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広告ではなくファンの応援を看板に…キリンが提案する新しい応援スタイル

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 サッカー日本代表オフィシャルパートナーのキリングループは2021年、日本サッカー界で初めて(※)の取り組みをスタートさせる。

 その名も『#届けてキリン ライブ応援』。日本代表の試合中にファン・サポーターからTwitterを通じて応援メッセージを募集し、ピッチ脇に設置されたLED看板にそれらを映し出すことで、ファン・サポーターの想いをリアルタイムで選手たちに届けるという異例の企画だ。

※応援メッセージをリアルタイムにピッチ横のLED看板に表示するのは日本サッカー史上初(キリン調べ)


 世界が新型コロナウイルスの打撃を受けた2020年、大声で選手を鼓舞することはなおも難しい状況が続いている。

 そんなニューノーマルの時代に、どうしたら選手たちを熱く後押しできるのか。この試みはスポーツ界全体にとっても一つの大きなチャレンジとなりそうだ。

 もっともこの企画は、コロナ禍の影響を踏まえて突然生まれたのではなかったという。

『ゲキサカ』ではキリングループでサッカー日本代表を担当するキリンホールディングス(株)ブランド戦略部の山口浩樹氏のインタビューを実施。キリンと日本代表がタッグを組んで43年目、本来であれば広告枠として使えるはずのLED看板を大胆に駆使した新企画に込める思いを聞いた。


「実はこの企画、コロナがきっかけで発案したわけではないんです。以前から『スタジアムだけでなく、テレビの前で応援する日本中のファン・サポーターに高揚感・一体感をもって日本代表戦を楽しんでもらうにはどうすればよいか』を考えてきた結果の企画なんです」

 山口氏によると『#届けてキリン ライブ応援』企画は当初、2020年3月に組まれていたU-23日本代表のホームゲームで実施されるはずだったという。

 ところが年初に新型コロナウイルスの感染が世界に広がり、3月、6月、9月にそれぞれ予定されていた試合はコロナ禍の影響ですべて中止。さらに10月、11月の試合もヨーロッパでの開催となり、1試合も日本国内で行われないまま、企画は来年へ流れる形となった。

 つまり、ニューノーマルにふさわしい企画になったのは「実は偶然です」と山口氏。とはいえ、コロナ禍の打撃を前からこうした取り組みが進められていたところに、日本代表とキリングループが43年間にわたって積み重ねてきた歴史が垣間見える。

 キリングループは2015年4月に「オフィシャルスポンサー」という立場から「オフィシャルパートナー」となり、ファン・サポーターとともに日本代表を応援する文化を作り上げていき、KIRINブランドへの共感・期待を獲得すべく活動している。

 新たに掲げたテーマは「キリンはサッカーを通じて、人を応援する」。より幅広い形で日本サッカー界を支えるべく、少年・少女を対象としたサッカー教室、新世代のスポーツに取り組むサッカーe日本代表選手のサポート、売上げ金の一部をサッカー協会に贈呈する自動販売機の設置など、さまざまな取り組みを続けている。


 今回の取り組みもその一つだ。キリングループは2019年、「新しい応援、はじまる。」をキーワードに掲げた新企画『#キリチャレの日 みんなで応援チャレンジ』をスタート。人々のライフスタイルに合わせて「観る」応援から「参加する」応援を目指し、スタジアムを訪れたサポーターだけでなく、テレビを通じて応援する人々からも広く応援メッセージを集めた。

 その結果、同年3月に行われたキリンチャレンジカップ2019 ボリビア戦ではTwitterハッシュタグ『#キリチャレの日』が世界トレンド1位を達成。集まった応援メッセージは後日、1枚のボードにして選手たちにも手渡され、デジタルとアナログの両面から選手たちを支える力となった。

集まった応援メッセージはロッカールームに届けられた

 今回の新企画『#届けてキリン ライブ応援』は、そんな前身企画を発展させる形で誕生した。

「ファン・サポーターに『参加する応援』をさらに体感していただくためにはどうしたらいいかを考えてきた結果、応援の声を、選手のより近く、そしてよりリアルタイムに届けることだと考えました」(山口氏)

 キーワードは「新しい応援、ひろがる」。新企画では試合中にファン・サポーターから集めた応援メッセージをより間近な形で選手に届けるべく、ピッチ脇のLED看板にリアルタイム表示するという案が採用された。すなわち、コロナ禍で応援が難しくなったからではなく「応援をその瞬間に届けたい」という思いを突き詰めていった結果、ニューノーマル時代にふさわしい応援スタイルにたどり着いたのだ。


 もっとも、コロナ禍を経たからこそより強くなった想いもあったという。そのきっかけは日本代表のキャプテンを務めるDF吉田麻也の言葉だった。

 吉田選手はリーグ戦が中断していた今年6月、キリングループが主催したファン・サポーターとの交流イベント「KIRIN presents サッカー日本代表吉田麻也リモートトークライブ」に出席。トークテーマ「応援の力」に沿った質問が参加者から次々に寄せられると、ファン・サポーターへの思いを熱を込めて語っていた。

