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VARが初のJ1フルシーズン完走…レビュー頻度に成果もJFA審判委「改善すべきものはたくさんある」

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 日本サッカー協会(JFA)の審判委員会は10日、今年度最後のメディアブリーフィングを行い、初めてJ1リーグ戦にフルシーズンで導入されたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の統計を公表した。判定修正の手続き「レビュー」の頻度は国際的な目安より大幅に少なく、導入初年度としては異例の好スタートとなった。

 VARは当初、昨季からJ1リーグ戦に完全導入される予定だったが、新型コロナウイルスの影響で審判員の確保が困難になったため、中断明けの第2節以降は一時見送り。今季から全380試合で新たに採用された。事前に研修を受けた1級審判員52人がVAR、AVAR(アシスタントVAR)として試合を担当した。

 レビュー総数は78回で、そのうちピッチ脇モニターで再確認を行うオンフィールドレビューが51回、VARのみで再確認を行うVARオンリーレビューが27回だった。介入の割合は「4.87試合に1回」。国際基準の「3試合に1回」より大幅に少なかった。ピッチ上の審判員の判定精度の高さや、VARの適度な介入基準が要因とみられる。

 なお、レビューを行うかどうかを確認する「チェック」の総数は1562回。得点に関するものが1032回、PKに関するものが261回、退場に関するものが283回、人間違いが3回、その他が5回だった。1試合あたりのチェック数は4.11回で、1試合あたりに費やした時間は平均60.75秒(前半24.04秒、後半36.71秒)。なお、チェックによって試合が止まらなかった試合数は128試合あった。

 懸念されてきたチェックの所要時間に関しては、シーズンが進むにつれて改善が見られた。導入当初の開幕節から第10節までは「3.70試合に1回」のペースでレビューが行われ、1試合あたりのチェック時間は81.70秒だった。第11節〜20節は「6.25試合に1回」で52.00秒、第21〜30節は「4試合に1回」で61.25秒。第31〜38節は「8試合に1回」で45.00秒にまで短縮した。

 それでもトップレフェリーグループマネジャーの扇谷健司氏は1562回のチェック事象のうち改善が必要なものが145回あったとし、「まだまだ高い数字だと捉えている」と指摘。「映像の見せ方はこれでよかったのか、映像を見る角度はこれでよかったのか、フィールド上の審判員との交信が適切に行われていたか、VARとAVARの協力は的確だったのかなど改善すべきところはたくさんある」と運用スキル向上に意欲を示した。

 また質疑応答では報道陣からオフサイドディレイの運用に関する疑問も向けられた。VAR導入試合では判定修正の余地を残すため、副審はプレーが切れるまでオフサイドフラッグを上げるのを遅らせる運用が求められるが、ゴール前でコンタクトプレーが生じるなどの懸念が表出していた。

 扇谷氏は「当初スタートした時は2mくらいまで上げないでみましょうということになったが、判断は難しかった。副審はセーフティにオフサイドディレイの作業をかけることが多かったのは課題に捉えている」と説明。その一方で「幅を短くしすぎると本来得点となるべきものが取り消される可能性もある」とルールの難しさにも言及した。

 扇谷氏はあわせて「われわれとしては常にフィールド上の審判員の判定精度を上げる努力をすることで、VARが審判員の判定をサポートしていきやすいようにしたい」と述べ、ピッチ上の主審・副審のレベルアップにも引き続き取り組んでいく姿勢を見せた。

■2021シーズンVAR統計
レビューで判定が修正された回数:69
レビューで原判定が支持された回数:9

オンフィールドレビュー:51
VARオンリーレビュー:27

①得点に関わる事象
ゴールが認められた回数:12
ゴールが取り消された回数:27

②PKに関する事象
PKが与えられた回数:12
PKが取り消された回数:4

③レッドカードに関する事象
退場となった回数:9
警告にとどまった回数:2
カードが取り消された回数:1

④人違いに関する事象
人違いでカードの対象が変わった回数:0

(取材・文 竹内達也)
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