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[MOM3689]前橋育英FW守屋練太郎(3年)_この一撃ですべて“チャラ”。今大会無得点のストライカーがファイナルで堂々の決勝弾!

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貴重な決勝弾を沈めた前橋育英高FW守屋練太郎(9番)が歓喜のダッシュ!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.23 選手権群馬県予選決勝 前橋育英高 1-0 桐生一高]

 今回の選手権予選初ゴールは、ファイナルで生まれた。誰よりも自分が待ち侘びていた1点を奪い、笑いながら口にした言葉が面白い。「今まで点を決めていなかったですけど、今回の試合で決めたから、まあ、チャラでいいかなと(笑)。そうしたいぐらいですけど、やっぱりダメですね……」。

“チャラ”にしてもいいだろう。そのゴールは、タイガー軍団を全国に導く決勝点。チームにとって十分過ぎるほどに価値のある一撃になったのだから。前橋育英高の9番を託されたストライカー。FW守屋練太郎(3年=Jrユースサッカークラブ与野出身)が、ようやくペナルティエリアの中で輝いた。

 最大のライバル、桐生一高と対峙した決勝。最前線に入った守屋はまずプレスに奔走する。「前からプレスを掛けることで育英らしさを出すというか、前線からの球際の強さを見せていくと相手もたぶんビビると思うので、そういう部分で立ち上がりは大事にしていました」。バチバチやり合う意欲を、自らの姿勢で示していく。

 前半36分には一度失ったボールを高い位置で自ら取り返し、やや強引なミドルシュートにトライ。軌道は枠を外れたものの、「今までシュートが全然多くなくて、シュート数を増やしたくて、結構強引にシュートを打ったりと、そういうところを意識しました」と守屋。まずは、シュート。積極性を失わないように。まずは、シュートを。

 後半12分にもチャンスが到来する。MF小池直矢(2年)、MF渡邊亮平(3年)と繋いだボールを受けると、枠へ飛ばした守屋のシュートは相手GKにキャッチされたが、ゴールへあと一歩まで迫る。積極性を失わないように。まずは、シュートを。

 その2分後。この試合最大の決定機がやってきた。MF笠柳翼(3年)が前を向いて仕掛ける。「翼がボールを持つと良いボールが来る」。信じて、動き出す。「フォワードで出るようになって、最初はそういう動きとかも分からなくて、“だいたい”でやっちゃっていたんですけど、考えてちゃんとプレーするようになってから、1つ1つの動き、オフ・ザ・ボールの動きを意識するようになったんです」。身体に叩き込んできたイメージで、動き出す。

「もう正直打った瞬間はゴールを見ていなくて、打って、『あ、入った!』みたいな。嬉しかったです。嬉しい限りです(笑)」。右足で振り抜いたシュートが、左スミのゴールネットへ突き刺さる。祝福に来たチームメイトを振り切り、一目散に向かったのはベンチに入れなかったメンバーが待つバックスタンドの応援席。「なかなか点を決められていなくて、『点を獲ったらみんなの方に行くね』と言っていたので。でも、距離が遠かったので、ちょっと遠めに『イエーイ』ってやりました(笑)」。“みんな”も『ちょっと遠めの「イエーイ」』に大喜び。とうとう飛び出した9番のゴールが、チームに勝利と全国切符の歓喜を同時に呼び込んだ。

 もともとは埼玉出身。テレビで見た黄色と黒のユニフォームに憧れ、このチームの門を叩いた。「そんなに選手権とか見たことはなかったんですけど、育英が流経とやっている試合を初めてちゃんと見て、『育英スゲーな』って。それで育英に入りたいと思って、ここに来ました。最後の最後で点を決めて、勝ち切れるのが凄いと思って。育英らしいというか、テレビで見ていてカッコ良かったです」。前橋育英が日本一を勝ち獲った光景が、今でも忘れられないという。

 守屋が自らのポジションを本格的に絞ったのは、今年に入ってからだ。「それまではサイドとかトップ下とかフォワードとか、結構全般的に出ていて、フォワードで確定したのは今年の新人戦からです。もともと足元で受けることが多かったので、今でもたまに癖で出て、『オマエはいいからはたけ。ゴール前で仕事しろ』って怒られちゃうんですけど(笑)。点を決められるのは楽しいですね」。この日のようなゴールを決めてしまっては、もうフォワードの魅力から逃れられないだろう。

 ピッチに立つ時とはギャップのある、ほんわかした雰囲気を纏っているが、最後に強気な言葉が飛び出した。「やっぱりこういう0-0の試合で、最後の最後でも自分がちゃんと決められるというか、力強く勝ち切れるチームの選手になりたいと思います。自分が点を獲って、勝ち進んでいきたいです」。

 とりあえず今までやきもきさせてきたチームメイトへの“借り”は、これでチャラ。ここからは大いにチームメイトに“貸し”を作るゴールを、守屋が量産してくれるはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

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