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「レオの分もオレが止める」。清水ユースGK中島惇希がファインセーブ連発で青森山田をシャットアウト!

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完封勝利に貢献した清水エスパルスユースの守護神、GK中島惇希

[11.21 プレミアリーグEAST第16節 青森山田高 0-2 清水ユース 青森山田高G]

 その伸ばした右手に、仲間の想いが乗った。凄まじい相手のボレーシュートを、凄まじい反応で弾き出す。「あの時はスコアも1-0で拮抗していたので、『絶対に止める』という想いで止められたので良かったです。止めた瞬間は自分も盛り上がりましたね」。

 清水エスパルスユースの1番を託された守護神。GK中島惇希(3年=フォルトゥナSC U-15出身)の積み重ねてきた努力が、この大一番で完封勝利という形で実を結んだ。

 勝ち点31で並んだ首位の青森山田高(青森)とアウェイで対峙するビッグマッチ。清水ユースのゴールマウスには中島が送り込まれる。「前回は無失点だったんですけど、その前までは結構失点が続いていたので、しっかりチーム内でまた声を掛け合って、無失点で行こうという意識でやっていました」。4連勝と好調を維持している中で、失点する試合が続いていたものの、直近の横浜F・マリノスユース(神奈川)戦は、リーグ再開後初の無失点。良い感触を携えて、青森に乗り込んできた。

 立ち上がりからインテンシティの高い展開が繰り広げられた前半は、ホームチームのペース。中島の出番も多くなる。8分。左右に振られる展開から、MF松木玖生(3年)のシュートを丁寧にキャッチ。31分。右サイドから放たれたMF田澤夢積(3年)の枠内シュートも、必死に弾き出す。37分。カウンターからMF宇野禅斗(3年)が打ち切ったフィニッシュも、確実にセーブ。「全体的にチームも身体を張ってやってくれていましたし、自分も『しっかり集中してやらなきゃな』と思っていたので、結構精神面から身体も動かせたかなと思います」。失点は許さない。

 後半24分にエースのFW千葉寛汰(3年)が先制ゴールを叩き出し、1点をリードすると、追い付きたい青森山田の攻撃が勢いを増していく。懸命にサイドへクリアしても、ロングスローという強烈な“飛び道具”が再びゴール前を襲う展開。「ロングスローも結構ニアに飛んでくることが多くて、クリアに勢いが出ないですし、近くにこぼれることが多いので、そのクリアした後のセカンドを意識させるという指示が一番大きかったですね」。中島はチームメイトに声を掛け続ける。

 最大の見せ場は終盤にやってきた。38分。青森山田のFW渡邊星来(3年)が、胸トラップからさらにもうワンタッチしてマーカーを剥がし、左足で叩いたスーパーなボレー。枠を捉えたこの軌道を、中島は逆手になった右手一本で鮮やかに弾き出す。

「目の前には誰もいなくて、視界も結構クリアだったので、あとは相手とボールを見て反応できたかなという感じです。アレは良かったですね」。千葉のチーム2点目となるゴールが生まれたのは、その3分後。エースの2ゴールはもちろん、中島のビッグセーブもこの日の勝利に大きく貢献したことに疑いの余地はない。

 岩下潤監督は「結構上のボールにもチャレンジしていましたし、目の前のボールへの反応は彼らしかったですし、どんどんやれることが増えていますね」と中島を評価しながら、「2人で競ってきたレオ(福井レオナルド明)が今はちょっとケガ気味なんですけど、彼ら2人が競争してきた結果が、それぞれの成長に繋がっているので、日常がどれだけ大事かということをまた選手に伝えたいと思います」と2人のGKについても言及している。

 以前、GK福井レオナルド明(3年)が話していた言葉を思い出す。「アツキは僕にないものを全部持っていて、そこがやっぱり自分の緊張感を高めるというのもそうですし、彼のことも自分は認めています。もし自分がケガをしても、アツキには安心して任せられるので、自分は全部の力を出すだけですし、そういう仲だと思っているので、大きい存在ですね」。

 中島にとっても“盟友”の存在の大きさは、あえて言うまでもない。「シーズンの最初からレオが戦ってきてくれて、途中では交代交代で試合に出たりもしてきたので、今はケガをしてレオが出られない中で、『自分がシュートを止めて、しっかりチームを勝たせていかなきゃな』という想いでやっています」。ちなみに、福井は2人のキャラクターを、こう分析している。「性格は真逆ですね。自分は騒ぐ方の明るいタイプで、アツキは冷静な方で几帳面な感じですね(笑)」。

 確かにこの日のビッグセーブの瞬間も、ガッツポーズも繰り出さず、大声も張り上げず、淡々と次のプレーに備えていた。「これからも1試合も落とせないので、今まで通り声を掛け合ってやっていければいいかなと思います」。慌てず、騒がず。堂々と、冷静に。相手の勢いを自らのセーブで削ぎ続けていく中島の凄味が、オレンジ軍団に勝利と歓喜を同時に連れてくる。

(取材・文 土屋雅史)
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