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まさかのドローンでキックイン!J2に吹き荒れるブラウブリッツ旋風

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 ブラウブリッツ秋田の快進撃が止まらない。情熱の指揮官、吉田謙に率いられたチームは、開幕戦こそザスパクサツ群馬に1-2で敗れたものの、続く第2節では栃木SC相手に沖野将基が挙げた虎の子の1点を守って、J2初勝利を記録。第3節ではJリーグのオリジナル10でもあるジェフユナイテッド千葉にも、開始17分までに奪った2ゴールで競り勝ち、連勝を達成。ギラヴァンツ北九州と対峙した第4節では、先制点を許しながらも粘り強く引き分けに持ち込み、過酷なアウェイ4連戦で勝ち点7を積み上げる。

 3月28日。Jリーグの全クラブで最も遅いホーム開幕戦を迎えたソユースタジアムは、降りしきる雨の中で手拍子やバルーンスティックによる応援を送り続けた、蒼いファン・サポーターの歓喜に包まれた。J1昇格候補とも目されている京都サンガF.C.を向こうに回し、茂平のゴールで1-0と勝利。5試合を終えて、全22チームが並んだ順位表を眺めると、上から4番目の位置にブラウブリッツの名前がある。


 京都戦の試合前、吉田監督は中継のインタビューでこう語っていた。「今日は秋田のみなさま、そして選手、クラブが切り拓いた道を走る日です」。そして試合後、勝利の感想を問われると、熱く言葉を紡ぐ。「ひたむきを結合させて、チーム一体で走り抜く、秋田らしい戦いだったと思います」。ソユースタジアムの至る所に貼られていた『We are AKITA!』の文字。秋田県のサッカー界に今、新たな風が吹き込んでいる。

 ブラウブリッツの前身に当たるTDKサッカー部は、1965年に創設された。当時から本拠地は秋田県に置かれる。1935年に東京電気化学工業株式会社、のちのTDK株式会社を設立した実業家の齋藤憲三が、秋田県由利郡平沢村(現・にかほ市)の出身であったことから、県内に会社の工場が置かれていた縁もあり、サッカー部も齋藤の故郷で産声を上げる。

 1982年に東北社会人リーグへ参入すると、その年から3連覇を成し遂げ、東北のチームとしては初となるJSL(日本サッカーリーグ)2部への昇格を決める。だが、在籍していた2年間での勝利はわずか1勝のみ。再び降格した東北社会人リーグでも、急速に力を付けてきたNEC山形サッカー部(現・モンテディオ山形)や東北電力サッカー部(現・ベガルタ仙台)の後塵を拝し、全国の舞台からは遠ざかってしまった。

 ライバルたちがJ2へと活躍の場所を移した2000年前後からは、改めてTDKサッカー部の存在感が高まっていく。東北5連覇を勝ち獲った2006年には、FC岐阜、ファジアーノ岡山、V・ファーレン長崎と、のちにJリーグのステージでも顔を合わせるチームが同居した地域決勝大会で優勝し、実に21年ぶりとなる全国リーグ、JFL(日本フットボールリーグ)昇格を手繰り寄せる。

 2009年。チームに衝撃が走る。TDKがリーマンショックによる経営環境の悪化から、サッカー部の存続は困難と判断。そのシーズン限りでの廃部が決定した。とはいえ、秋田県内におけるトップチームの灯を消すわけにはいかない。5月にはTDKと秋田県サッカー協会を中心に「TDK SCクラブ化実行委員会」が設立。サッカーを愛する有志の力添えもあり、JFLも新クラブへの移行を承認したため、ここに新たなクラブ誕生の道筋ができあがった。

 9月。新クラブの名称は「ブラウブリッツ秋田」に決定する。「ブラウ」はドイツ語で青の、「ブリッツ」は同じくドイツ語で稲妻の意。“青い稲妻”という名前を頂いたクラブには、TDKもメインスポンサーとしての運営協力が決定。秋田県から本格的にJリーグ参入を目指すチームは、こうしてその歩みを始めることとなり、2014年に創設されたJ3への入会を経て、今シーズンからは初めてのJ2で奮闘を続けている。

