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[天皇杯]満身創痍のG大阪・GK松代が好セーブ。今季限りでの引退を表明

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[1.1 天皇杯決勝 G大阪4-1名古屋 国立]

 聖地の空は気持ちよかった。まさに最高のフィナーレ。G大阪のGK松代直樹はチームメートに胴上げされ、何度も宙を舞った。今季限りで引退を決意していた男は、怪我を乗り越えて先発し、日本一へ大きく貢献した。

 「ここまでいい流れできていたので、とにかくその流れを途切れさせないようにと思っていた。ドクターをはじめ、トレーナーがほんとに一生懸命、足を治してくれたからここに立てた。感謝してます」

 35歳のベテランは満身創痍で試合に出場していた。準決勝前に右ひざと左足首を負傷。29日の準決勝・仙台戦は欠場した。この日もまだ100%ではないが、「90分だけ痛みが止まってくれれば」と痛み止めを飲んでピッチ立った。

 1失点こそしたが、長身のケネディと何度も競り合い、怪我を感じさせないプレーを披露した。現役最後のプレーという感傷に浸るよりも、とにかくチームのためにと体を張った。インフルエンザで欠場した藤ヶ谷はもちろん、仙台戦で勝利に貢献しながらこの日は先発を外れたGK木村の思いも背負い、ゴールマウスを守った。

 引退はすでに一部報道で報じられていたが、本人はシーズンがすべて終了するまでは“真実”を口にすることはなかった。だが試合後、自ら口を開き、胸中を明かした。

 「実は、今季で引退を決めていました。ただ天皇杯の元日まで来れると信じて、この場で勝ってからみなさんに報告したいと思っていました。僕自身の中でリーグ最終戦だったり、早くから報告するのは集中が切れてしまう恐れがあるし、周りから“お疲れさま、お疲れさま”と言われると集中が途切れてしまう恐れがあったので(言わなかった)。いろんなプレッシャーがかかっていて眠れない日もあったけど、今日の朝は目もしっかりさめて、お天気もよくて、いい気持ちでピッチに立てた。幸せでした。家族も来てくれて、勝てて良かった。プロ生活は見てもらえなかったけど、亡くなった父にも最後しっかり戦えるようにお願いしていた。父にもいい報告が出来て良かったです」

 今後はG大阪のジュニアユースのGKコーチに就任する予定。GKとしても人間的にもすばらしい選手を育てるつもりでいる。若手選手からも慕われた良き兄貴分は、最高の形でサッカー人生を終え、最高の形で“第二のサッカー人生”をスタートさせることになった。

<写真>G大阪GK松代
(取材・文 近藤安弘)

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