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J2震撼の大バクチ “クラブ史上初”が2週連続…逆転昇格へ攻め続けることを選んだ山形

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山形の新監督に就任したピーター・クラモフスキー

 モンテディオ山形に春の嵐が吹き荒れている。

 クラブは22日、成績不振により石丸清隆前監督の解任を発表した。シーズン中の監督解任はクラブ史上初。後任が注目された中、30日に発表されたのは、同じくクラブ史上初の外国人指揮官となるピーター・クラモフスキー氏だった。同日には、昨季まで愛媛FCを率いた川井健太氏のコーチ就任も発表している。

 山形は2020年に就任した石丸前監督の下、それまでの守備的なスタイルから攻撃的なチームへと変貌を遂げた。同シーズンは多くの試合で相手を圧倒するパスサッカーを展開し、充実した内容で7位フィニッシュ。しかし、さらなる躍進が期待された今季は、石丸前監督が最後に指揮を執ったJ2第9節終了時点で20位に低迷していた。

 開幕からの基本フォーメーションは4-4-2。昨季の後半戦だけで13得点を挙げたエースFWヴィニシウス・アラウージョの欠場が続いており、佐藤尽コーチが暫定で指揮を執った直近のJ2第10節・ジュビロ磐田戦(○1-0)では、MF山田康太とMF中村充孝が2トップを組んでいる。

 一方、新たに就任するクラモフスキー監督は清水エスパルス時代、主に4-3-3を採用していた。アンジェ・ポステコグルー監督の右腕として、2019年に横浜F・マリノスのJ1制覇に貢献したオーストラリア人指揮官は、ポゼッション+ハイラインのアタッキングフットボールを志向している。山形では攻撃的GKや中盤の駒は揃っており、清水時代と同様のシステムで戦う場合、ウイングやビルドアップ能力を求められるサイドバックの人選がポイントか。

 また、クラモフスキー監督の超攻撃的スタイルは、大量失点とも隣り合わせだった。清水を率いた2020年シーズンは開幕5連敗とスタートダッシュに失敗すると、一時的に立て直した後にクラブワーストタイの7連敗。さらに1試合を挟み、5連敗を喫した。その敗れたゲームでは全て複数失点を食らっている。指揮官はロマンのあるサッカーに挑んだが、完成形を見ることなく同年11月に契約解除。最終的にチームの総失点はJ1最多の70だった。

 J2では攻撃力よりも失点数の少なさが成績に直結する傾向があり、昨季は最少失点のアビスパ福岡(総得点は10位)が2位、2番目に少ない徳島ヴォルティス(総得点は2位)が1位でJ1昇格を決めている。これに対し、失点数ワースト1位のレノファ山口FCが22位、ワースト2位の愛媛が21位だった。最多得点を記録したのは水戸ホーリーホックだったが、4番目に多い失点数が響き、9位に終わっている。

 それに関連して気になる点が、クラモフスキー監督のアグレッシブなサッカーに求められる走力と、それに伴うガス欠のリスクだ。昨季の清水は終盤に運動量が落ち、ゴールを奪われるシーンが目立った。実際に昨季の試合を15分ごとに6分割した場合、総失点70のうち、最多は後半31分以降の18失点。今季の山形も総失点10のうち後半31分以降が最も多い5失点と、終盤の戦いに課題を抱えている。

 クラモフスキー監督はシーズン途中の就任という難しさもある中、自身初のJ2の舞台で理想と現実にどう折り合いをつけていくのだろうか。昨季は清水から契約解除が発表された際、母国オーストラリアのメディアに今後もJリーグでの指揮を希望していることが報じられていた。日本の2クラブ目で残す結果は、自身のキャリアを占うターニングポイントになりそうだ。

 山形は現在、J1昇格圏内の2位FC琉球と勝ち点15差の15位に位置している。当初の目標はJ2優勝でのJ1昇格。あくまで石丸前監督が築いた攻撃サッカーを継続させ、頂点を獲るために、クラブとしてさらに“攻める”道を選んだ。

 J1昇格だけを狙うのであれば、守備を整備して失点を減らす戦い方に舵を切った方が近道となるだろう。しかし、それでJ1に定着するのには限界があることも、山形は過去の降格で経験している。再起か、崩壊か。退路を断ち、腹をくくったクラブの行方は果たして――。

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