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U-20日本代表候補は全日本大学選抜に4-5で敗戦も、代表の覚悟と誇りを実感する135分間に

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U-20日本代表候補はMF田村蒼生(筑波大)がファインゴール

[6.3 練習試合 U-20日本代表候補 4-5 全日本大学選抜]

「代表のユニホームを、ウェアを着ることで覚悟が生まれる。誇りも感じる。自信を持ってきたけど、自分のプレーを出せなかった選手もいる、と。このあとが大事なんです。まだまだ上はたくさんいると感じて、日々のトレーニング意識を変えられるか、変えられないか。そうすることで、所属しているリーグでの競争も広がっていくと思います」。U-20日本代表を率いる影山雅永監督の言葉が、今回の代表合宿の意味を何よりも現わしている。3日、U-20日本代表候補と全日本大学選抜の練習試合(45分×3本)は白熱の好勝負。“91分以降”に激しく撃ち合った一戦は、5-4で全日本大学選抜が意地の勝利を収めている。

 1本目のファーストシュートは、前半7分のU-20代表候補。左サイドを得意のドリブルで運んだMF樺山諒乃介(横浜FM)のシュートはゴール右へ。すぐさま全日本大学選抜も8分、同じく左サイドで仕掛けたMF泉柊椰(びわこ成蹊スポーツ大3年)のシュートはGK小畑裕馬(仙台)がキャッチするも、お互いにフィニッシュを取り合うと、先にスコアを動かしたのは全日本大学選抜。13分。ここも左サイドでの連携から、FW木村勇大(関西学院大3年)が力強く運んで打ち切ったシュートが、ゴールネットを揺らす。

「今回は大学選抜の子たちがすごい勢いで来るよって、気合十分で臨んだはずなんですけどね」と指揮官も話すU-20代表候補も、17分には右FKから、27分には左CKから、どちらもMF植村洋斗(早稲田大2年)が好キックを蹴り込むも、前者はFW太田龍之介(明治大2年)が、後者はDF岡哲平(明治大2年)がともにヘディングでゴールを狙ったが、枠を捉え切れない。

 すると、次のゴールも全日本大学選抜。34分。右SBの奥田勇斗(桃山学院大2年)が鋭いクロスを送り、泉の丁寧な落としを受けた木村勇大は、きっちりゴール右スミへ流し込む。41分にはMF山下雄大(早稲田大3年)とFW城定幹大(産業能率大3年)との連携から、木村勇大はあわやハットトリックの惜しいシュートも。1本目は全日本大学選抜が2点をリードする。

 2本目も開始1分のチャンスは全日本大学選抜。左から泉が枠内へ収めたシュートは、入ったばかりのGK中川真(法政大2年)がいきなりファインセーブ。8分にはU-20代表候補もMF柴山昌也(大宮)の左クロスを太田が繋ぎ、FWブワニカ啓太(千葉)が放ったシュートは、全日本大学選抜のCB牛澤健(中央大2年)が体でブロック。失点を防ぐ。

 14分のU-20代表候補は、高校選手権以来の“共演”となるMF安斎颯馬(早稲田大1年)とMF松木玖生(青森山田高3年)がFKのスポットに立ち、松木が直接狙ったキックは壁にヒットし、追撃の狼煙は上げられず。逆に38分には相手のミスを突いた全日本大学選抜が、FW久保征一郎(法政大2年)のゴールで3-0とさらに点差を開き、2本目が終了する。

 U-20代表候補は3本目からMF田中克幸(明治大2年)、MF田村蒼生(筑波大1年)らを投入し、これで25人全員がピッチに立つと、この“91分”からゲームは一気に熱を帯びていく。

 反撃を期すチームを牽引したのは、「恵允くんは初めてこの合宿で会いましたし、初めて一緒にやったんですけど、初日にミニゲームで2トップを組んだ時から『凄く合うな』と感じていました」と話すFW千葉寛汰(清水ユース3年)とFW佐藤恵允(明治大2年)の2トップ。10分に右から佐藤が折り返したボールを千葉が繋ぐと、「思い切り振り抜いたら良い所に飛んだという感じでした」と振り返る田村が豪快なシュートをゴールへ叩き込み、ようやく1点を返す。

 18分に魅せたのは佐藤。左に開いて前を向くと、「ちょっと相手の方が前にいたんですけど、スピードで行けるかなと思って」一気に加速して相手を置き去り、GKの手を弾く強烈なシュートをゴールネットへ突き刺し、たちまちスコアは3-2に。

 全日本大学選抜も19分には、MF北條真汰(福岡大2年)のゴールで再び2点差に引き離すも、28分に右サイドから田中が得意の左足で上げたクロスを、ニアで合わせたのは千葉。「相手の前に入り込む所だったり、相手の視野から外れて駆け引きをしたりという所は凄く得意なので、自分の特徴が出たゴールだったと思います」と振り返る完璧なヘディングで、U-20代表候補が再び1点差に詰め寄る。

 37分に全日本大学選抜は左サイドでMF吉田源太郎(四国学院大3年)が粘り、MF鶴野怜樹(福岡大3年)がゴールを陥れ、5-3と突き放したものの、粘るU-20代表候補は45+1分に、田中の右クロスから千葉が打ち切ったシュートがGKを弾いてゴール方向に向かい、最後は田村がプッシュ。「絶対オレですね。蒼生くんも自分のゴールって言っていたんですけど、そこはストライカーとして譲れない部分です」(千葉)「半分は寛汰のゴールですけど、まあ自分のゴールですかね。ライン上で触ったので」(田村)と、どちらも譲らないチーム4点目を記録。最終的なスコアは5-4で全日本大学選抜が勝利を収めたが、「もちろん選手もそうだし、僕らも本気。お互いに熱のこもったトレーニングができました」という影山監督の言葉を、U-20代表候補もしっかり示す135分間の激闘となった。

 例えば帝京長岡高(新潟)の同級生だったMF谷内田哲平(京都)と明治大の田中、FC東京U-15深川とFC東京U-18でチームメイトだったDF木村誠二(京都)と明治大の岡に代表されるように、今回のU-20代表候補合宿では大学組とプロ組、高校生組が融合して4日間のトレーニングが行われた。

 柏レイソルU-18からトップチームへの昇格が叶わず、筑波大へと進学した田村は「筑波大学に入って、他のみんなはプロに入ってやっている中で、プロの選手がやっている以上に自分もやっていかないといけないと思っていますし、その中でも今日みたいに結果という所、ゴールという所にこだわっていかないと、この先も生き残っていけないと思うので、そこは自分の中でも模索している感じです」と明言。今の立ち位置を把握しつつ、プロになっている選手以上に、さらなる成長を遂げようとする大学進学組にとっては、またとない刺激的な時間だったことに疑いの余地はない。

「大学4年間で成長して、Jリーグで活躍している選手が本当にたくさんいます。今回は対戦相手として(全日本大学選抜とも試合を)組んでもらって、いろいろな年代の代表を設定することで、僕らも視察もできるし、どんな選手がいるか把握することができると。(協会と大学側が)連動することはお互いにとってウィンウィンですし。今後も大切になってくると思います」と話すのは、自身も筑波大で同期の中山雅史氏や井原正巳氏らと切磋琢磨し合い、Jリーガーにまでなった影山監督。全日本大学選抜で実力を発揮した選手も含めて、より努力を重ねている実力者がすくい上げられるという可能性を提示する意味でも、この日の135分間からさらなるステップアップを遂げる選手の出現が、大いに期待される。

(取材・文 土屋雅史)

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