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“優勝候補でない”「須佐徹太郎からの愛を受け取った」阪南大イレブンの奮闘

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今大会限りで現場指導を離れる須佐副顧問

[12.25 インカレ決勝 阪南大2-3駒澤大 NACK5]

 初優勝を目指した阪南大(関西4)だったが、またも一歩届かなかった。2度リードを奪いながらの逆転負け。2015年度大会に続く準優勝に終わったことで、須佐徹太郎副顧問が「非常に残念」と唇を噛めば、ゲームキャプテンとして出場したMF江口稜馬(4年=野洲高)も「詰めの甘さが出てしまった」と残念がった。

 一方で江口は、「このメンバーでここまで来れて良かった」とも振り返る。今季は3月の天皇杯予選でチームの中心と計算していた江口や主将GK水谷友哉(4年=名古屋U-18)が長期離脱を要す大怪我を負い、夏場にはコロナ禍による活動休止も襲った。

 そんな難しいシーズンだったが、終盤になってチームは結束。一時はインカレ出場圏外にいたが、終盤の連勝でギリギリ4位に滑り込んで、インカレへの出場権を手にした。そしてその勢いを繋げたインカレでも、一試合、一試合で確実に成長。水谷も「正直、我々を優勝候補と考えている人は少なかったと思う。チャレンジャーとして戦えたと思う」と胸を張った。

 また阪南大は今大会限りで、1986年に監督に就任後、チームを全国屈指の強豪校に作り上げてきた須佐副顧問が現場指揮を離れることになる。試合後には目標にしていた歓喜の中ではなかったが、名将の功績を称えるかのように胴上げが行われた。須佐副顧問は「185cmを超える選手たちによる胴上げは怖かった」と笑いを挟むことも忘れなかったが、「学生の気持ちは嬉しかった」と感謝を語った。

 イレブンも“監督”への感謝を示す。特に今年1年、“最後の主将”として間近で接してきた水谷は特別な感情がある様子。「須佐監督は無理なことをいうことも多い。正直内部で上手くいかない時もあった」と言葉を選びながら話すも、「でも最終的にそれは須佐徹太郎からの愛だったということ。自分たち選手を息子のようにかわいがってくれた。過ごす時間が長いほど、多くの愛を受け取った4年間でした」としんみりと語った。

 4人対0人。卒業後に4人のJリーグ入りが決まっている駒大に対し、ほぼ全員がプロ入りを志望するが、まだ誰一人としてプロ入りが決まっていない阪南大の対決だった。大怪我からの復帰となる大会ながらゲームコンダクターとして存在感を発揮し、インカレベストMFを獲得した江口や、スピード豊かなプレースタイルが目を引いたMF奥山洋平(4年=西大寺高)、決勝でも得点を決めたFW藤原雅弥(4年=瀬戸内高)ら特長のある選手が多かった印象。インカレ準優勝メンバーは、輝かしいスタートラインに立てることを信じて待っている。

(取材・文 児玉幸洋)
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