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大分MF松本怜は悲願のJ1→J3→J1→ACLならず…それでも貫く百折不撓「もう一度奮起してJ1に」

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[12.19 天皇杯決勝 浦和 2-1 大分 国立]

 2013年から大分トリニータに所属しているチーム最古参のMF松本怜が、天皇杯決勝で国立競技場のピッチに立った。今季のJ1リーグ戦出場数は、怪我に泣いた加入初年度の次に少ない14試合。それでも最後は片野坂知宏監督の信頼を得てフィールドに送り出され、ドラマティックな幕切れに終わった頂上決戦の歓喜と悲劇を噛み締めた。

 試合後、オンライン取材に応じた松本は「ACLに行きたかったし、優勝して歴史を作りたかったので、悔しいの一言」と悲願だったACL出場権が叶わなかった無念ををあらわにしつつ、6年間にわたって指揮をとってきた片野坂監督への思いを語った。

「感謝しかない。今年も試合に出られない時間があったけど、片さんだったから試合が出られない中でも納得して自分と向き合った。そこで頑張ったからこそ怪我明けでも国立の舞台に立たせてもらえたので感謝しかない」。

 4年ぶりのJ2降格という厳しい現実を突きつけられた2021年。松本自身も先発出場が続いた序盤はチームが不調にあえぎ、チームの戦績が上向いた中盤以降はなかなか出場機会を得られないという苦しい1年に終わった。それでも指揮官に対する信頼は最後まで揺らぐことはなかった。

 試合終了直後、片野坂監督は国立競技場のピッチの上で円陣を形成し、選手たちに激しいジェスチャーをまじえながら声をかけていた。

「グッドルーザーでいよう。胸を張って、顔を上げて、サポーターに挨拶しよう。このチームはいいチームだから。俺は自信を持って言う」。

 その間、松本はときおり目頭を押さえてうつむき、あふれ出る涙を拭うような仕草を見せていた。「僕は片さんにも優勝を味わわせてあげたかったし、大分から駆けつけてくれたたくさんのサポーターにも優勝を味わわせたかった。グッドルーザーでいたいけど、悔しい気持ちでいっぱい」。ロッカールームでの解散式を終えてオンライン取材に姿を表した際も、なおも消えない悔しさが十分に伝わってきた。

 だが、それでもサッカーは続いていく。

 百折不撓——。「何度折れてもくじけずに前を向く」姿勢を示した四字熟語は、松本が長年にわたって胸に刻んできた座右の銘だ。そして奇しくも、近年の大分トリニータが刻んできた激動の日々と重なる言葉でもある。

 松本が加入した2013年、大分は前年の昇格プレーオフを制してJ1に復帰したものの、再び1年でJ2に逆戻り。16年にはJ1経験クラブで史上初となるJ3降格の憂き目に遭った。ところが同年、片野坂監督の就任とともに躍進劇が再スタート。同年にJ2復帰、19年にJ1昇格を果たすと、今季は史上初めて天皇杯決勝の舞台にまで上り詰めた。

 片野坂監督は決勝戦前日の18日、大分トリニータというクラブがこれまで築いてきた歴史について次のように語っていた。

「私が監督になったからというだけでなく、トリニータというチームのカラーとして、ひたむきに、最後まで諦めずに、自分の持っているものを出し切ることを重要視してきた。諦めず、励みになるゲームをということをチームの理念としてやってきた」。

 そしてさらに言葉を続けた。「今季は(J2降格で)サポーターに残念な思いをさせた中でも、こうして決勝戦という素晴らしいゲームができるところまで選手たちが奮起してくれた。そんな伝統が重なって、この試合で思いを表現してくれると思う」。決勝戦ではまさに、その言葉にふさわしい姿勢を見せ、最後の最後まで死闘を演じてみせた。

 聖地国立での天皇杯決勝で最終章を迎えた片野坂トリニータ。だが、こうした“百折不撓”の精神は松本らの手によって今後も継承されていくはずだ。松本はJ1からJ3、J3からJ1という激動のアップダウンを経験してきた唯一の生き証人。所属10年目となる来季に向けて、力強く意気込んだ。

「いま思えば6年前にJ3に落ちた時、こうやって国立の天皇杯決勝の舞台に立てるとは想像していなかったけど、誰もが地道に地道に努力して、我慢して、苦しい時を乗り越えて頑張ってきた。だからこそいいご褒美じゃないけど、ここまで長くなってしまったかもしれないけど、努力した結果が必ず実るというのを片さんに教えてもらった。またこうやってJ2に落ちてしまうけど、必ず頑張ればJ1に復帰できると思っている。僕自身、百折不撓というスローガンをずっと掲げている。折れても折れても挑戦し続ける。来年一年、みんなでもう一度奮起してJ1に上がりたい」

(取材・文 竹内達也)
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