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ファーストゴールとラストゴールはこのストライカー。青森山田FW渡邊星来は誰よりも輝く一番星に

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チーム4点目を決めてスタンドへと走り出す青森山田高FW渡邊星来(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[1.10 選手権決勝 大津高 0-4 青森山田高 国立]

 小さくない不安を抱えながら迎えた、プレミアリーグ開幕戦の先制ゴール。念願の日本一と3冠を手繰り寄せた、選手権決勝のチーム4点目。長いシーズンの最初のゴールと、最後のゴールを決めてしまうのだから、やはり煌めく“星”を持っていると言わざるを得ないだろう。

「初めも自分で、終わりも自分というのは、凄く嬉しいというか、とても感動しています」。

 青森山田高の3年間で目覚ましい成長を遂げたストライカー。FW渡邊星来(3年=刈谷JY出身)の笑顔は、国立競技場のピッチでも最高の形でキラリと輝いた。

 4月4日。浦和駒場スタジアム。プレミアリーグデビューとなった浦和レッズユース戦で、17番が躍動する。前半28分にロングスローのこぼれ球を押し込んで先制点を記録すると、その7分後にも中央を2トップの相方、FW名須川真光(3年)とのワンツーで崩して鮮やかに追加点。後半には決定機がクロスバーに阻まれるシーンもあったが、開幕戦で主役の座をさらってみせる。

「ハットトリック、行けましたね。そこがまだ自分の課題だと思いますし、今日は終わったことなので、明日からまた青森山田が掲げる『1本中の1本』にこだわっていけるよう、努力していきたいと思います」。そう言いながらも、こみ上げてくる笑顔は隠せない。華々しい活躍で、渡邊のシーズンは幕を開けた。

 5月の中断前まではリーグ戦7試合で4ゴール。FWとしての仕事を明確な結果でこなしていたが、夏前あたりから少しずつ雲行きが怪しくなっていく。圧倒的な得点力で日本一に立ったインターハイでは、大会を通じて2得点にとどまり、プレミアの舞台でもゴールから見放される時期が続く。

 スタメンを外れることも多くなり、自信を失い掛けていたタイミングで臨んだ、リーグ首位攻防戦の大一番。清水エスパルスユース戦では、途中出場で3度の決定機に絡んだものの、いずれも得点を奪い切れず、チームも0-2で敗戦。「表面上はメンタルが強い感じを出しているんですけど、実際は弱くて、正直ちょっとサッカーを嫌いになりました」。あるいは、そのまま沈んでいってしまう可能性も十分にあった。

 だが、ストライカーは不死鳥の如く甦る。清水ユース戦の1週間後。久々にスタメンでピッチへ解き放たれた渡邊は、柏レイソルU-18相手になんとハットトリックを達成。「この1週間で『1本中の1本』のシュートを決めることを全力で頑張りました。『自分、ナイス!』って思いました(笑)。よくやったって感じですね」。得点感覚と笑顔を取り戻した17番は、そこから怒涛の3試合連続ゴールを記録。チームのリーグ制覇にきっちりと貢献してみせた。

 改めて自信を纏い直し、挑んだ最後の選手権。先制点を許すなど苦戦を強いられた準々決勝の東山高(京都)戦で、自身にとって大会初ゴールとなる逆転弾を叩き出し、チームを勝利に導いた渡邊は、もちろん大津高(熊本)とのファイナルもスタメンリストに名前を書き込まれる。

 3-0で迎えた後半33分。これがラストチャンスだということは、分かっていた。「最初に交代の番号が見えて、『ああ、もう高校サッカー終わったな』と思ったんですけど、なかなかボールが外に出なかったんですよね」。左サイドでボールを持ったMF小野暉(3年)がクロスを上げる。夢中で飛び込んだ自分の頭が、正確にボールを捉える。

「自分のところにボールが来たので、死ぬ気で合わせに行きました。凄く嬉しかったです」。お得意の“クリロナ”ポーズも大成功。「アレはすごく気持ち良かったです。みんなにもバレない程度に、軽く声を出すぐらいの感じでお願いしていました(笑)」。応援団が陣取るスタンドも一体となった渡邊の一撃が、2021年度の青森山田にとってのラストゴール。日本一の光景は、とにかく最高だった。

 この春からは、東海社会人リーグ1部に所属しているFC刈谷でプレーすることが内定している。「ここからは自分との勝負だと思いますし、浮き沈みなく、一番良い状態で試合に向けていけば、どんどん上に上がっていけると思うので、頑張っていきたいです」。この1年を経験したからこそ、自信を持って新たな世界に飛び込んでいける。その笑顔と得点感覚は、どんなステージでも大きな武器になるはずだ。

「星に願いを込めれば、願ったものが来る」という由来から、母親が付けてくれたという『星来=せら』という名前のように、これからも渡邊は周囲から願いを込められるような、誰よりも輝く一番星を目指して、大好きなサッカーと一緒に生きていく。

(写真協力=『高校サッカー年鑑』)


(取材・文 土屋雅史)

(※青森山田高の協力により、リモート取材をさせて頂いています)
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