——どんな時に応援してくれると心に響きますか?
「苦しい時、弱っている時に一番響きますね。残り5分間、攻め込まれている時にはすごく力になります。とくに無観客でやっていると雰囲気が違うので、いまだからこそ応援の力をあらためて感じますね。僕は一番最後にそういうので頑張れちゃう人間なので」

——どんな応援が力になりますか?
「イギリスだとここぞっていう時にブワァーっと盛り上がるんです。たとえば0-1で負けている時でも、CKで『行け行けー』って。そういうときには盛り上がりますね。あとセンターバックのポジションだと、難しい回転のボールをうまくコントロールしてマイボールにして拍手が鳴る時は気持ちいいですね。『わかってんなー!』ってなります」

 選手の立場から生の声で伝えられた応援の大切さ——。これらの言葉に感銘を受けたという山口氏は「われわれも『応援を届ける』『応援が力になる』と信じてやってきましたが、あらためて選手の立場からあのような言葉を聞くことができて、より自信を持って今回の企画を進めることができました」と感謝を語る。


 もう一つ、今回の企画で気になる点について尋ねてみた。LED看板を応援メッセージ用のスペースに割くという決断についてだ。

 このスペースは本来であれば、ブランド名や商品名を大きく表示することで、スタジアム来場者やテレビ視聴者にそのブランドや商品を広く知らせるために使うこともできる。だが、この企画ではそうしたスペースが、応援の声を選手たちに届けたいファン・サポーターに譲られるという構図になる。

 このことについて山口氏は「一方的に企業の情報を届けるだけではなく、ファン・サポーターの方々と新しい応援を共創できる場にしていきたいです」と前向きに語る。キリングループは2019年、新たなコーポレートスローガン「よろこびがつなぐ世界へ」を制定。サッカーとの関わりにおいても、そうした「つながり」への姿勢を表現していく方針だという。

「サッカーを通じてキリンファンになってもらいたいと考えていますが、その中でもサッカーの持つ高揚感、一体感、ワクワク感をファン・サポーターと選手をつなぐことによってより一層高められると考えています。歓喜の瞬間をつないで、そこにキリンが一緒にいるということで共感を持ってもらいたいですね」(山口氏)

 だからこそ、ファン・サポーターから預けられた思いをつなぎ、選手を後押しすることに全力を注いでいく構えだ。

「選手目線で言えば、一瞬一瞬に表示される応援メッセージをすべて見ることはできないかもしれません。ですが、スタジアムではなくテレビで見ている人も含めて、日本中にはこれだけ応援してくれる人がいるんだ、自分たちだけで戦っているわけではないんだということをお伝えしたいですね」

『#届けてキリン ライブ応援』は2021年3月25日に開催されるアジア2次予選ミャンマー戦でスタート。その後、6月のキリンチャレンジカップ2試合に加えて、ビッグイベントを間近に控えるU-24日本代表が挑む壮行試合2試合でも実施される予定だ。詳しくはキリングループのサッカー日本代表応援公式Twitter(@kirin_soccer_nc)でも告知される。

●山口浩樹(やまぐち・ひろき)
キリンホールディングス株式会社 ブランド戦略部
中学時代までサッカーをプレー。2008年の入社後は首都圏を中心とした営業を担当する傍ら、プライベートではJリーグ観戦も楽しむ。18年から現職で日本代表を担当。「これまでは試合ばかり見ていて、ディフェンダーの動きを見るのが好きだったんですが、いまの仕事をするようになってお客様の動きが気になるようになりました。どんな気持ちでチケットを買って、どんな気持ちでスタジアムに来て、どんなふうに楽しんでいるのか。そういったところもサッカーの楽しさですね」


■「#届けてキリン ライブ応援」実施スケジュール(予定)
「アジア2次予選」2021年3月25日(木)
「キリンチャレンジカップ2021」2021年6月3日(木)、6月11日(金)、7月12日(月)、7月17日(土)
Webサイト:https://www.kirin.co.jp/csv/soccer/nc/liveled/index.html
Twitter: https://twitter.com/kirin_soccer_nc

■『キリンチャレンジカップ2021』スケジュール
日時:2021年6月3日(木)
対戦:日本代表 対 未定
会場:北海道/札幌ドーム

日時:2021年6月11日(金)
対戦:日本代表 対 未定
会場:兵庫/ノエビアスタジアム神戸

日時:2021年7月12日(月)
対戦:U-24日本代表 対 未定
会場:大阪/長居球技場

日時:2021年7月17日(土)
対戦:U-24日本代表 対 未定
会場:兵庫/ノエビアスタジアム神戸


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(取材・文 竹内達也)

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