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名古屋U18、青森山田でプライドを打ち砕かれた過去…住田将、東京学芸大で自信を取り戻し松本山雅FCへ

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キャプテンとしてチームをけん引したMF住田将

[11.27 1部参入プレーオフ 拓殖大1-0東京学芸大 浦安]

 我慢していたはずだった。「昇格できなかった悔しさ、最後に悔いが残ってしまったなという思いと…。チームを助けられずに終わってしまった不甲斐なさが込み上げてきました」。参入プレーオフに敗れたあと、試合後に行った観客席に向けてのあいさつで、東京学芸大の主将MF住田将(4年=青森山田高/松本内定)はたまらず声を詰まらせた。

「1部の舞台を残してあげたかったけど、(来年も)後藤健太や草住(晃之介)、橋本(柊哉)と主力で戦ってきた選手がいる。今日も助けてくれることが多かった。そういった選手が中心になって引っ張っていってほしいし、果たせなかった昇格を期待したいと思います」

 国立大学である東京学芸大は、元日本代表の岩政大樹氏や同MF高橋秀人(横浜FC)ら有力選手を輩出している名門だが、近年は低迷。19年には東京都リーグへの降格も経験した。しかし1年で復帰した今季は、1年生から主力を務めた選手の多くが最終学年を迎えていたこともあり、関東リーグ2部で3位の好成績。2012度以来の1部復帰まであと一歩のところまで迫った。

 住田は愛知県名古屋市出身で、中学時代から名古屋U15のキャプテンを務めたほどの有望選手。当時は世代別代表として海外遠征も経験した。しかし名古屋U18に上がってからなかなか試合に絡むことが出来なかったことで、高校2年生の冬に青森山田高への転校を決意。心機一転、北の名門で“再起”を目指すことになった。

 だが同学年には現在ヴィッセル神戸で活躍するMF郷家友太が在学。一学年下のMF檀崎竜孔(札幌)ら中盤のタレントは豊富で、試合メンバーに絡むことすら難しい日々を送った。スタメンで出た試合はプレミアリーグ1試合と選手権予選の1試合だけだったという。「当時は自信を失っていた」。U-15、U-16日本代表歴を持つ住田のプライドは、完全に打ち砕かれてしまった。

 ただそんな住田の自信を東京学芸大への進学が再び呼び起こすことになった。関東大学リーグ2部の開幕3戦目で初のベンチ入りを果たすと、続く第4節の青山学院大戦で途中出場してデビュー。そして第5節の立正大戦からはレギュラーとして抜擢され、18試合出場2得点1アシストの成績を残した。

 住田も「この大学に来たからこそ、取り戻した自信もあった」と振り返る。「高校時代試合に出られない経験をたくさんしてきた。上手くいかないことが高校時代は多かったけど、それを大学に入ってから試合に絡めたことで、自信を少しずつ取り戻せた。チームに感謝したいです」。

 春からは松本山雅FCでJリーガーとしてのキャリアをスタートさせることになる。高校でプロに進んだ郷家は常に意識してきた存在。また高校の同期である法政大のDF蓑田広大(湘南内定)、名古屋U18時代に同期だった明治大のMF杉浦文哉(水戸内定)もこれからも意識していきたいと話す。

「(郷家は)高校時代から際立った存在で、今もあれだけすごい選手が入ってきている中で試合に出続けていることは凄いなと思っている。カテゴリは違うかもしれないけど、また同じ舞台で戦いたい思いはある。ここから追いつけ追い越せで、一歩ずつ成長していければと思います」

 左利きのゲームメーカーということもあり、名波浩監督の指導による更なる飛躍が期待される。「ゆくゆくは愛される選手になりたい。行動でもプレーでも応援してもらえるように、日ごろからの練習を100%でやることもそうですし、人間的にも逞しくなれればという思いでやっていきたいです」。4年間で取り戻した自信を胸に、再び表舞台に立つ。

(取材・文 児玉幸洋)
●第95回関東大学L特集

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