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[C☆voice_30]東京大FW久木田紳吾「東大ということで注目されるのはいいモチベーション」

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 大学サッカー界の注目選手にその時どきの課題や目標について聞く連載企画「College star voice」。第30回は東京都リーグ1部で“堅守速攻”を目標とした東京大に所属し、来季のファジアーノ岡山入団が内定している主将・FW久木田紳吾選手です。Jリーグ初の東大出身Jリーガーということで、注目を集めている久木田選手が、自身について丁寧に語ってくれました。東大進学の経緯、そしてJへ向けての抱負とは?

―今日の試合(2-1・玉川大)を振り返って。
「先制点取って勝てたのは良かったのですが、もっと決めなきゃいけないところがありました。でも結果は出て、とにかく勝てたので良かったと思います」

―自身の持ち味はどこですか?
「スピードと対人の強さ。シュート精度ですね。今日は良くなかったですけど」

―では、久木田選手ご自身のことについて教えて下さい。東大に入学した時からプロでやっていくという意識はありましたか?
「ずっとプロは憧れとしてありましたけど、高校に上がる時点で大津高と熊本高があって、その時点ではプロになれるっていう確信もなく。その前年にベスト8まで行った高校もあったんですが、そっちに行っても強豪校の選手に負けるんじゃないかと思って。

 それで、熊本高に行ってサッカーを頑張りましたが、全部県のベスト8止まりで、国体も僕の代からU-16になっちゃって出場出来ず、何も声がかかることもなく。一般入試しかなかったので、サッカー以外にやりたいことを探さなきゃいけないかなと思っていました」

―そんな中でなぜ東大を?
「大学を決めるときって、ある程度、将来どういう職業かを鑑みてやるじゃないですか。それが僕はサッカー以外になくて。東大は1、2年の内は教養課程といって、全員が同じことをやって、3年から専門分野に行くので2年間考えられる余裕があるというのもありました。あとは単に日本一の大学ということで東大を受けました」

―両親からの勧めなどは?
「いや全然。両親はスポーツの国体選手とかで。父がラグビーで母がバスケなんです。運動能力は授かったかもしれないですけど、頭は自分で努力してのものです」

―受験ではどのくらい勉強を?
「受験期は1日9時間は勉強しました」

―これまで勉強に費やした時間とサッカーに費やした時間のどちらが長いですか?
「22歳までのトータルだったらサッカーの方が長いと思います。中学校の時とかは、勉強は授業中だけで自主学習は全然。中学も高校も塾は行ったことはないです。受験も独学ですね」

―大学では3年時から専門分野にいくということで工学部都市工学科都市計画コースを選択されましたよね?
「結局大学1、2年やってみても、サッカーよりいいなって思えるものはなかったんですよね。それでどうしようかなって思って。その時点で一番興味がある勉強の分野のところに行こうと思って。都市工学科で街づくりを選択しました。結構スケールの大きいことをやるので、物理とかナノレベルのことをやるのは合ってない気がして、もっと街とかに出て街づくりをするって方が自分の性に合ってるって思ったので選びました」

―具体的にはどんな勉強を?
「設計もやりましたし、グループディスカッションで関東圏の交通なら交通に絞ってどういうプランで都市圏をつくるかとか、そういうのをやりました」

―設計をやりつつ、サッカーでも上を目指してきたと……。
「そんな思ってるより全然高度じゃないですよ(笑)」

―そんな中でプロを目指したわけですが、周囲の友人は皆、優良企業とかに就職しますよね。それでも自分は『プロになる』と?
「そうですね。やっぱり不安定だし。でも自分は、仕事を選ぶとき好きなもの基準で『サッカーよりいいものはないな』ってサッカーを選んだので。

 そもそも大学に入って、色んな社会人を見て、色んな仕事してる人を見ましたけど、デスクワークとか考えられなくて。研究はちょっとは考えられますけど、やっぱりつまらないなぁと思って。外で体を動かすほうが根本的には好きだから、若い内しか出来ないですし、プロの方がいいなと思って決めました」

―では就職活動は?
「一切してないですね。でも大学院の勉強はしてましたよ。一応保険として受けておこうかなと思ったので。今年1年でプロがだめだったら、大学院に行くか、来年留年して就職するかという風に決めていましたし、大学院は東大の都市工学を受けるつもりでした」

―そんな中で、来季の岡山入団が内定しましたが、なぜ岡山に決めたんですか?
「7月に鹿島にも水戸にも練習に行って、岡山にも行ったんですけど。岡山の練習参加が1週間の予定が2週間に延びた中で、8月の中旬?下旬くらいにオファーをいただいて、9月に入ってサインして正式に決まりました。鹿島と水戸の練習に行って、『もう1回練習に来なよ』と言ってくださったんですけど。岡山から一番最初にオファーを頂いたのもありますし、思ったより条件も良かったので」

―最初にオファーがきたから決めた?
「最初に誘ってくれたからっていうのもありますし、話を聞いて必要とされているんじゃないかなと思ったので。GMの方に球際の強さだったり、スピードだったり、バネがあったり、体制が崩れてもゴールの枠にボールを持っていく技術もあるし、点に絡む位置で出来ると思うからって言って頂きました」

―岡山に惹かれたところは?
「練習に参加してみて、岡山って本当に若いチームで28歳の人が長老って言われてるくらいだから若くて。それに、関西の選手が多くてみんな面白いし雰囲気が良くて、すぐに溶け込めました」

―やっているサッカーについてはどうですか?
「ファジアーノって、J2でも去年とか下の方で戦っていて、やっているサッカーが東大でのサッカーと割と合ってる。チームの置かれている位置が東大と似ているし、個で負けちゃう中でどう勝っていくかとか。すごい自分に合っていたので」

―東大初のJリーガーというところが注目されていますが、サッカーで見て欲しいという気持ちは?
「当然ありますけど、有名になるのは悪くないことだと思ってますし、プロ選手は見られてなんぼってところがあると思うので。注目してもらえるのは、東大初というのが原因であれ、いいことだと思っています。自分の中では注目される分、プレーをしっかりやらないとなと、いい意味でモチベーションになっています」

―Jでの抱負は?
「あまり自分がレベルの高いところでやっているわけではないので。自分がどこの位置でどういうプレーでやれるのかっていう明確なものが自分の中でないので。とにかく試合に出て、点決めて、チームの勝利に貢献するっていうのは自分の中で明確な目標としてイメージ出来ています」

―やはりゴールというのを強く意識?
「どこで使われるかわからないので。SHとかも言われるので。SHだったら点にも絡めますけど、ストライカーってとこよりも求められるものが違う。DFもやらなきゃいけない。まずはチームに貢献したいです」

(取材・文 片岡涼)
連載:「College star voice」

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