 皆さんは「TDK」という企業名を聞くと、何を思い浮かべるだろうか。30代以上の方であれば、おそらく真っ先に出てくるのは“カセットテープ”のはずだ。1980年代にはスティービー・ワンダー、サザンオールスターズ、小比類巻かほる、チェッカーズといった、時代を彩るミュージシャンが同社のカセットテープのCMに出演。1990年代にはGLAYやglobe、Every Little Thingなどが“MD”のCMに登場しており、音楽を主とした記録メディアを製品化、販売していたイメージが強い。

 30以上の国や地域に工場や研究開発拠点、営業拠点を持ち、10万人以上の従業員を抱えるグローバル企業となった現在のTDKは、磁性技術に秀でた総合電子部品メーカーとして、スマートフォンや各種パソコン、電化製品、自動車など、身近な製品の“内側”を支える部品の製造に力を入れ、我々の生活を豊かなものにする一助を担っている。

 中でも注目を集めている分野は、センサ事業とバッテリー事業。各種工場で使用されている工業ロボットや製造ラインには、TDK製のセンサが搭載されており、リアルタイムでの生産状況や品質の管理が可能に。さらに、クラウドによるデータ分析で、不良の未然予防、機器故障の余地にも貢献している。また、スマートフォンやノートPC、タブレット端末に使用する二次電池の売り上げも好調。今後は新領域の事業にも、TDKの最新の技術を積極的に投下していく構えだ。

 前述した今シーズンのホーム開幕戦。まさにキックオフを間近に控えたその時。ソユースタジアムのバックスタンドから、一機のドローンが飛び立った。その“両手”が抱えていたのは、試合で使用するサッカーボール。整列した両チームの選手たちも上空を見上げる中、悠々と飛行してきたドローンはピッチにしっかりとボールを落とす。このドローンこそ、TDK製のバッテリーを搭載しているもの。斬新なキックインセレモニーに、スタンドからも歓声が上がった。



 実はこの試み、今回で2回目となる。1回目は昨シーズンのホーム最終戦。この時もドローンは、バックスタンドからメインスタンド側までボールを大事に運び、予定位置に寸分狂わぬ正確さできっちり投下。当日の中継実況者からも「新時代のキックインセレモニー」と称され、SNSを中心に話題を呼んだ。

 「テープのTDK」から「DX=デジタルトランスフォーメーション、EX=エネルギートランスフォーメーションのTDK」へ。これから来たる新時代に、HDDの大容量化などデジタル革新を含めたDXと、磁気を活用した大型風力発電機などを用いる“エコ”エネルギーの効率的な利用を目指すEXで、「快適で幸せな暮らし」を実現させるため、ワクワクする会社を目指すというTDKの取り組みは、今後の社会に必要不可欠なものとなっていきそうだ。

 そして、ブラウブリッツに対するワクワク感も日増しに高まっている様子が、ホーム開幕戦のスタジアムからは漂っていた。決勝ゴールをマークした茂平は「秋田県民のみなさまに捧げるゴール」と自身の得点を形容している。待ちに待ったソユースタジアムでのJ2デビューとなる一戦で、あの試合を見せられてしまっては、彼らにワクワクしない方が無理な話である。

 チーム在籍6年目。ベテランの域に達しつつある久富賢は、自身のプロキャリアで4クラブ目となるブラウブリッツを、愛情を隠さずにこう評していた。

 「ブラウブリッツって本当に選手の仲が良いんですよ。どこのチームもさすがにここまでは仲良くないかなって。そこは凄いなって思います。この仕事をしている限りは、ずっと一緒の選手ではやれないじゃないですか。でも、自分が来る前からチームを支えてくれた選手やフロント、スタッフの方々がいたからこそ、僕たちは今でもサッカーをやれていますし、その人たちみんなで勝ち獲ってきた昇格や優勝なので、それを忘れてはいけないなと思いますね。間違いなく今まで在籍してきた選手たちのおかげで、ブラウブリッツがどんどん強くなってきているはずですから」。

 決して短くない時間をともに積み重ねた秋田の地に、希望と夢をもたらすブラウブリッツとTDK。この両者のパートナーシップがいつの日か、もっと大きなワクワクを県民に連れてきてくれることを、期待せずにはいられない。

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