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クラブ側が引き起こした東京Vサポ“7時間半座り込み”

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[12.6 J1第34節 東京V 0-2 川崎F 味スタ]

 ゴール裏の東京ヴェルディサポーターが試合終了後待ち続けた小湊義房常務取締役が姿を現したのは、午後4時20分の試合終了から7時間が経過した午後11時20分頃だった。
 12月の寒空の中、“事件”とも言えるサポーターの「7時間半座り込み」はなぜ起こったのか? 16位で最終節を迎えた東京Vは3位の川崎Fと対戦。前半26分にMF福西崇史が一発退場した試合は、粘りを見せながらも0-2で敗れた。勝ち点37から上積みできなかった東京Vに対し、勝ち点2差の17位・千葉が逆転勝ちをおさめたため、千葉が15位に浮上。東京Vは同勝ち点の磐田を得失点差で下回り17位へ転落し、J2への自動降格が決まった。

 試合終了後、約1,000人の東京Vサポーターが「緑の血流れるラモス氏に強化を託して建て直せ」や「求む!プロの経営者、プロの強化部」、「選手、スポンサー、サポーターは犠牲者だ」などの横断幕を掲げ、萩原社長、そして実質ナンバー2の小湊常務取締役との話し合いを要求。帰路につかずスタンドに居残った。だが、東京Vサイドは萩原社長が会場を離れていたこともあってか「(今後)状況が変わりうることについて簡単にしゃべるのは適切ではない。(チーム側が話をしたとしてもサポーターが)2,000人いたら2,000人の受け取り方がある。フロントの考えをまとめてからでもいいのではないか。この場では冷静な話し合いはできない」と大勢のサポーターと向き合って話し合うことを拒否。サポーターの代表者と小湊氏とが会場本部で行った話し合いで意見を聞き入れたが、サポーターの大半が求める小湊氏とのスタンド前での話し合いについては「話し合いは(12月21日に味スタ内で行われる)ラウンドテーブルで」と拒否の姿勢を貫いた。

 東京Vは営業担当者を帰路につかないサポーターの下へ送り出し「(大勢とではなくサポーターの)代表10名との話し合いを行うのは」など提案。数百人のサポーターが居残るという事態の収拾を図ったが、逆に「千葉や浦和は同じようなときに社長さんが出てきてサポーターと話をしていた。なぜこの場に出てこれないのか」「10人だけに責任を負わせられない」と厳しい声が飛んだ。試合終了から4時間、5時間と経つ中、人数は減っていったが10代の少年少女や幼児まで約200人もが小湊専務がスタンド前に出てくることを待ち続けた。
 試合終了から5時間半後、午後10時が過ぎ、東京Vサイドによる「味スタの使用時間は午後11時までなので撤収を」という要望に対しては、当然のように「受け入れられない」、「小湊(常務)が出てくれば終わる」、「(営業担当では)収束できないのだから上司(小湊専務)を呼べ」と居座り続けた。

 平行線をたどっていた問題が急転動き出したのは終電間際でほとんどのサポーターが自宅に帰ることができなくなった午後11時20分頃。さすがに小湊氏が表に出なければ収束しないと感じたか、クラブサイドは小湊氏をはじめ、会場に残っていたスタッフが一列となってスタンド前に姿を現した。そして「我々は無駄に時間を使っていた訳ではない。スタッフと今後へ向けた話を重ねていた。じっくりと意見をまとめて、ラウンドテーブルで話しましょう」とマイクを使ってサポーターに問いかけた。 
 決して納得していなかったサポーターサイドだったが「ラモスさんを強化部に入れて欲しい」、「選手の“ゼロ提示”に関してもう1度キチンとしたプロセスを踏んで次のチーム編成の権限を持つ人(来季監督)の意見を反映して考えて欲しい」、「今まで以上のビジョンが必要」、「もう1度魅力あるプロクラブになるように」などと小湊専務らクラブスタッフに思いをぶつけた。もっと早く、的確な説明、対応がクラブ側からあれば7時間以上に及ぶ「混乱」、或いは東京Vスタッフが口にした「失態」までにはならなかっただろう。だが、クラブ側がサポーター側の決意を深く感じ取れていなかったことも、事態の収束を遅らせたのは間違いない。
 最後に謝罪の弁を述べた小湊氏は萩原社長とともに出席するラウンドテーブルまでにクラブの考えをまとめ、改めて話し合うことを約束。試合終了から7時間半近く経った午後11時40分頃にようやく事態は収束した。
 
(取材・文 吉田太郎)

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