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[MOM3616]大成MF中村浩太(2年)_ポテンシャル抜群のファンタジスタが「時間を止める」スーペルゴラッソ!

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大成高が誇るファンタジスタ、MF中村浩太

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.24 選手権東京都予選Bブロック準々決勝 大成高 2-1 早大学院高]

 時間が止まった。シュートを打った選手も、一歩も動くことが叶わなかったGKも、それ以外の20人も、ただただその軌道を見つめることしかできなかった。ボールがゴールネットへ吸い込まれ、それぞれの時間が再び動き出す。

「コースは狙い通りなんですけど、完璧に行きすぎました。打った瞬間は外れたかなと思ったんですけど、一瞬落ちてくれて、マジで頭が真っ白になりました」。大成高が誇るファンタジスタ。MF中村浩太(2年=東京ヴェルディジュニアユース出身)は、その右足から生み出したゴラッソで、ピッチの時空を歪ませた。

 早大学院とのクォーターファイナルは、前半で1点を先制される展開に。なかなか大成もチャンスを作り切れないままに40分間が終了したが、チームは平常心を保てていたという。中村もハーフタイムのロッカーを「失点した時間がまだ早かったので、一瞬焦ったりはしたと思うんですけど、まだまだ行けるという雰囲気でした」と振り返る。

 まずは後半12分。中村が右からCKを高いボールで蹴り込むと、10番を背負ったFW原輝斗(3年)がこぼれ球をきっちり蹴り込んで、1-1の同点に。15分には早大学院が迎えた決定的なチャンスを、チームの守護神を任されているGKバーンズ・アントン(3年)が超ファインセーブで凌ぐ。3年生の攻守の軸が躍動すると、主役は2年生がさらっていく。

 24分。右サイドの高い位置で奪った大成のスローイン。DF多和田鳳月(2年)が投げ入れたボールを、キャプテンのMF高山築(3年)が身体を張って残すと、中村の視界にシュートの辿るべきコースが浮かび上がる。「築くんが相手をブロックしてくれていて、ゴールのコースがちょうど空いていたので、シュートを打とうと思って打ったら、良い感じに行きました。迷いはなかったです」。

 迷いがなかったのはボールも一緒。少し揺れながら、誰一人触ることのできない左スミのゴールネットへ飛び込んでいく。「ちょっと時間が止まったような感じでしたけど、トレーニングでもああいうのを決めるんですよね」と指揮官も納得のスーパーミドル。「自分じゃなくても誰かが決めてくれるだろうと思ったんですけど、自分が最後に決めることができて良かったです」と笑顔を浮かべた中村の鮮やかな逆転弾が、チームを西が丘のセミファイナルへと導いた。

 選手権予選に入ってからは絶好調。初戦の明大中野八王子高戦ではハットトリックを達成し、この日も貴重な決勝ゴール。自分でも乗っている感覚を抱いている。「結構調子、いいです。上がってきました。自分は試合前日に身体のケアで毎回トレーナーの方の接骨院に行くんですけど、そのおかげだと思います。身体も軽くなりますし、股関節の可動域も広がってボールも蹴りやすくなるので、凄くいいです」。

 次に対峙する相手はカナリア軍団として知られる帝京高。インターハイ予選では準々決勝で0-2と敗れている相手であり、中村にとってはMF押川優希(2年)にFW伊藤聡太(2年)と中学時代を東京ヴェルディジュニアユースで共に過ごした仲間がプレーしているチームでもある。

「個人的にもあの2人には特に負けたくないですし、インターハイは0-2で負けて、内容も向こうがずっと圧倒していた感じだったので、今度は自分たちが圧倒して、チームとして勝ちたいと思います。自分は前でボールを収めたり、リズムを作ったりするのが仕事だと思うので、そういうことをしつつ、勝ちたいです。勝ちます」。

 この日のゴラッソを見てしまうと、期待せざるを得ないだろう。あるいは自らも気付いていないような中村が秘める特大のポテンシャルが解き放たれた時、自ずと大成のチームメイトたちも歓喜に包まれているはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
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