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悲願の選手権福岡制覇へ、向上してきたチームのバランス、雰囲気…。九州国際大付が国見に3発逆転勝ち

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後半13分、MF辻澤賢のゴールを喜ぶ九州国際大付高イレブン

[9.25 高円宮杯プリンスリーグ九州第13節 国見高 1-3 九州国際大付高]

 高円宮杯 JFA U‐18 サッカープリンスリーグ2021 九州は25日、第13節1日目を行い、九州国際大付高(福岡)が国見高(長崎)に3-1で逆転勝ちした。

 今年の新人戦九州王者で伝統校復活を期す国見と、福岡制覇を狙う実力派の九国大付。間もなく開幕する選手権予選へ向けて弾みをつけたい両校の対戦は、「ようやく、バランスが取れてきた感じです」(江藤謙一監督)という九国大付が制した。

 序盤、国見の4-1-4-1システムに九国大付は上手く対応できず、守備で後手に。対する国見は、エースMF本川瑠空(3年)の仕掛けなどからCKを獲得する。ただし、国見も九国大付にビルドアップする時間を与えてしまい、膠着した前半。その中で、国見が先にスコアを動かした。

 前半20分、左サイドで前を向いた本川を起点とした攻撃から、左SB平田元規(3年)がクロス。ファーサイドのMF田崎翔真(3年)が頭で懸命に折り返すと、これを拾った本川がGKを外して右足シュートを叩き込んだ。

 先制した国見はさらにオープンスペースを活用した攻撃からチャンス。一方の九国大付はやや前へ急ぎすぎて精度を欠いた面があった。それでも37分、左タッチライン際での相手ハンドで得たFKから、MF岩熊唯斗(3年)が判断良くクイックリスタート。ゴール前でDFのマークを外したFW石松涼(3年)が、岩熊のロングクロスを頭で合わせて同点に追いついた。

 江藤監督は「球際、切り替え、運動量(の三原則)はどんな試合でも必要。切り替えはもっと速くやって欲しかった」と指摘したが、ボールを奪った直後の彼らの鋭さは差を生み出していた部分。エースFW吉田晃盛主将(3年)や石松の素早い仕掛けと、就任3年目の指揮官の下で「(伝統的に強力な)セットプレーカウンターだけでなく、崩しも。攻撃のパターンを増やしたいというのがあった」と取り組んできた崩し、そして“三原則”で相手に主導権を与えなかった。

 1-1で迎えた後半、国見は後方から追い越す動きが増えて攻撃が活性化。10分には連動した崩しから新主将のMF日高希星(3年)が一気に抜け出し、右中間を独走する。そして、ラストパスを本川が右足で狙ったが、GKがビッグセーブ。逆に九国大付は14分、右中間で交代出場MF濱田大夢(2年)からのパスを受けたMF辻澤賢(3年)が中への動きでDFを外し、左足を振り抜く。

 強烈な一撃はGKの正面を突いたが、パンチされて舞ったボールがゴールラインを越え、2-1。逆転された国見はMF川添空良(2年)と本川の動きに怖さがあったほか、U-17日本代表候補MF北村一真(2年)や日高が相手DF間や背後のスペースへのパスを狙う。試合を通じてボールを握る時間を増やし、良い形の崩しも見せていた国見だが、木藤健太監督は「本当の意味でのゲームを支配できていなかった。その状況でどういうことをしなければいけないか分かっていないので、失い方が悪かったり。良い攻撃で終われないので守備も良くない」と指摘する。

 悪くはないものの、狙いとする試合展開までには至らず。一方、吉田が「最初よりはチーム的にも全然成長できている」という九国大付は、コーチ陣のサポートもあってこの試合へ向けた雰囲気作りが上手く行ったという。後半32分に3枚替えをしてきた国見に対し、九国大付は勝負どころでCB大崎愛斗(2年)を中心としたDF陣やMF湯越悠介(3年)らが集中した対応を継続。そして42分、自陣PA付近でのインターセプトから辻澤が巧みに相手DFを剥がして中央を独走する。そして、PAへのスルーパスを吉田が身体を張って残し、最後は石松が右足で決定的な3点目をもぎ取った。

 九国大付は春先、上手く行かない時にそれぞれが自分の主張ばかりしていたというが、現在は悪い状況の中でも自分たちでチームを落ち着かせ、細かな修正ができるようになってきている。

 まだまだではあるものの、この日は走り切る部分も勝因に。吉田は「こういう雰囲気作りができていけば自分たちは勢いに乗っていける。(自分たちの伸びしろは)まだまだだと思っているので、選手権優勝はみんなの最終目標ですし、全国に行って九国の歴史に名を残せるように」。九国大付は昨年、一昨年と十分に全国で戦える大型チームだったが、選手権は“激戦区”福岡県予選で涙。今年こそ、の思いは選手も、スタッフも強い。メンタル面含めてチーム状態を上げている九国大付は、プリンスリーグを経てチーム力、雰囲気をより向上させて1か月後の選手権予選を迎える。

(取材・文 吉田太郎)
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