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プレミアWEST10試合でわずか1敗。公立校・大津がエースの2発と堅守でG大阪ユースにも対抗し、ドロー

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後半12分、大津高MF森田大智主将が先制ゴール

[11.21 高円宮杯プレミアリーグWEST第16節 G大阪ユース 2-2 大津高 OFA万博フットボールセンターG]

 公立校の大津がプレミアリーグでまた強豪から勝ち点奪取――。21日、高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ2021 WEST第16節で前節まで4位のガンバ大阪ユース(大阪)と2位・大津高(熊本)が激突。2-2で引き分けた。

 今季は新型コロナウイルスの影響によって、全日程消化は困難。消化試合数も異なる。例年の総勝ち点ではなく、勝ち点率による順位決定の可能性もありそうだ。その中、消化試合数こそ少ないものの、勝ち点率では1位(6勝2分1敗)の大津と勝てば同2位へ浮上する4位(6勝1分3敗)のG大阪ユースが直接対決した。

 大津はこの試合前までの9試合でわずか1敗、計5失点の堅守。10月の2試合では首位の広島ユースを1-0、クラブユース選手権優勝の名古屋U-18も5-1で撃破するなど4連勝中だった。一方のG大阪ユースは前節、広島ユースを6-1で圧倒するなど10試合で30得点の破壊力を見せている。

 ファーストチャンスは大津が作り出した。前半4分、U-17日本高校選抜MF碇明日麻(1年)からのパスを受けたU-18日本代表候補MF森田大智主将(3年)が左中間からPAへ切れ込んで左足一閃。ファーポストを叩いたボールに碇が詰めるもシュートは枠上へ外れた。

 その後はMF三木仁太(3年)が球際で再三強さを発揮し、MF吉原優輝(2年)もセカンドの多くを回収するなどG大阪ユースがボールを支配。DFラインからビルドアップし、右のU-22日本代表MF中村仁郎主将(3年)と左のMF安達晃大(2年)のところで起点を作り出す。両翼がカットインからシュートへ持ち込んでいたほか、速攻からU-18日本代表候補FW坂本一彩(3年)が鋭く前進して決定機を演出するシーンも。また中村は相手に警戒されながらも相手の寄せの逆手を取る形でPAへ切れ込み、大津ゴールを脅かしていた。

 大津はこの日、チームの心臓であるMF薬師田澪(3年)と右の高速SB日高華杜(3年)が大学受験のために不在。だが、代わりに初先発したMF佐藤歩夢(3年)や経験値の高い右SB和田理央(3年)が守備面で健闘する。なかなかプレスがかからず、苦しい展開だったことは確かだが、各選手が声を掛け合いながらマークを受け渡し、最後の局面でCB川副泰樹(3年)とCB寺岡潤一郎(3年)が確実にボールを弾き返す。

 また、左SB岩本昌大郎(3年)が中村からのボール奪取にも成功。前半だけでシュート12本を打たれる展開だったものの、山城朋大監督が「(押し込まれる中でも)粘り強さとかはシーズンを通して彼らが力つけてきたので良かったです。僕らの中では余裕なくてGKが良く頑張ってくれた」と語ったように、U-18日本代表候補GK佐藤瑠星(3年)の安定感高いセービングも大きかった。

 前半30分のU-17日本代表FW南野遥海(2年)のヘッドと後半4分の安達のカットインシュートがポストを叩いたこともあり、“リーグ最強”の攻撃陣からゴールを守り続けた大津が先制点を奪う。後半12分、大津は中央から左へボールを動かすと、左中間でパスを受けた森田が前向きに仕掛ける。細かなタッチのドリブルで相手CBを揺さぶり、右足一閃。ファーサイドのゴールネットに強烈な一撃を叩き込んだ。

 我慢強く戦った大津の選手たちが喜びを爆発させる。対するG大阪ユースは慌てず、ボールを握っての攻撃を継続。大津は守りがズレかけてもPA付近で人数を掛けてボールを奪い返す。それでも、G大阪ユースは30分、CBの野中陸(3年)が左中間からドリブルで大きく前進。虚を突かれる形となった大津DFに対し、野中は坂本とのワンツーでPAへ侵入する。そのまま左足シュートをゴールへ流し込み、同点に追いついた。

 G大阪ユースは同点直後、南野の左足シュートが三度バーを直撃。大津も勝ち越し点を目指して攻め返す。ターゲットのU-17日本代表候補FW小林俊瑛(2年)へボールを入れ、セカンドボールを拾った森田やともに交代出場のMF田原瑠衣(2年)、MF農祥英(3年)が前に出る。そして42分、農が馬力のあるドリブルで強引に右サイドを突破。PAで倒されてPKを獲得した。これをキッカーの森田が右足で決めて2-1。大津の執念のゴールで決着がついたかと思われたが、G大阪ユースは諦めない。

 45分、中村の右FKに飛び込んだ南野が相手選手と接触し、PKを獲得。これを南野が左足で決めて2-2とした。互いに3点目を目指したが、スコアは動かずに試合終了。G大阪ユースの指揮を執った明神智和コーチは、幾度もポストに嫌われたことから20、30cmまで精度にこだわることを求めた一方、「結果、引き分けましたけれども、非常に内容が良かったと思いますし、力を付けてきたなという印象のゲームでした。(相手の)守備ブロックが堅い中で取られても2回追いつきましたし、メンタリティー含めて個人、グループ、チームとしても跳ね返していく力というのは付いてきているんじゃないかなと思います」と頷いた。

 元日本代表の名手・明神コーチも「やはり堅かったです」とコメントしていた大津の守備。G大阪ユース攻撃陣にこじ開けられたものの、守備の頑張りによって勝ち点1を死守した。平岡和徳総監督が「学習能力、サッカーインテリジェンスが高いです」と認める今年の大津。今回の戦いもまた糧に成長することが期待される。

 全国高校選手権熊本県予選は全4試合で7得点以上をマークし、無失点優勝。やや緩んでいた部分もあったかもしれない。山城監督は「改めてスピード感とかテクニックの高さとかこのレベルでやらないといけないと痛感しました」。目指すレベルも再確認したチームは質や強度の向上と結果の両方を求める。

 森田は「勝ち点率だったら自分たちにもチャンスがあるので(結果にも)こだわっていきたい。自分たちの目標である(プレミアリーグ)優勝を成し遂げて、さらに成長して選手権に臨んで行けたら良い」と力を込めた。連動した守備をベースに周囲の予想を上回る戦い、成長を見せている“公立の雄”大津が可能性ある限り、本気で優勝にチャレンジする。

(取材・文 吉田太郎)
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