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[MOM3542]札幌U-18MF佐藤陽成(3年)_裏街道からのクロスが“決勝アシスト”!赤黒の10番は持ったら仕掛けるドリブラー

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赤黒の10番を託された北海道コンサドーレ札幌U-18MF佐藤陽成

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.2 日本クラブユース選手権U-18大会準決勝 鹿島ユース 0-1 札幌U-18 正田醬油スタジアム群馬]

 決してエゴイスティックなプレイヤーではない。実際に話してみても、気持ちのいい好青年だ。だが、ひとたびボールを持った時の強烈な自我の表出は、おそらく自身でもコントロールできないのではないだろうか。

「1対1になったら縦に仕掛けようと思っていて、今日もそういう部分で相手を上回れたかなと。自分はスピードが速い方で、縦への突破が得意なので、そういう部分を試合でどんどん出していければ、チームのチャンスに繋がるかなと思っています」。北海道コンサドーレ札幌U-18のキレキレ系ドリブラー。MF佐藤陽成(3年=北海道コンサドーレ札幌U-15出身)の積極性が、チームをファイナルへと導いた。

 この準決勝の前半までの出来には、まったく納得がいっていなかったという。「自分的にはこの大会で全然良いプレーを出せていなくて、今日の前半も全然良いプレーを出せなくて、『ここでやらなきゃダメだな』と思っていて、後半は気持ちを入れ替えて、どんどん積極的に仕掛けました」。確かに後半から、一気に10番のスイッチが入る。

 持ったら、仕掛ける。持ったら、仕掛け続ける。愚直なまでに繰り返すこの一連に、少しずつ対面の相手も体力と気力を奪われていく。そして、後半36分。その瞬間がやってくる。

 右サイドでDF菊池季汐(3年)からパスを受けると、すぐさま頭の中にイメージが浮かぶ。マーカーをあえて“裏街道”で剥がし、中央を見据えながら躊躇なくクロスを送り込む。「後半は積極的に縦に仕掛けられたんですけど、自分では低いボールを上げようと思っていたのに、2本ぐらいクロスをミスしたりしていたので、ここは低くて速いボールを上げようと考えていました」。

 GKが出られない絶妙のスピードとコースへ流し込んだクロスに、DFがクリアし切れず、ボールはそのままゴールネットへ吸い込まれる。「最初はディフェンスに当たって、入るか入らないかわからなかったんですけど、入ったのでメッチャ嬉しかったです。もうオレのゴールです(笑)」。一目散にベンチへ向かって走り出した10番のクロスが、“決勝アシスト”に。ようやく自身でも納得のプレーが飛び出し、札幌U-18にとって20年ぶりの決勝進出を力強く引き寄せた。

 既にトップチームの2種登録も完了。YBCルヴァンカップでベンチ入りも経験し、天皇杯では公式戦にも出場するなど、高いレベルで刺激を受ける中で、とりわけ意識する選手がいるという。「トップチームでやらせてもらっているポジションが右ワイドなので、(金子)拓郎くんとポジションが一緒で、ドリブルを教えてもらったり、切り返しのタイミングを教えてもらったりしています。拓郎くんはドリブルがメッチャ上手いです」。

 利き足こそ違うものの、右サイドから仕掛けていく姿勢には共通項も。「自分はルヴァンカップや天皇杯を経験させてもらって、トップのレベルが高い中でちょっとやれていたことで、こっちではあまりプレッシャーを感じずにできていると思います」。金子も含めた先輩たちとのトレーニングで得た経験を、きっちりユースでのプレーにも還元している。

 背番号にも小さくないこだわりがある。「去年の10番の選手(木戸柊摩・現大阪体育大)が凄く上手くて、自分はあそこまでのドリブラーではないんですけど、3年生になる前に『絶対自分が10番を付ける』とみんなに言っていて、それで付けさせてもらっているので、『10番に恥じないプレーをしよう』といつも思っています」。赤黒の10番を背負ったからには、まだまだやるべきことが残されている。

 2001年大会以来のファイナル。悲願のタイトル獲得へ、想いは強い。「チーム全員でハードワークしながら、強い相手にも勝ててきたので、コミュニケーションもうまく取れて、良い雰囲気でゲームができていると思います。決勝戦は今までやってきたことをすべて出して、このチームで日本一を獲りたいです」。

 最後の1試合でも、そのスタイルは変わらない。持ったら、仕掛ける。持ったら、仕掛け続ける。常に何かを起こし得るこの10番がボールを持つ光景を、一瞬たりとも見逃してはいけない。

(取材・文 土屋雅史)
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