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タレント揃いのU-16代表、バランス欠き苦戦

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[5.8 練習試合 U-16日本代表候補 4-2 市立船橋高 市原]

 6日から合宿をスタートしたU-16日本代表候補が今合宿初の対外試合で市立船橋高(千葉)と対戦した。日本のU-16は15歳でG大阪のトップチーム登録をされたMF宇佐美貴史(G大阪ユース)、京都での期待高まるMF伊藤優汰とFW宮吉拓実の15歳コンビ、そして昨年からC大阪U-18で活躍していた181cmのストライカー杉本健勇ら攻撃のタレント豊富な“プラチナ世代”。ただ、AFC U-16選手権(9月28日開幕)まであと5ヵ月足らずで迎えた今回の合宿初戦では、チーム作りの遅れを感じさせた。

 1本目と2本目でメンバーすべて入れ替え、GK渡辺泰広(新潟ユース)を除く22人の選手を起用したU-16日本代表候補。システムはともに4-4-2で1本目のメンバーはGKが藤嶋栄介(大津高)。DFは右から宮市亮(中京大中京高)、藤原賢土(藤枝明誠高)、岡本拓也(浦和ユース)、廣木雄磨(FC東京U-18)。中盤はMF望月聖矢(G大阪ユース)とMF堀米勇輝(甲府ユース)が中央に位置し、右MFが神田圭介(鹿島ユース)、左MFを注目の宇佐美が務めた。2トップは追加招集されたFW小川慶治朗(神戸ユース)と宮吉がコンビを組んだ。

 小川、宮吉の2トップに加え宇佐美、神田も元々FWの選手。そして右SBの宮市もチームではFW。また望月と堀米はともに司令塔タイプのレフティと“アタッカー7人”がピッチに立ったU-16日本代表候補は7分、小川のスルーパスで左サイドを抜け出した廣木が左足でクロス。宇佐美のヘディングシュートにまで持ち込む。
 レギュラー組とサブ組を交えたメンバーで戦う市立船橋高の反撃を初招集のCB藤原がきっちり防ぐなど、序盤はそれぞれが攻守で良さを発揮していた。そして20分には宇佐美が左サイドでDF3人をかわし、折り返し。ニアサイドの堀米が流して中央へ転がったボールを小川が詰めてU-16代表候補が先制する。
 だが、“アタッカー7人”が並ぶ弊害か攻守のバランスが悪いU-16代表候補は展開力に欠け、攻撃をやりきれない。逆に市立船橋高の攻撃陣が、スピードを活かして襲い掛かった。21分に右サイドのDF裏を1本のパスで破られ失点。さらに23分には中盤での連係ミスから堀米がボールを失い、そのままカウンター。市立船橋MF鈴木宏樹に2点目のゴールを奪われた。中盤中央のMF2人がともに前線へ上がってしまい、カウンターで背走するような場面の連続。波に乗れないU-16代表候補だったが、26分にカウンターから中央をドリブルで駆け上がった宇佐美が右サイドの神田へパス。神田がPA外から右足を振りぬくと、ボールはゴール左隅へ突き刺さった。
 得点力の高さで同点へ持ち込んだU-16代表候補はこの後、市立船橋の左MF鈴木の個人技に苦しめられた。だが、相手の浅いDFラインの裏をシンプルに突きチャンスも作り出す。33分には宮市の縦パスに抜け出した神田がPAへ侵入。40分は堀米のラストパスに宇佐美が走りこんだ。
 ショートパスでの攻撃がかみ合わずミスでボールを失う回数が多かったことも確かだが、行き詰った際に左サイドで抜群の切れ味を見せる宇佐美が切り札となり、個人技で相手の守備陣を打開。また縦の速い攻撃でチャンスをつくった。攻撃陣は宇佐美を中心に得点の予感を感じさせていた。そして42分、相手DFのミスから宮吉が相手ゴールを破り、3-2。得点力の高さを見せて1本目を終えた。

 2本目はGKはキローラン菜入(東京Vユース)、DFは右から追加招集組の後藤拓斗(横浜FMユース)、高野光司(東京Vユース)、畑本時央(浦和ユース)、山田幹也(G大阪ユース)。中盤の底に土居聖真(鹿島ユース)と鈴木凱士(磐田ユース)が並び、右MFがJFAアカデミー福島からの初の男子代表候補選手・幸野志有人、左が伊藤。2トップには原口拓人(G大阪ユース)と杉本が配置された。その2トップがゴールをもたらす。8分、左サイドの杉本が伊藤とのコンビからゴール前の原口へラストパス。この決定機はシュートミスで逃したが直後の9分だ。杉本が右サイドを力強い突破で破るとラストパスを原口が左足で合わせリードを広げた。
 ただ、この後は選手の動きが全くなく、ボールも動かずに攻めあぐねる時間が続く。前半は左サイドで宇佐美が決定的な役割をしていたが、後半左サイドを任された伊藤はテクニックは見せるものの、相手を打開しきれない。また杉本の突破も止められ、パスも相手DFの網にかかった。幸野が鋭い動き出しから中盤、前線を必死に走り回るものの、その動きを活かすこともできなかった。得点を奪った9分から41分に伊藤がループシュートを狙うまでシュートゼロ。すべてサブ組メンバーとなった市船橋に攻め込まれる場面が目立った。2本目にCBでコンビを組んだ高野と畑本が安定した守りを見せていたものの、攻撃は行き詰まり、サイド攻撃もほぼ皆無。CKは1度も得られなかった。
 練習機会が限られているとはいえ、露呈した不安。池内豊監督も「動き出しの速さ、量が足りない。中学生(幸野)が一番動けていたが、もう2、3人増えればもっと(攻撃のバリエーションが)多くなるけど。また、ビルドアップがまだまだだし、守備意識ももっと高く持たないといけない」と厳しい言葉が口をついた。
 今回の合宿はあと3日。チームは守備のポジショニングとプレッシャー、またそれを打開する攻撃づくりに取り組む予定だ。来月のウクライナ遠征は18人を招集し、チーム固めを進めていく。だが、意志の疎通を欠いたこの日の試合ぶりからは準備が順調に進められているとは言い切れない。

(取材・文 吉田太郎)

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