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下を向かない。頑張りを無駄にしない。失点直後の円陣で前を向いた日本高校選抜、大学生の関東選抜Aに追いつきドロー

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後半32分の失点直後、日本高校選抜の選手たちは円陣を組んで前を向いて戦うことを確認。直後に同点ゴールをもぎ取った

[3.4 デンチャレ 日本高校選抜 1-1 関東選抜A]

「ここで終わったら、80分間頑張って耐えてきた意味が無い。下を向かないで、1点を獲りに行こう」

 我慢強い戦いを見せていたものの、後半32分に失点して0-1。その直後、日本高校選抜は自陣で円陣を組んで話し合った。失点してしまったことは残念だったが、大事なのはここから。前日の関西選抜戦で悪い流れを断ち切れなかった反省もあり、選手たちは前を向くこと、1点を奪い返すことを確認してゲームを再開させた。

 すると、キックオフから丁寧にボールを繋ぎ、ゲーム主将のMF安斎颯馬(青森山田高3年)の抜け出しを起点としたアタック。MF吉田陣平(佐賀東高2年)のドリブル突破から、最後はその折り返しをMF宇野禅斗(青森山田高2年)が右足で決めて同点に追いついた。

 安斎は「一番強いであろう関東Aとの対戦で、試合前にビビっている選手がいたのも事実です」と説明する。だが、自分たちはチャレンジャーとして全員で戦うこと、失点しないことを掲げて試合をスタート。個々が守備意識を高く持ってハードワークし、攻撃面でも連動したパスワークや速攻からチャンスを作り出した。

 日本高校選抜は「NEXT GENERATION MATCH」で高校1、2年生の川崎F U-18に敗れてから意識が変化。チーム内のコミュニケーションを増やし、前日に3-4と健闘した関西選抜戦後も選手間ミーティングを行ったという。この日もチーム一丸となっての戦い。誰かが突破されても、すぐに他の選手がカバーして穴を広げない。カバーしてくれるからこそのアグレッシブな守備もあった。選手権のヒーローたちが、チームのために全力でハードワーク。そして、後半30分過ぎまで得点を許さず、失点後に奪い返して価値のあるドローへ持ち込んだ。

 安斎は「失点してしまっても80分間耐えてきたので、80分耐えたということは自信あったので。『ここで終わったら本当に耐えてきたことに何も意味ない』ということで、(円陣の時に)全員で話して、その中で1点取り返せたので『大学生相手にも戦えるぞ』ということを証明できたと思います」と胸を張る。

 そして、「今日は個々としては絶対に勝てない相手なので、チームとしてしっかり戦うことができて非常に良かったと思います」と微笑んだ。毎年行われてきた欧州遠征が中止となる中、多くの人々の尽力もあって得たデンチャレ出場権。選手たちは出場したことに満足することなく、本気で勝ちに行った。勝利することはできずグループリーグ敗退となったものの、大学生を上回るような強い思いを表現し、関係者たちから評価される戦いぶり。全国約4000校の高校サッカー部員の代表選手が、大学生のトッププレーヤー相手でもチームとして十分に戦えることを証明した2日間だった。

(取材・文 吉田太郎)
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