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サッカー大好き集団のキャプテン。三菱養和SCユースDF森山純平は9年分の恩返しを胸にラストゲームへ

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三菱養和SCユースのキャプテン、DF森山純平

[11.28 高円宮杯プリンスリーグ関東第17節 三菱養和SCユース 1-1 前橋育英高 三菱養和会 巣鴨スポーツセンターG]

 小学校4年生から通い続けてきたこのグラウンドでのラストゲーム。それはもちろん勝ちたかったけど、やっぱり仲間たちと一緒にやるサッカーは、最高に楽しかった。

「複雑ではありましたね。凄く長くこのグラウンドにお世話になっていたので、最後は勝ちたかったという気持ちの部分では凄く悲しいですけど、振り返って『楽しかったな』という気持ちが一番かなとは思います」。

 サッカー大好き集団の三菱養和SCユースを束ねるキャプテン、DF森山純平(3年=三菱養和SC巣鴨ジュニアユース出身)は笑顔を浮かべながら、終わったばかりの90分間に想いを馳せていた。

「プレミア参入も懸かっていて、勝たなくてはいけない状況と、このグラウンドでできる最後の試合ということで、凄く全員気合も入っていました」。森山もそう語った前橋育英高(群馬)との一戦は、勝利のみがプレミアリーグプレーオフ進出への可能性を残す唯一の道。やや堅く立ち上がった流れの中で、前半終了間際にFKから失点を許す。

 後半は、攻める。何度も相手ゴール前に迫るが、なかなか同点弾が生まれない。だが、45+1分にようやくその瞬間は訪れた。MF須藤太一(3年)の右クロスに、投入されたばかりのFW依田悠希(2年)のヘディングがゴールネットを揺らす。ファイナルスコアは1-1。勝利にはあと一歩で届かなかったものの、確かな意地は見せた。

「なかなか点が獲れない時間帯が続いていても、ああやって最後に点が入ったというのは、やっぱりこのグラウンドだから起こり得た感じもありますし、全員で手繰り寄せたゴールなのかなって。プレミアに参入できなかったということで、試合後はちょっと落ち込んだりはしましたけど、前育に1-1というのは悪い結果ではないですし、そこは誇っていいと思います」。少し嬉しそうで、少し寂しそうな森山の表情が印象的だった。

 彼らは8月以降のリーグ戦で、4勝2分けと一度も負けていない。「今までは練習ももちろん強度はありながら、楽しさもあってという中で、その楽しさの方が大きかったんですけど、勝てる自信が出てきてからは、そこから試合に対するワクワク感とか、勝ちたいという気持ちと、今までもあったサッカーを楽しむ気持ちがうまく合わさった感じがしました」。キャプテンもチームの雰囲気に、十分な手応えを掴んでいた。

 特に試合中にも、意識の変化を感じることが少なくなかったという。「指示の声も試合を重ねるにつれて洗練されて行って、チームの動きも良くなったので、やりやすさも感じましたし、もっともっと上に行きたいという気持ちもどんどん出てきました。チームの勢いも凄く付いてきて、今までは点を食らったら『マジか……』みたいな感じになっていたんですけど、点を獲られても『全然次があるでしょ。こっちも獲っちゃおう!」みたいな感じになっていたので、そこは変わったなと思いました」。この日のゴールも、きっとその延長線上にあったのだろう。

 9歳からスクールに通い始めて、9年目。養和愛は人一倍強い。「やっぱりここだから、自分もサッカーが続けられたかなと思っています。Jリーグのクラブでも、高体連のチームでもない街クラブの良さがあって、コーチ陣や保護者との距離の近さだったり雰囲気とか、そういう部分が養和にはあるので、1回1回の練習が毎日楽しみでしたね」。

 残された公式戦はプリンスリーグ最終節の1試合のみ。この仲間とできる最後の90分間。森山も覚悟は決まっている。「やっぱり試合で勝利するということが一番の恩返しの形だと思っているので、もうプレミア参入はなくなりましたけど、リーグ戦を勝って終えたいという気持ちは強いですし、みんなで笑って終わりたいですね。もちろん勝つ自信はあります」。

 9年分の恩返しを胸に、森山はかけがえのない仲間たちと、養和のエンブレムを付けたラストゲームへと向かう。

(取材・文 土屋雅史)
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