位決定戦 丸岡高 4-2 金沢U-18 丸岡スポーツランドサッカー場]

 高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ北信越は23日、1位決定戦を行い、丸岡高(福井)がツエーゲン金沢U-18(石川)を4-2で破った。丸岡は前身トーナメント制の高円宮杯に出場した1996年以来、24年ぶりの北信越制覇。コロナ禍の厳しいシーズンを勝負強さで乗り越え、再昇格2年目で新たな偉業を成し遂げた。

 新型コロナウイルスの感染防止策により、2グループに分かれて行われた今季のプリンスリーグ北信越。新潟・長野勢のAグループ、石川・福井・富山勢のBグループで総当たり戦を行った後、各組1〜2位と3〜4位、5位で順位決定戦が開催されるというレギュレーションの中、優勝決定戦は星稜高(石川)、富山一高(富山)、カターレ富山U-18(富山)という強豪ひしめくB組をともに3勝1敗の好成績で勝ち抜いた丸岡と金沢の激突となった。

 試合は前半4分、早々に動いた。丸岡は序盤からハイプレスで金沢をのみ込み、左サイドを突破したMF川中浩夢(2年)がゴール前にアウトスイングのクロスボールを送ると、今月8日に行われた選手権予選決勝でも2得点を挙げていたFW河上英瑞(3年)がゴール前で反応。巧みに頭で合わせたボールがゴールマウスに吸い込まれ、先制に成功した。

 ところが、その後は金沢が一気に盛り返した。最終ラインでボールをつなぎながら丸岡のプレッシングを上手にいなすと、前線へのミドルパスを有効に使って陣形を回復し、最前線のFW駒沢直哉(3年)を中心にダイナミックな攻撃を展開。すると14分、バイタルエリアに顔を出したFW平川悠人(2年)が縦パスをうまくそらして裏に送り、抜け出したFW酒尾竜生(3年)がドリブルからニアに突き刺して同点に追いついた。

 勢いに乗る金沢はさらに前半28分、DF波本頼(2年)の相手のプレッシングを誘い込む球出しからDF小椋奏虎(3年)が相手の最終ライン裏にロングキックを蹴り出し、駒沢がGKを強襲する強烈なシュート。そして29分、これで得た左CKをMF宮本貫太(3年)がファーに送ると、駒沢のヘディングシュートは一度は相手にGKに阻まれたが、自ら跳ね返りを拾って頭で押し込み、逆転ゴールとなった。

 今季プリンス昇格組の金沢は、ベンチから「相手を見てるか」「相手を引き出せ」という的確な指示が出され、選手からも駆け引きを意識した声が飛び交っていた中、見事に狙いを形にした逆転劇。2018年に石川県選抜として福井国体を準優勝した現3年生世代と、金沢U-15として高円宮杯U-15大会準優勝を果たした現2年生世代が個人でもクオリティーの高さを見せつけた。

 しかし、丸岡も折れなかった。金沢の戦略を察したDF飯田晃明(3年)から「食いつくな!」という声がたびたびかかり、ダブルボランチが徐々に相手の攻撃経路を限定できるようになると、そこから主導権は五分五分。DF竹島智哉(3年)のロングスローで金沢守備陣を苦しめつつ、MF田中遥人(3年)、DF東出来輝(2年)が惜しいシュートも放ち、前向きな形でハーフタイムを迎えた。

 丸岡は後半開始時、田中に代えてMF中村晃太(3年)を投入。左サイドにフレッシュな選手を入れて圧力を強めると、ここから一気に攻勢をかけた。3分、斜めのパスを有効に使ったつなぎから放たれた河上のシュートは枠を外れたが、7分にミドルパスを収めた河上のシュートが相手のハンドを誘ってPKを獲得。これを川中が落ち着いて決め、まずは同点に追いついた。

