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[MOM696]福岡大DF大川智己(2年)_転機となった“冨安プレー集”。課題と向き合ったCBが意地の完封劇

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スライディングでピンチをカバーする福岡大DF大川智己(2年=九州国際大付高)

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.7 #atarimaeniCUP1回戦 中京大 0-1 福岡大]

 攻められる回数は決して少なくなかったが、福岡大がゴール前に築いた“壁”は最後まで破られなかった。最終ラインの要を担ったのはDF大川智己(2年=九州国際大付高)。要所でピンチを救った新たなディフェンスリーダーは「福大らしく固い守備ができて良かった」と手応えを語った。

 まさに“福大らしい”とも言うべき堅い試合となった全国初戦、試合後に乾真寛監督が称えたのは1〜2年生で構成された3バックだった。カバーリング役の中央に大川が構え、両脇を固めるのがDF岡田大和(1年=米子北高)とDF伊藤颯真(1年=洛北高)。今季新たにJリーガーとなった卒業生DF菅田真啓(→熊本)、DF饗庭瑞生(→秋田)の後を継ぐ選手たちだ。

「今年はセンターバック2枚が抜けた穴がなかなか埋まらなかった。正直持ち堪えられるかは心配だったが、3人が身体を張って粘り強い守備ができたので、それがうちにとって一番の収穫」(乾監督)。ピッチを縦断するように強風が吹き荒れる中、後半の向かい風にも負けず無失点に抑えた貢献が光った。

 アグレッシブな潰しでピンチを未然に防いだ伊藤、シュートブロックで相手の攻撃を阻んだ岡田の活躍も目覚ましかったが、なかでも彼らを統率した大川の働きは出色だった。

 まずは前半25分すぎ、スルーパスに抜け出した相手FWのボールを後方からのスライディングで的確につついて決定機を阻止。そして後半に直面した相手のロングスロー攻勢では、ニアサイドの防波堤となってクリアを続けた。さらに後半ラストプレーでは、相手のアウトサイドシュートをゴールライン付近でヘディングクリア。チームの危機を何度も防いだ。

 この活躍の裏には、出場機会を失っていた間の積み重ねがあったという。

 大川は秋開幕に延期された今季リーグ戦で、開幕節から出番を掴んでいたものの、4-3で辛勝した第3節の長崎総合科学大戦、1-2で敗れた第4節の九州共立大戦の結果を受けてスタメン落ち。その後はチームが4試合連続で無失点が続いたことで、リベンジのチャンスは与えられなかった。

 ところがその間、乾監督からは一つのミッションを与えられていた。「明確に足りないものを指摘していただいた。悔しかったけど、足りないことがハッキリしたので、そこに取り組んでいくことだけを考えていた」。そこで見せられたのが、いまや日本一のディフェンダーとなりつつあるDF冨安健洋(ボローニャ)のプレー映像だった。

 大川が向き合った課題は「オフザボールの部分」。つまり、飛んできたボールへの対応ではなく、その前段階の準備だ。冨安の映像では「首を振ること」と「半身の対応」に着目。「冨安選手は常に首を振ってリスク管理している。あと自分は正対することが多かったけど、冨安選手は常に半身で裏抜けにも対応できる」という姿から自身のプレーを根本から修正していった。

 そうして迎えたリーグ戦閉幕後の新人戦、出番を獲得した大川はアピールに成功し、全国初戦で先発に返り咲いた。さらに試合の直前、乾監督からまた新たな“悔しさ”を突きつけられていたという。

「試合前、自分たちに火をつけるためかもしれないんですけど『今日は最終ラインが1〜2年生だから1失点するのはしょうがない』って攻撃陣に言っていて、自分たちはそれが悔しかった。そう言われたことを見返したいと思っていた」。

 その結果、見事にクリーンシートを達成。「ベスト4という目標を掲げているので、チームに貢献できるように頑張りたい」(大川)。この大会で飛躍を期する184cmのセンターバックは、DFセルヒオ・ラモス(R・マドリー)のような「一人で守れて、ヘディングも強く、ロングフィードも蹴れて、大事な場面で点が取れる選手」を目指す。

(取材・文 竹内達也)
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