beacon

公立の越谷西が過去最高に並ぶ埼玉8強!繋いで、前に出て、夏の覇者・正智深谷に逆転勝ち!!

このエントリーをはてなブックマークに追加

後半ラストプレーで越谷西高が決勝点。この直後に勝利を告げる笛

[10.23 選手権埼玉県予選3回戦 正智深谷高 1-2 越谷西高]

 公立の越谷西が夏の埼玉王者に逆転勝ち! 第100回全国高校サッカー選手権埼玉県予選は23日、3回戦を行い、越谷西高が後半ラストプレーの決勝点によってインターハイ予選優勝の正智深谷高に2-1で逆転勝ち。12年度大会以来2度目のベスト8進出を果たした。
 
 1-1で迎えた後半40+3分、越谷西は右サイドで再三スプリントを繰り返していたMF井上晃介(3年)がCKを獲得する。そして、MF長谷部碧(3年)が意図して蹴り込んだストレートボールを正智深谷DFが頭で上へクリア。だが、落下点で処理し切れず、不規則にバウンドしたボールがゴールライン上のDFの頭上を越えてゴールネットへ吸い込まれた。
 
 1タッチパスで再三相手を剥がすなど、夏の優勝校相手に堂々の戦いを見せていた越谷西が引き寄せた大きな、大きな1点。ゴールを確認した選手たちはピッチへ飛び出してきたサブ組と抱き合い、喜びを爆発させる。その歓喜の最中に試合終了の笛。廣瀬一成監督とMF熊澤青波主将(3年)が力強く抱擁したほか、勝者の「赤」には喜びのあまりピッチに突っ伏す選手もいた。一方、立ち尽くし、頭を抱え込む正智深谷。初戦での敗戦に、選手たちは現実を受け止められないような表情を見せていた。

 試合は開始わずか40秒に動いた。正智深谷は右ハイサイドを突く攻撃からFW大野涼真(3年)がクロス。これにMF平田脩真(3年)が飛び込むと、わずかにこぼれたボールを10番MF増子康介(3年)が押し込み、先制した。

 格上に挑戦した越谷西は、早すぎる失点。加えて、このプレーでGK生見憲悟(3年)が指を負傷し、交代してしまう。投入されたのは163cmの1年生GK竹内燿平。正智深谷は畳み掛け、クロスやセットプレーから決定機を作り出す。小柄な1年生守護神の頭上を狙い、シュートで終わることも意識していた。
 
 だが、越谷西は浮き足立つことなく、一つ一つのプレーをキチキチとしていた。正智深谷の勢いに押し込まれ、機動力ある大野やMF渡辺友斗(3年)にサイドを突かれたりしていたが、触れる距離まで相手との距離を詰めて守備対応。また、奪ったボールを1タッチで正確に繋いで相手のプレッシャーを回避し、前進していく。廣瀬監督が「この子たちが持っている最大の長所」という少ないタッチでのパスワーク、そして好守によって越谷西は夏の王者相手に渡り合って見せる。

 前半39分には右サイドを抜け出した正智深谷・渡辺の右足シュートをGK竹内がファインセーブ。このようなシチュエーションがあることを想定して初戦から出場機会を得ていた竹内が堂々のプレーを続けたほか、CB内田健太(3年)やCB武田雄大(2年)を中心としたDF陣や熊澤が対人の粘り強さや的確なカバーリングを見せるなど2点目を許さない。

 逆に越谷西は中盤で判断速くボールを運び、動かす長谷部が存在感。後半、ボールを失わない長谷部を起点に前進し、積極的に前へ出る熊澤がワンツーからシュート放つ。「世間では0-100で正智が行くだろうとなっていた中で、俺たちも絶対に負けねーぞとやってきた」(熊澤)。正智深谷の方が攻撃の迫力も、仕掛ける回数が多かったことも間違いない。だが、越谷西は序盤から“何かを起こす”要素を感じさせる戦いを継続。後半、風上に立った越谷西が勢いを増したのに対し、正智深谷は「ミドルとかシュートを打つ形を作れ、と言っていたけれどリズムを作られてしまった。相手に勢いを与えてしまった」(小島時和監督)。

 そして27分、越谷西は長谷部が右サイド後方からFK。これをファーサイドのFW南雲皓太(3年)が頭で折り返すと、最後は逆サイドでフリーのFW長岡優雅(3年)が頭で押し込む。「今日は勝っても負けてもセットプレーがポイントになると思っていた」という廣瀬監督の予想通りにセットプレーから同点。そして、ややオープンになった終盤に我慢強く守り、また前に出続けた越谷西がセットプレーから決勝点をもぎ取った。

 越谷西が選手権予選で準々決勝へ進出したのは、インターハイ全国2位の武南高を延長戦で破って8強入りした12年度以来。「インターハイに出ているチームとやるのは(9年前と)同じシチュエーションだし、『歴史を作ろうよ』という話はしたんですけれどね」と廣瀬監督は微笑む。「単純にまじめ。良い子。気持ちも良いし、安心して会議に行ける(笑)。自分たちでしっかりできる子たちなので」という選手たちとともに過去最高成績に並んだ。

 インターハイ予選王者を破り、歓喜の8強入りだが、チームの目標はまだ先にある。熊澤は「正直、信じられないのがあるんですけれども、自分たちが目指してきたのはベスト8よりももっと上なので、これから“本当の戦い”が始まるなと思って、これから1週間、また良い準備をして、今よりも良い試合ができるように頑張りたいと思います。歴史を俺らが、変えます。歴史を作りたいと思います」と力を込めた。自分たちは、まだまだやり切っていない。最高の準備をして準々決勝を迎え、新たな歴史を刻む。

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
●【特設】高校選手権2021

TOP