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[高校新人戦]「技」の静岡学園再興へ、ドリブル駆使の2発と粘りで藤枝明誠撃破:静岡

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[1.31 静岡県高校新人大会中部地区決勝 藤枝明誠 1-2 静岡学園 藤枝明誠G]

 平成21年度静岡県高等学校新人サッカー大会中部地区大会決勝が31日、藤枝市の藤枝明誠グラウンドで行われ、第88回全国高校サッカー選手権8強の藤枝明誠と静岡学園が激突。静岡学園が2-1で勝ち、優勝した。
 
 「技」の静学と「前へ」の藤枝明誠。それぞれ時間は限定されていたが、両校が持ち味を発揮した一戦だった。序盤は均衡した展開だったが、静学が得意の個人技で藤枝明誠の守備陣に風穴を開ける。まずは15分、右サイドに位置する10番のMF大島僚太(2年)が絶妙なステップワークから繰り出すドリブルで中央突破しPAへ進入するとラストパス。ボールを受けたMF村重亮太朗(2年)が左足のコントロールショットをゴール左隅へ沈め、先制した。
 さらに敵陣で攻め続ける静学は24分には左サイド、コーナー付近でボールを受けたFW篠原研吾(2年)がゴールライン際で鮮やかなボールコントロール。飛び込んでくるDFを3人、4人と軽やかにはずすとそのまま豪快な右足シュートをゴールへと叩き込んだ。地区大会とは思えない、数百人の観衆が訪れていた会場はこの一撃でどよめきに包まれた。

 静学はボールの取りどころが曖昧で単発なプレッシャーのみの相手をドリブルで確実に外し、MF秋山一輝(1年)とMF星野有亮(2年)ら中盤の選手が自由にボールを進めていく。それでも27分に相手選手との接触でエース格の大島を欠くと、途端に攻撃にブレーキがかかった。逆にメンバー交代で中盤を組み替えた藤枝明誠は30分、敵陣でインターセプトしたCB片瀬連(2年)が左サイドを縦に抜けるとその折り返しを3分前に投入されたばかりのMF鈴木孝輔(2年)が右足シュートを叩き込み、1点差に詰め寄る。

 静岡学園は33分に星野のスルーパスに反応したMF久保田遼(2年)がシュートへ持ち込むが、これをGK青山直樹(2年)にブロックされると後半は前線からアグレッシブに相手を追い回した藤枝明誠の前に静学は全くボールを運べなくなった。逆に守備から「前へ前へ」と押し寄せる藤枝明誠は相手にシュートチャンスすらつくらせず、選手権で唯一の2年生レギュラーだったMF原口祐次郎(2年)と小柄なテクニシャン、松村悠平(2年)を中心に一方的に攻め続けた。3分には松村の直接FKがゴールを襲い、7分にはFW高橋祐樹(1年)がドリブルでPAへ侵入。ただ、静学はDF小針優貴主将(2年)や金大貴(2年)が粘り強いディフェンスを見せ、飛び込んでくる相手をギリギリのスライディングタックルで仕留めていく。そしてゴール前に立ちはだかるGK一ノ宮聖(2年)がビッグセーブで相手にゴールを許さない。

 藤枝明誠は何度か相手DFの背後をとる場面もあったが、25分に松村が放った決定的なシュートはGK正面。そしてロスタイムには片瀬が右サイドを破るが走りこんだ鈴木へのラストパスは再び一ノ宮の好守に封じられ、同点に追いつくことはできなかった。

 静岡学園は昨年のメンバーだったFW鈴木健太とFW廣渡剛太(ともに2年)がともに不在。そのほかにも中盤・最終ラインの軸候補となる選手が負傷で欠場していた。対する藤枝明誠もFW杉山周平(2年)ら主力候補の半数が不在の中での試合だったが、それでも静学は選手権全国8強の相手に黒星をつけた。
 昨年は年代別日本代表候補を複数擁するなど期待されていた静学だが、プリンスリーグ東海こそ3戦目からの怒涛の7連勝で2位に食い込み全日本ユース選手権に出場したが、その後負傷者が続出したこともあり選手権では県大会を突破することができず。個人で局面を打開できる選手を揃える大型チームだったものの、川口修監督に言わせると、昨年は勝負に対するこだわりが強すぎたことで静学らしい、ドリブル・ショートパスを駆使した本来のサッカーをピッチ上で披露できなかったという。硬さが自分たちのプレーを制限させてしまい、「らしくない静学」は勝負どころで強さを発揮できなかった。

 それだけに今年はその反省を生かすこと。指揮官は「今年は(観客に)また見たいと思わせるサッカーがしたい。学園の技術のレベルは『ハンパない』と印象付けるサッカーをしたい。後半(テストのために)メンバーを変えすぎて流れがよくなかったが、きょうのゴールはドリブルが絡んだいいゴール。(メンバーは大きく入れ替わったが)今年はドリブラーが多いし、学園らしいサッカーができると思う」。選手の可能性を広げるために今大会はすでに30人以上の選手を起用。公式戦の舞台で自分たちの武器がどうすれば通用するかを引き出している。

 静岡学園の練習と言えば早朝5時半からリフティングとドリブルのメニュー。今年は自分たちが遣り通してきたこと、自信のあるサッカーに立ち返り勝負する。目標は全国の頂点。小針主将は言う。「きょうの内容はまだ全然ダメ。ただ、全員の意識が変わってきている。昨日、3年生を送る会で自分が言ったのは新人戦から全てのタイトルを取るということ。県で勝つこともだけど、今年は全国で勝つことを目指す」。今年は「技」を徹底し、昨年全国で1勝もできなかった静学を再興する。

<写真>ドリブルで切れ込む静岡学園FW篠原(中央)。左サイドを独力で打開するスーパーゴールも
(取材・文 吉田太郎)

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