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悪夢のPK失敗から1年。青森山田DF三輪椋平は再び帰ってきた全国決勝の舞台でリベンジ達成!

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チームメイトと日本一を喜ぶ青森山田高DF三輪椋平(4番/写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.10 選手権決勝 大津高 0-4 青森山田高 国立]

 自信を持って蹴ったPKが枠を外れ、涙に暮れる先輩たちに心の中で謝ることしかできなかったあの日から、1年。すべての努力は、この瞬間のためにあったと言っても過言ではない。悩んで、もがいて、それでも前を向いて、笑顔で高校サッカーを締め括る光景を思い描いてきた。

 3分間のアディショナルタイムが過ぎ去り、タイムアップを告げる笛の音が国立競技場のピッチに響き渡る。青森山田高(青森)のディフェンスリーダー。DF三輪椋平(3年=青森山田中出身)が何よりも求めてきた選手権での日本一は、最高の笑顔の中で達成された。

 1年前。PK戦までもつれ込んだ山梨学院高(山梨)との選手権ファイナル。延長後半からピッチに立っていた三輪は、4人目のキッカーとしてスポットに向かったが、キックは無情にも枠を外れてしまう。結果は悔し過ぎる準優勝。先輩たちが目指してきた全国制覇の夢を、自分が閉ざしてしまった。この想いを忘れた日なんて、あれから1日だってない。

 それですべてが帳消しになるなんて思わないけれど、先輩たちのためにできることは、自分たちが選手権で日本一になること。その揺るがぬ想いを携えて、三輪は最高学年となった3年生のシーズンをスタートさせる。

「今年は守備がカギになるとずっと言われていて、山田は守備のチームなんですけど、監督に言われていることのレベルも低くて、後ろに不安要素があるので、前の選手たちが攻撃のことを100パーセント考えられないというのがあったと思います」(三輪)。不安要素と名指しされた守備陣は、実際に納得のいくパフォーマンスを発揮できないプレシーズンを過ごし、なかなか自信を掴めないままにリーグ戦をスタートさせた。

 だが、三輪を中心にしたディフェンスラインは、あっという間にプレミアリーグの舞台でも通用し得る組織力と結束力を身に付けていく。「プレミアの試合を通じて、無失点とか被シュートゼロを達成していくにつれて自信にもなりましたし、自分の中でも危機察知能力というか、危ないところをいかに1人でカバーできるかという力は付いてきたと思います」(三輪)。

 結果的にインターハイでは6試合を3失点で凌ぎ切り、1冠目を達成。シーズン終盤には右SB大戸太陽(3年)、左SB多久島良紀(2年)と両サイドバックが揃って負傷離脱する中で、「監督からは『強いチームは1枚2枚代わったぐらいで負けない』という話をされました」と明かした三輪の存在感は一層際立ち、DF中山竜之介(2年)とMF小野暉(3年)という本職ではない“新サイドバック”もきっちりサポート。プレミアリーグEASTも16試合でわずかに9失点という驚異的な数字で、2冠目を引き寄せる。

 それでも、一番大事なのは選手権での日本一。12歳で群馬から青森の地へと身を投じた三輪は、大会前に高校最後の選手権に向けた想いを、こう語っていた。「選手権は6年間このためにやってきたという大会なので、もちろん優勝することもそうなんですけど、去年の借りを返すという意味でも大事な大会ですし、あとはやっぱり群馬から青森に出てきたことで、自分が一番成長したことをみんなに見てもらうために、1試合1試合自信を持って、楽しんで、戦っていきたいと思います」。覚悟はとっくに定まっていた。

 その瞬間が近付いてくる。長かった今年の1年が、積み重ねてきた青森山田での6年間が、終わろうとしている。絶対的な信頼関係を築いてきたGK沼田晃季(3年)のキックが上空高く上がると、ボールが地上へと落ちてくる前に、日本一を知らせる主審のホイッスルが聞こえてくる。両手を突き上げ、ピッチに倒れ込んだ三輪。1年越しのリベンジは、ようやくこの日の国立競技場で結実した。

 一緒にセンターバックでコンビを組んできたDF丸山大和(3年)は、“相方”への想いを隠さない。「椋平は去年PKを外してから近くで見てきたんですけど、あのシーンというか、あの時の感情を抱えながらやってきたのを自分も感じていました。自分も“相方”なので責任を感じていましたし、自分のためにも、椋平のためにも、というところで、お互い助け合いながら日本一を獲れて良かったと思います」。

 シーズン序盤の4月。三輪が話していた言葉が印象深い。「去年の(藤原)優大さんが自分にとっての理想というか、『ああいうふうになりたい』という想いはあるので、キャプテンではないですけど、ディフェンスリーダーという立場で、苦しい時とか本当にキツい時こそチームを助けられる選手になりたいと思います」。

 3年ぶりに選手権で日本一を手繰り寄せた青森山田。チームがどんなに苦しい時も、チームがどんなにキツい時も、最終ラインではいつだって4番を背負ったディフェンスリーダーの奮闘する姿が、必ずあった。

(取材・文 土屋雅史)

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