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[全国総体]延長前半に怒涛の3連続ゴール!市立船橋が7度目の「夏の王者」に!!

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[8.7 全国高校総体決勝 市立船橋 4-1 滝川二 与那城総合公園陸上競技場]

「夏のイチフナ」沖縄の夏制す! 平成22年度全国高校総合体育大会「美ら島沖縄総体2010」は大会最終日の7日、うるま市の与那城総合公園陸上競技場で決勝を行い、通算7度目の優勝を狙う市立船橋(千葉2)と初の決勝進出を果たした滝川二(兵庫)が激突。1-1で突入した延長前半にMF藤橋優樹の勝ち越しゴールなど3点を挙げた市立船橋が4-1で勝ち、2年ぶり7回目の優勝を果たした。

 史上初の沖縄開催となった全国総体。史上最もアツい夏の栄冠は、最多優勝回数を誇る市立船橋が獲得した。石渡靖之監督を3度胴上げした市立船橋のCB平尾優頼主将は優勝インタビューで「自分たちの思うようなプレーできていない時間帯もあって慌てたけれど、最後に点を取れて優勝できてうれしい」。6月下旬に父・秋吉さんを亡くしていた平尾主将はこの後、あふれ出した涙で言葉が続かなかった。

 試合開始前から強く吹き付けていた風に加えて強雨が降ったり止んだりを繰り返した決勝戦。集中力を持続することも難しい一戦の決着は、1-1でもつれ込んだ延長戦前半についた。6分、市立船橋は右サイド後方からのFKを延長開始から投入されたばかりのキッカー・MF河崎敬がゴール前へ正確なボールを配球。PAでの競り合いのこぼれ球に反応した10番・藤橋が体を寝かせながら右足ボレーで撃ち抜くと、GKの指先を抜けてクロスバーの下側を叩いたボールは、1バウンドしてゴールネットへと吸い込まれた。

 累積警告のため準決勝出場停止で「みんなに決勝へ連れてきてもらった。みんなに恩返ししようと思っていた」と振り返るエースのゴールで勝ち越した市立船橋は、運動量が明らかに落ちた滝川二を一気に飲み込む。勝ち越しゴールからわずか2分後の8分には、右サイドを抜け出した藤橋の折り返しに反応したMF石原幸治が貴重な3点目をゲット。さらに10分には途中出場の2年生MF菅野将輝が獲得したPKをMF今瀬淳也が右足で沈め、2年ぶりに「夏の王者」へ返り咲いた。

 走力で上回った延長戦の3連続得点で勝利したが、苦しい試合だった。前半半ば頃から、正確なパスとトラップでPAまでミスなくボールをつなぐ滝川二にペースを握られた。そして後半14分にはMF谷口智紀のスルーパスで抜け出したFW浜口孝太主将に鮮やかなループシュートを決められて痛恨の失点。それでも「決勝が初めてのチームをまとめきれなかった。20分を過ぎてからの残り15分、ボク自身甘くないと思っていたけれど、みんな勝ちを意識しすぎた」と浜口主将が残念がったように、初Vへのプレッシャーに苦しんだ滝川二に対して、現3年生が1年だった08年を含めて6度の優勝を知る市立船橋は劣勢にも慌てなかった。

 後半25分、迷いが出たか、PAからシンプルなクリアのできなかった滝川二DFからボールを奪った石原が左サイドを破りラストパス。ファーサイドの菅野が丁寧に折り返すと今大会得点王を獲得(計7得点)した2年生FW和泉竜司が右足でゴールを破り同点に追いつく。そしてその後は平尾を中心した“堅守のイチフナ”が本領を発揮。前後半各10分の延長戦を含め1点も与えなかった。

 市立船橋の石渡監督は「先制されたゲームでとても厳しい中、最後まであきらめることなく戦ってくれた。取り返した段階でいけるぞ、と。1試合1試合成長してくれて逞しくなった」と評価。昨年、全国大会に1度も出場できず低迷した市立船橋は、新チームも新人戦県準々決勝で全国的には無名の敬愛学園に敗れ、JFAプリンスリーグ(U-18)関東1部では優勝争いに絡むこともないまま9位に終わるなど不振を脱することができなかった。
 全国舞台を知らない選手たちは今大会も苦戦が予想された。だが、初戦で1月の全国高校選手権準優勝の青森山田(青森)を2-1で下すと、3回戦では同大会優勝の山梨学院(山梨)を4-1で撃破。強豪を突破しながら逞しく成長していく。そして試合終了2分前の決勝ゴールで勝った準決勝・桐光学園(神奈川1)戦、リードを許しながら追いつき延長で爆発した決勝と“イチフナらしい”勝負強さを発揮。技術面で上回る相手の攻撃を耐え、逆に1チャンスを活かして勝ち切るなど「どこよりも強かった」市立船橋が、劇的な延長戦勝利で名門の偉大な歴史に新たな1ページを加えた。

(取材・文 吉田太郎)

平成22年度全国高校総合体育大会「美ら島沖縄総体2010」

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