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主将は4度5度追いに連続スライディングタックル……。“マジメ”な流経大柏は不運な敗戦受け止めて「次に」

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“マジメな”流通経済大柏高を背中で引っ張るFW渋谷諒太主将

[4.18 プレミアリーグEAST第3節 流通経済大柏高 1-2 清水ユース 流通経済大柏高G]

 感情的になってもおかしくないような敗戦。GKデューフエマニエル凛太朗(2年)がPKを止めながら蹴り直しの末に決められ、勝ち越しヘッドかと思われたFW渋谷諒太主将(3年=FC多摩ジュニアユース)の一撃が紙一重の差のオフサイドに泣いた。

 それでも、渋谷は「もう受け止めるしかないから次に切り替えて。もっと自分たちがレベルアップしなければ勝てないことが分かったので、『次に活かしていこう』という話は全員でしました」。試合終了直後、流通経済大柏高(千葉)は不運な初黒星を次への活力に変えていた。

 いずれもアウェーで大宮U18と浦和ユース(ともに埼玉)を撃破。流経大柏はその力を示すような清水ユース(静岡)戦の前半だった。立ち上がり1分強で2つの決定機。その後も「良く見て、ボールが止まっているか、動いているかのところまで気にしてやっている」(榎本雅大監督)という連動性の高いハイプレスと、奪ってからの正確なパスワークでチャンスを連発して見せた。

 清水ユースの岩下潤監督が「ここまでやらせてもらえなかったというのはある意味ショックというか……。いつもだったら顔を上げられるところが詰め寄られちゃったり、いつもだったら足で触れるところが入れ違っちゃったりとか非常に課題も多かったです」と首を振っていたほど。敗れはしたものの、大きなインパクトを与える戦いぶりだった。

 榎本監督は今年のチームについて「マジメ」「理解力がある」と表現する。そのチームの「心臓」となっているのが渋谷であり、MF小林恭太(3年)だ。榎本監督は「これだけキュンキュンやって、これだけ運動量出して、チームに貢献して……なかなかいないでしょう。宮本優太(流通経済大4年、浦和内定)とか、ああいう要素を持った選手ですよ。そうしたら、流経にとって大事な選手になるから」と彼らの貢献度を高く評価する。

 特に渋谷はこの日、最前線でハードワークを貫徹。前線からの2度追い3度追いにとどまらず、4度5度と連続でプレッシング。敵陣PAでのスライディングタックルで相手のキックをブロックし、すぐに起き上がって連続でスライディングタックルを繰り出してマイボールに変えるというビッグプレーもあった。

「自分は川畑(優翔)とか松本(洋汰)みたいに上手いわけではないと理解していて、それでどういうプレーで補うかは(榎本)監督とも話していて、自分が前線で追っている背中とか声で引っ張っていければ失点することはないと思っている」。一方で地味ながらも巧みにボールを引き出す部分や精度も発揮。チームに欠かすことができない存在となっている。

 “マジメな”流経の中心人物は「全員がマジメで、『ほんと珍しい』とスタッフにも言われているけれど、そこが自分たちの強みでもあり、やるときはやる、私生活もしっかり貢献するというのは試合にも活きているんじゃないかと思います」と胸を張る。

 今年は、MF藤井海和(現流通経済大)やGK松原颯汰(現千葉)をはじめ個性派集団だった昨年のような個々のタレント性、知名度はないかもしれない。昨年は自分たちを主張するというよりも、先輩たちを頼り、付いて行く立場だった選手たちだ。新チーム結成直後について、渋谷は「最初はエノさん(榎本監督)やスタッフの勢いに負けていて……」と苦笑するが、それでも主将をはじめ、各選手が強くなるために意見を出し合い、同じ方向に向かってチーム力を高めている。

 すでに質の高い戦いを見せているが、榎本監督は技術面など彼らの伸びしろの部分も大いに期待。また、彼らの強みであるマジメさや理解しながら自分たちのモノにする力、そして言い訳せずに取り切れなかった部分やミスがあったところをしっかり反省できる力は頼もしい。「普通の高校生では気持ちが切れちゃうような」(榎本監督)プレーや、悔しい初黒星も受け止めて前を向く「21年度版・流経」が、「日本一という目標」(渋谷)のためにまた新たな一歩を踏み出す。

(取材・文 吉田太郎)
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