 さらに後半10分、丸岡は川中が左コーナーキックを短く出してリターンを受け取り、ゴール前にインスイングのクロスボールを送り込むと、竹島がハイジャンプで競り合ってエリア内でセカンドボールが発生。これにいち早く反応した東出がシュートを流し込み、同点弾からわずか3分足らずで逆転に成功した。

 丸岡はその後も一方的に主導権を握り続け、金沢の縦パスをことごとく中盤で寸断すると、後半36分にセットプレーから追加点。川中の左コーナーキックに対し、ファーサイドへ走り込んだ飯田が高い打点からのヘディングシュートを沈めた。2点ビハインドとなった金沢は終盤、攻守で存在感を放った波本を前線に上げるパワープレーに出たが、うまく時間を使った丸岡を攻め立て切れず、そのままタイムアップを迎えた。

 群雄割拠の北信越で初めて頂点に立った丸岡は24年ぶりのタイトル獲得。久しぶりの偉業の要因について、自身も丸岡OBの小阪康弘監督は試合後、多くの有力選手を輩出してきた坂井フェニックスジュニアユースの存在を挙げた。

 県立高の丸岡は私学のような積極的な選手獲得活動をできないため、地元クラブチームはとくに重要な存在。もともと坂井市丸岡町は県内随一のサッカーどころで、地元中体連の丸岡中サッカー部や坂井フェニックスの社会人チームも伝統的な強豪として知られているが、そうした土壌に上積みするため、近年は地域のつながりを意識的に深めているという。

 具体例の一つは、数年前から週1回という高頻度で行っている高校とジュニアユースの練習試合だ。

 高校側は主力の並ぶAチームが出ることもあれば、下級生が臨むこともあるが、ジュニアユースから見れば全員が年上。それでも高校側は「一切、手を抜かない」(小阪監督)。体格差による負傷は避けながらの戦いにはなるものの、ボール回しや運動量の面などでプリンスリーグ北信越のプレー基準を地域の未来を担う中学生に伝えつつ、振る舞いの面でも後輩の模範となることを目指している。

 また、こうして育ってきた中学生が高校に入って活躍するというサイクルができつつある。中心選手の飯田、川中、小谷、田中、中村らはジュアユースの卒団生で、「中学の時、うまくいかなくて試合中にふてくされてた子たち」(小阪監督)。川中は「高校生が相手でも勝ちに行っていた」と当時を懐かしむ。

 彼ら“丸岡産”の選手たちに、県内や北信越地域など近隣中心の越境入部選手も組み込み、層を厚くしたのが現在の丸岡高。こうした積み重ねがプリンスリーグ初制覇、3年連続の全国選手権出場という実績につながってきたという。もっとも、チャレンジはまだまだ道半ば。北信越には長岡ジュニアユースと帝京長岡高という注目を集めた成功事例もある中、指揮官は「帝京長岡さんは目標。うちも世代別代表クラスを育てられるようになりたい」と力を込める。

 約1か月後に控える出場31回目の全国高校選手権も、このチャレンジをさらに大きなものにしていくための大切な機会となる。帝京長岡もアンダー代表を次々輩出した昨年度世代が2013年の8強入りに大きな刺激を受けていたように、「丸岡の選手もできる」というメッセージを継承していく絶好の舞台となるからだ。

 全国での直近の目標は、近年で最も良い成績を残した一昨年度の16強を上回るベスト8。まずは全国の高校からライバル意識を一身に集める青森山田高(青森)が入ったブロックとの対戦を目指し、そこから1997年に成し遂げた過去最高のベスト4を狙う。

 一発勝負のトーナメントを勝ち進むためには県予選決勝、北信越1位決定戦でも招いた“悪い時間帯”の連続失点を防いでいくことが目の前の課題となる。「全国に行けばうちの欠点を徹底的に突いてくる。弱いポイントを修正していかないといけない。そのためにはもっと試合中にコミュニケーションを取ること」(小阪監督)。残り1か月、さらにチームの完成度を高め、初戦のルーテル学院高(熊本)戦に臨む。

(取材・文 竹内達也)
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