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3年生のまとまり。指揮官の謙虚な自信。北越は12年ぶりとなる冬の全国を虎視眈々と狙う

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北越高の守備陣は相手の攻撃をシャットアウト

[9.25 高円宮杯プリンスリーグ北信越第16節 新潟U-18 0-0 北越高 新潟聖籠スポーツセンター]

 プリンスリーグ北信越へ3チームも送り込んでいる上に、インターハイ予選の4強には県リーグ所属のチームが2つも勝ち上がるなど、群雄割拠の様相を呈してきている新潟県の高校サッカー界。その中で12年ぶりの冬の全国出場を虎視眈々と狙っているのが北越高(新潟)だ。

 この日のプリンスリーグ北信越第16節、アルビレックス新潟U-18(新潟)戦は実に2か月ぶりの公式戦。その上、県内の部活動休止要請に伴い、先週まで2週間近くサッカー部としての活動ができない状況を経験しながら迎えた一戦でもあったため、「コンディション的には難しいと思っていたんですけど、『もうやるしかないよ』という話をして臨みました」とは荒瀬陽介監督。ある程度体力に余裕のある前半に、勝負を懸けた戦い方を選択する。

 狙いは奏功した。「『積極的に前掛かりに行って、点を獲りに行こう』という話をして、前からどんどん追って行かせたんですけど、凄く守備のところで頑張って、なおかつそこから攻撃に転じて、というところができていました」(荒瀬監督)。前半7分にFW小林謙心(2年)の落としから、MF稲葉悠(3年)のミドルは枠の上へ外れたが、いい形でフィニッシュを取り切ると、12分と24分にはともにキャプテンのMF五十嵐暉(3年)の右足から、CB高橋泰輝(1年)が惜しいヘディングを。35分にも右SB鈴木洸聖(3年)のフィードをFW高橋航輝(1年)が粘って残し、MF磯野辺空(2年)のシュートは相手GKの好守に阻まれたものの、前半は明らかに北越がペースを握っていた。

 だが、後半は流れが一変する。「チャンスが作れていただけに前半のパフォーマンスはいいなと思っていたんですけど、ただ、『持たないだろうな』とは正直思っていたので(笑)、早めに1点欲しかったですね」という指揮官の言葉通り、時間を追うごとに運動量の低下は否めず、足を攣らせる選手が続出。交代カードも慎重に切りながら、終盤には決定機も迎えたが、結果はスコアレスドロー。「前半の途中からは全体的に前に行くというところが共有できて、戦い方もハマり始めて、チャンスもあったんですけど。それを決め切れなかったのが課題ですね」と五十嵐も悔しそうな表情を浮かべていた。

 この日のスタメンを見ると、3年生が6人で1,2年生が5人という構成。「よく1年生、2年生が主体と言われるんです」と五十嵐が話し、「今年の3年生はあまり試合に絡めないだろうなと思っていた代なんです」と荒瀬監督も言及した中で、その3年生たちがチームに大きな“推進力”をもたらし始めているという。

「ここに来て3年生が最後というところで、全体的に上がってきているんですよね。たぶん彼らも『今年の代は厳しいな』と自分たちでも思っていたはずですけど、真面目で頑張れる子が多いので、そういう意味では後輩に良い影響を与えているんじゃないかなと思います」(荒瀬監督)。この状況を作り出したのは、もちろん3年生たちが自覚的にサッカーへの取り組みへアクセルを踏み込んだからだ。五十嵐は“同級生”の変化をこう語っている。

「3年生は最後の年ですし、『自分たちがチームを引っ張っていこう』と話しています。3年生全体で集まって、自分が中心になってミーティングをしたんですけど、『3年生が主体になって、もっと練習から声を出してやっていこう』と話したことで、それからみんな自分たちから率先してやるようになっていきましたし、Bチームにも3年生は参加している中で、Bチームの底上げもAチームにとっては必要だと思うので、『Bチームからもっと盛り上げてくれ』とも話しながら、そういう部分をみんなでやってきました」。ポジティブな効果は確実に現れている。

 昨年の選手権予選では、全国4強まで駆け上がった帝京長岡高と準決勝で対峙し、惜しくもPK戦で敗れながらも十分なインパクトを残したものの、新チームで臨んだ秋の地区大会ではまさかの初戦敗退。それが響く格好で以降の大会もシードが取れず、間近に迫っている今回の選手権予選も他の強豪校に比べれば、日程も組み合わせもハードなものに。それでも、荒瀬監督はその状況も逆にモチベーションになるよう、選手たちへ働き掛けている。

「今年は今までにあったようなシードもないので、『下から1つ1つやっていくしかない』ということは、もう去年の秋の地区大会に負けた時から話していましたし、もうどことやってもウチがチャレンジャーという想いを持って、受けに回るんじゃなくて攻めていきたいなと思っています」。

「プリンスリーグも最初は勝ち切れないゲームが多くて、ちょっと自信を失っていた部分があるんですけど、試合がない期間にしっかり厳しいトレーニングを積んで、彼らなりに危機感を持ってやってくれたので、チームとしてのまとまりというのはちょっとずつ出てきていますし、失うものはないのでむしろ割り切って、最後の最後の選手権で今まで積み上げてきたモノがしっかり発揮できるようにしたいなと思います」。

 五十嵐も今のチームに手応えを掴みつつある。「チームの雰囲気が良くなれば、プレーも自然と良くなってくるので、雰囲気というところには一番こだわってやっていこうと思っていますし、練習からみんな盛り上がってやってくれているので、結構良い感じですね」。

 3年生のまとまり。チームが纏う明るさ。そして、指揮官の謙虚な自信。12年ぶりの戴冠へ。この秋、何かを起こしそうな空気が北越に漂い始めている。

(取材・文 土屋雅史)
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