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伝統の10番を背負う新潟U-18MF高橋蒼天は、さらに高い空へと飛び立つ覚悟を胸に秘める

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アルビレックス新潟U-18の10番を背負うMF高橋蒼天

[9.25 高円宮杯プリンスリーグ北信越第16節 新潟U-18 0-0 北越高 新潟聖籠スポーツセンター]

 伝統ある10番を背負っているからには、やるべきことも自ずと決まってくる。オレンジのユニフォームに恥じないようなプレーを、常に見せ続けなくてはいけないことも、十分過ぎるほど理解している。

「自分は偉大な先輩たちが付けてきている10番を背負わせてもらっていますし、やっぱり今年で良い結果を残せないと、責任を問われるのはキャプテンや10番の選手だと思うので、誰よりも良い準備をしていますし、誰よりも今年に懸ける想いは強いです」。アルビレックス新潟U-18が誇るナンバー10。MF高橋蒼天(3年=アルビレックス新潟U-15出身)は自身の成長がチームの成長に繋がると信じ、さらに高い空へと飛び立っていく準備に余念がない。

 北越高(新潟)と対峙したプリンスリーグ北信越第16節。「自分たちは前期にあまり勝ち点を獲れなくて、もう後がない残留争いのところで、とにかく勝つことだけを意識していた中で、前回は北越に負けていましたし、みんなで良い準備をして、気合を入れて臨みました」と高橋も言及したように、チームは勝ち点3の獲得を最大の目標に掲げてゲームへ入る。

「前半は全体でリスクは負わず、相手の裏を突こうという意図がありました。自分はどちらかというとボールを受けた時の方が得意ですけど、それだけでは怖さが出ないので、自分も裏を取ることは意識しました」(高橋)。とはいえ、やはり脅威になるのは左サイドに開いた10番へボールが入った時。迷わず仕掛ける姿勢が、心地良い。

 ただ、決して独りよがりなプレーヤーではない。「感情が結構強く出る方なので、それを出し過ぎることも、出さな過ぎることもないようにしながら、チームに流れを持ってくることは意識していて、ボールを持った時のドリブルが得意なので、そこで攻撃のスイッチを入れたり、あとは結構走れるタイプなので、攻守ともにチームを引っ張れるところが特徴です」。自己分析もバッチリだ。

 両者無得点で迎えた後半17分に、決定機が到来する。FW大矢瑞樹(3年)のパスを受けて、左サイドを抜け出す。「瑞樹はゴール前で基点になってくれるので、自分の方にパスを出してくれて、キーパーを見ながら左足で、ちょっとボールは外側だったんですけど、ここは打つしかないと思って『入ってくれ』と」と打ち切ったシュートは、しかし相手GKがキャッチ。先制点には至らない。

 結果は無念のスコアレスドロー。「守備では無失点でしたけど、攻撃ではチャンスがなかったわけではないので、あとは決め切る力が自分たちの追わなくてはいけない課題だと思います」。決定的なシーンは創出しながら、自身も含めてノーゴールに終わったことに悔しさを滲ませた10番の表情が印象的だった。

 さらに上を目指すために、ストロングを伸ばしていくのと並行して、課題に取り組むことももちろん意識しているが、実はU-15時代から指揮官には同じことを課されているそうだ。「自分が中学校2年生の頃のジュニアユースの監督が入江(徹)さんで、その頃も今でも『オマエは守備が課題だ』と言われてきていますね。3年前ぐらいから入江さんに言われています(笑)」。

 マインドとしては「守備ではもちろんやらなくてはいけないことは100パーセントでやりますけど、守備はしっかりチームのためにやって、攻撃はもっとやっていくという感じです」と言いつつも、もちろん守備に注力していないわけではない。だが、U-15時代からその時々に応じた要求をしてくれる指導者に恵まれてきたことが、高橋にとって幸運だったことも間違いないだろう。

 10番の左サイドハーフという立ち位置には、言うまでもなくある“先輩”の姿が重なる。「中学校3年生の時にユースに来て、一緒に練習もやらせてもらっていたんですけど、(本間)至恩くんはまったくボールを取られないですし、“才能の塊”というか、あの人を超えるアカデミー選手は出てこないんじゃないかなと思います。でも、いつかは絶対に超えたいですね」。強気な発言も頼もしい。

 6年間を過ごしてきたアカデミーでの活動にも、終わりが見えてきた。お世話になったクラブだからこそ、このグループのために残された時間を全力で過ごすことも、改めて誓っている。

「前期のリーグ戦はチームとしてなかなか勝てていない中で、クラブユース選手権も全国大会に行ったのにグループステージ敗退で終わってしまって、ここまでは良い結果が付いてきていないので、そこはチーム全体で結果を出していきたいと思いますし、この3年間は本気でプロを目指してきた中で、自分が本気でやれば絶対にやれる自信はあるので、ここからも1試合1試合を真剣に取り組んでいきたいです」。

 一点の曇りもない蒼天へと羽ばたく白鳥の如く、高橋は自分のあるべき姿を追い求めて、これからも真摯にサッカーと向き合っていく。

(取材・文 土屋雅史)
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