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[関東]“三つ巴”最終決戦を制し流経大が逆転V!19年に2部降格、チョウ・キジェ招聘、7人がJ1内定、2度のコロナ活動休止

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流経大が12年ぶりのリーグ優勝を飾った

[11.13 関東大学L1部第17節延期分 明治大1-2流通経済大 中台運動公園陸上競技場]

 流通経済大が明治大との最終決戦に逆転勝ちし、2009年以来、12年ぶり4回目となるリーグ優勝を飾った。

 話題に事欠くことのない優勝になった。物語の始まりは19シーズン、序盤から勝ち星から遠ざかった流経大は、最終節を待たずにまさかの2部降格が決定。幾多のJリーガーを輩出してきた名門が、初めて“挫折”を味わった。「1つの時代の炎が消えかけた」。中野雄二監督も当時、退任をほのめかすなど、復活に時間を要すことも考えられた。

 しかし翌年、救世主が現れる。パワーハラスメントの問題で浪人状態にあったチョウ・キジェ氏を研修という形でコーチとして迎え入れたのだ。現4年生はもともと評判の高い世代だったが、元J1監督の教えを吸収することで、より成長をみせることになった。そして戦う姿勢を取り戻したチームは2部リーグを優勝して、1年での1部復帰を決定。カップ戦で関東王者を決めるアミノバイタルカップでも優勝を飾った。

 流経大のほとんどの選手が口をそろえるのは、「チョウさんのおかげで成長できた」ということ。中野監督も「チョウさんの影響力は想像以上。再びチャレンジできる集団にしてもらった」と感謝の言葉を並べる。京都の監督に就任した今でもアドバイザーという肩書がチームに残るチョウ氏は、京都でのシーズンを終えた来月は、流経大の指導に来ることになっているという。インカレではベンチ入りすることも検討されている。

 そして“チョウ・キジェチルドレン”たちは最終学年でしっかりと結果で応えてみせた。春先には7選手(佐々木旭(川崎F)、宮本優太安居海渡(いずれも浦和)、佐藤響、菊池泰智(いずれも鳥栖)、仙波大志満田誠(いずれも広島))がJ1クラブへの内定を発表。卒業した伊藤敦樹(浦和)、アピアタウィア久(仙台)、野々村鷹人(松本)が卒業したことで不安定な守備をみせる試合も多かったが、それ以上の攻撃力で得点を量産。最終的にはリーグ1位となる47得点を積み上げた。

 しかし昨年から続く新型コロナウイルスの影響は、今季の流経大にも大きな試練を与えていた。6月にはラグビー部でクラスターが発生した影響で活動を休止。さらに8月にはサッカー部でクラスターが発生したことで活動の休止を余儀なくされた。総理大臣杯開幕直前の悪夢。約40日間、部員たちはジョギングすらさせてもらえない日々を過ごしたという。

 活動休止明けで行った10月2日の立正大戦を0-3で落とすなど、復帰直後のコンディションは最悪だったが、選手たちは戦いながらコンディションを戻していった。さらにメンバーを固定することなく、選手のその日の状態を見極めて起用することで、優勝への望みを繋いでいった。

 延期分を多く残す流経大は終盤、緊張感の続く試合を戦ったが、チーム一丸となって明大との最終決戦という目標に向け突っ走ってきた。10月30日のリーグ最終節では法政大に1-6で敗れたことで”状況を面白く”させてしまったが、“負ければV逸、勝てば優勝決定戦へ”という6日の早稲田大戦にしっかり勝ち切って、この日の決戦を迎えていた。

 明大戦では前半42分の失点で前半を1点ビハインドで折り返したが、後半開始直後にセットプレーの流れから佐藤響の豪快弾で同点。そして後半29分には佐々木旭のクロスから仙波大志が逆転弾を決めて、逆転優勝を手繰り寄せた。最終戦、優勝を決める試合で得点を演出したのがすべてJ1内定選手。今年の流経大を象徴する試合にもなった。

 残すは12月に開催される全日本大学サッカー選手権(インカレ)。夏に獲り逃した日本一のタイトルを目指すのみだ。安居海渡が肉離れ、主将・満田誠が半月板を痛めるなど怪我人も出てきているが、満田は「リーグ優勝で完全燃焼するのではなく、インカレまでの期間でより成長して、他の大学を圧倒して、今年の流経は本当に強かったと思わせるくらいのトレンドを作れたらいい」と力強く話した。

(取材・文 児玉幸洋)
●第95回関東大学L特集

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