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[大学MOM38]中央大FW林容平(2年)_“燃料切れ”寸前で起こした奇跡

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[大学マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.22 関東大学サッカー1部最終節 中央大 2-1 慶應義塾大 西が丘]

 体力は半ば尽き果てていた。後半ロスタイムに突入してから間もなく3分。ただ、主審の笛と同時に優勝の可能性が消えることを中央大の誰もが良しとはしていなかった。
 慶大の正確でスピード溢れる攻撃に何度もあわやの場面をつくられた。ただ、そのたびに守備陣がスーパークリアとも言えるプレーでピンチを防ぎ続けた。「まだ終わるわけにはいかない」。全員のその思いが背番号9の左足に乗り移った。後半48分、右スローインを受けたFW林容平(2年=浦和ユース)が鋭い反転から中央へと鋭く切れ込む。そして左足を振りぬくとボールは弾丸ライナーでゴールへと突き刺さった。

 「周りも見えていなかったし、何も覚えていない。打ったら入った」と林。だが、ゴールを確認するや否や一直線ベンチへ、チームメイトへ向かって走り出した。「普段(足が)遅いのに、『あの時のオマエは追いつけなかった』と言われました・・・。(体力が残っていなかったのにも関わらず)ちょっとはしゃぎすぎて・・・ハーフウェーラインに戻るのも苦しかった」。優勝の可能性を残すためには勝つしかなかった中央大。夢をつなぐ劇的弾は、リミットが切れるギリギリの状態で放たれた渾身の一撃だった。 

 林は前半、自らの内容に全く満足していなかった。試合開始前の強雨によってピッチが濡れていたせいか、ファーストタッチが乱れるなど、思うようなプレーができずにいた。前半17分にはシュートのこぼれ球を押し込むだけに見えたシュートを枠の外へ外していた。「みんなDF頑張ってくれているのに、オレのせいで負けるんじゃないかと。でもみんな『オマエのことを信じている』と言ってくれていた。取り返したいというのはあった」。その気持ちを誰もが引き分けを確信しかけたロスタイムに生まれたゴールへとつなげた。

 大学入学直後から名門のレギュラーを獲得し、U-19日本代表にも選出されていたのが昨年の春。今季はゴールを量産するFW鈴木寛一(4年=浦和東高)の影に隠れてきたが、ラスト4試合で6発の大暴れ。勢いも加味されていた昨年の活躍とは違い、自力もつき、今やリーグ屈指と言えるほど相手にとって恐いFWとなっている。「今の方が安定感があると思う」と自信を覗かせる林。この日のゴールは優勝にはつながらなかったが、12月19日開幕の全日本大学選手権でもゴールを連発し、今度はチームを優勝へ導く。

(取材・文 吉田太郎)

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