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運命的な対戦に感極まり、男泣き…宮崎産業経営大の主将MF依光秀が起死回生の同点ゴール

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宮崎産業経営大MF依光秀(4年=鵬翔高)

[12.8 全日本大学選手権1回戦 高知大 延長1-2 宮崎産業経営大 埼スタ2]

 まだ試合の途中だったが、熱いものがこみ上げた。宮崎産業経営大(九州3)主将のMF依光秀(4年=鵬翔高)が起死回生の同点ゴール。0-1で迎えた後半19分、WB安田泰晟(2年=宮崎日大高)の左クロスに飛び込み、強烈ヘッドで叩き込んだ。

「流れが悪い中でのゴールやったので、嬉しかったです」。前半終了間際にセットプレーから先制を許したが、後半は宮崎産業経営大が攻撃の圧を強めた。再三のチャンスを堅守に跳ね返されながら、ついに反撃を実らせた会心の一撃。チームメイトが歓喜の輪をつくり、最後尾から駆け寄ったGK河野大雅(4年=鵬翔高)と熱い抱擁を交わした。

 その直後、堪え切れなくなった依光は両手で顔を覆い、大粒の涙をぬぐった。試合中に感極まるほど、この試合に懸ける思いは特別だった。

「インカレ初戦が高知大に決まった時点で、何がなんでも勝ちたいと自分の中で決めていました」

 高知県出身の依光にとって、高知大との対戦は運命的だった。

「地元が高知で、高知大との試合だったので思わず…。自分の実家が生姜農家で畑をやっていて、高知大の選手たちがバイトで来てくれて。帰省したときに自分も手伝うんですが、一緒にやったりしていたので、高知大の選手と仲良くなっていました」

 高知大MF渡邉大生(4年=松江南高)らとインカレのピッチで“再会”を果たし、試合中に笑顔を見せる場面もあった。

 インカレは競技生活最後の大会だ。ボランチの依光は球際、対人の強さを発揮しつつ、絶妙なパスを大分内定FW宇津元伸弥(4年=鵬翔高)へと通し、チャンスを演出。宇津元をはじめ、GK河野、DF徳尾雄稀(4年=鵬翔高)は高校の同期。宇津元はプロの道に進むが、依光はスパイクを脱ぎ、地元・高知に帰って就職する。

 これが苦楽を共にしてきた仲間たちとプレーする、最後の時間だ。「コロナ禍で思うように練習ができない中で、自分たちが率先して後輩たちに背中を見せようとして、後輩たちも付いてきてくれた。4年生も覚悟を持って試合に臨めたと思います」。徳島大の思いも背負いながら、2回戦は明治大と対戦する。



(取材・文 佐藤亜希子)
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