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なでしこ指揮官は“継続路線”…今井女子委員長「目指す方向は間違いない」田嶋会長も太鼓判

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なでしこジャパンの池田太新監督と田嶋幸三会長

 日本サッカー協会(JFA)は1日、日本女子代表(なでしこジャパン)の池田太新監督の就任会見をオンラインで開いた。

 ベスト8に終わった東京五輪から約1か月半。2023年の女子ワールドカップ、24年のパリ五輪を目指すなでしこジャパンの新体制が決まった。

 池田氏は2017年から現在まで、U-19・U-20カテゴリの日本女子代表を指揮。18年に日本として初めてとなるU-20女子ワールドカップ制覇を果たしたほか、AFC U-19女子選手権ではコロナ禍で中止になった今年度を除き出場2大会とも頂点に立った功績が評価された形だ。

 前任の高倉麻子監督も14年にU-17女子W杯を制した後、16年4月からなでしこジャパンの監督に就任。アンダーカテゴリからの抜擢はいわば“継続路線”だ。今井純子女子委員長は次のように選考理由を語った。

「東京五輪の総括をずっとしてきた。私たちのなでしこジャパンはゼロベースでやり直さないといけないのか、いまあるもの、続けてきたものをさらに極めていけばいいのかを議論した。そこで、『私たちは目指す方向は間違いない。いままでの継続性を大事にしていきたい。ただし日本の強みである技術や連動性をもっともっと徹底して高めていく必要がある、さらに圧倒的な武器にしていく必要がある』と考えた。細部へのしっかりした詰め、ピッチ上での落とし込み、共通理解、選手をしっかりモチベートしていくことをしっかりやっていければ、歯車がしっかり噛み合えば、私たちの持つポテンシャルで世界で戦っていけると議論をした。

 若手の登用は高倉さんがトライしてくれて本当に進んだと思っている。たくさんの若手が参加し、五輪でもW杯でもチームの平均年齢は下から2番目だった。若い選手は育成年代のW杯で勝ってきた選手たち。ただ、すぐにA代表で活躍できるかというとそこにはまだギャップがある。そこでしっかり経験を積み、また年齢のバランスも良いチームにしていくことが今後も求められる。またチームのことだけでなく、代表チームをしっかりサポートする体制、そしてサッカー環境、9月にWEリーグが開幕したが日常の環境整備、サッカー環境をしっかり整えていくこともしっかり進めていきたい。これは女子委員会でも強化していく。こうした議論を踏まえて代表監督の要件を出し、その要件に基づいて監督を提案、推挙をした。

 S級プロライセンスはもちろん、2023年のW杯と24年の五輪に向かって戦うことのできる、また世界一の奪還を目指すことができる監督であること、そして日本の持つポテンシャルを信じ、日本サッカーの強みを最大限引き出すことができる監督、若手の登用と融合を果たせる監督、代表チームの強化だけでなく日本女子サッカー全体の発展に情熱を持っていただける方という要件のもとで候補者を挙げ、池田太監督にお願いしたいと意見が一致した」

 また18年の世界一を現地で視察していたという田嶋幸三会長も「私は非常に鼻が高かった。世界大会で多くのFIFA関係者、アジアも欧州の関係者もいる中、日本代表が素晴らしいサッカーをしてくれた、ただただ勝つだけでなく内容的にも素晴らしいサッカーをしたことが非常に高く評価された。私自身もそのサッカーを見て、男子も女子も私たちが世界で勝っていくためにはこういうサッカーをしていくべきなんだろうとあらためて認識するようなサッカー、そのチームを指揮していたのが池田太氏だった」と太鼓判。「なでしこジャパンの監督を引き受けていただいたことを感謝するとともに、われわれは全面的なサポートをし、来年1月のアジア杯、2023年のW杯をしっかり勝っていただきたい」と期待を語った。

 もっとも、高倉ジャパンは女子W杯ベスト16、東京五輪ベスト8に終わっており、これまでと異なるアプローチの必要性は無視できない。「アジア杯、W杯で見直す可能性はあるが、アジア杯、W杯と積み上げるのではなく、五輪を見据えていく契約」という「3年間のプロジェクト」と明言した今井委員長は、次のように五輪の反省点と新体制への期待を語った。

「高倉監督は個人戦術というか個々の判断を非常に大事にする監督で、チームとしてのやり方を定めながらも、あまり限定していかずに選手たちの状況によった判断で適切なプレーをしてほしいということを一番大事にされていた。スタイルも限定していくことを好まないというか、限定していくことで失うものを嫌う。自由度を与えながら選手を選びながらトライしていた。監督のスタイルとしてそうしていた。

 ただいまの段階ではもう少し約束事、決まり事、拠り所となる軸があったほうがより選手が安心してプレーできた部分もあったのかなと思っている。ただそれは監督が確信を持ってやっていたスタイルであって、こちらもわかっていたので、それが開花するようにサポートしてきた。けれども今の段階までで言えば、高倉さんが理想とするものは長い時間発揮できたわけではないと思っている。

 完全に方向性を変える必要はないと思っていて、日本人が持つ賢さと技術と連動性、コンビネーションでもって戦っていきたいという基底の部分は共通していると思っていて、それに対して(池田監督が)違うアプローチでできるのではないかと思っている。高倉さんのチャレンジには共感していて、そういうふうにできれば理想だと思えるものはたくさんあった。

 チームづくりはいろんな影響があるが、難しいチームづくりというか、大会に入って力を発揮していくのがシンプルじゃないこともたくさんあった。監督のチームビルディングだけでないものもあった。そういうふうに捉えていて、同じ基本を持ちながら、高倉さんが育ててきた選手もたくさんいるし、違うアプローチで強みになるものを継いで戦っていきたいと思っている。池田さんは少し違うアプローチで成し遂げてくれるのではないかと思っている」

 加えて現場レベルで言えば、アンダーカテゴリとフル代表の立ち位置も大きく異なる。14年のU-17女子W杯世界一メンバーではMF長谷川唯、MF杉田妃和、DF宮川麻都、DF南萌華がなでしこに定着しており、18年のU-20W杯世界一メンバーでも宮川と南に加え、DF宝田沙織(当時FW)、MF北村菜々美、MF林穂之香、MF遠藤純が台頭しているが、世界との差はフル代表になるまでに開いているからだ。

 池田新監督も「欧州ではU-20が終わってからフル代表までに所属クラブでの国際大会であったり、各国が近いこともあり、いろんな国際経験を積めている部分があるのかなと思っている。日本ではアンダーカテゴリからフル代表までにいかにタフな試合を積めているか。そこが少しずつ経験値の差になってしまっていると感じている」とこの課題を認識。「ただ、言い訳というかそれだけじゃ進まないので、高倉監督の時も行っていたが、男子のチームの力を借りてトレーニングマッチをするとか、いろんな強度の違いや選手の負荷をコントロールをして、刺激を入れるようアプローチしていって、フル代表で差が出ないようにしたい。そういったことで日本のやれること、ストロングや武器を磨いて戦っていけるチームにしていきたい」と展望を述べた。

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