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[全日本ユース(U-15)]名古屋U-15、崩壊危機から脱し日本一へ。“大人のサッカー”で無失点優勝

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[12.29 全日本ユース(U-15)選手権決勝 京都U-15 0-2 名古屋U-15 国立]

 名古屋グランパスU-15が11年ぶりに“冬の王者”に輝いた。近年、好素材をそろえながら覇権奪回を逃していたが、ついに成し遂げた。そこには中学生ながら“大人のサッカー”に目覚めた意識改革があった。

 「守備の意識が強くなりました。以前は無理に点を取りに行っていたけど、少しずつ大人のサッカーができるようになりました。前は5-0や6-0のサッカーをして、やられることがあったけど、1-0や2-0で、勝つことを意識してやるようになりました」

 ボランチの石川大貴(3年)が“秘訣”を明かした。これまではチーム全体が攻撃の意識、ゴールを奪いたいと欲求が先に立ち、カウンターを食らっていたという。東海リーグなどでは大量点は取るが、失点が多い試合が続き、チームは攻撃陣と守備陣でバラバラだった。エースでU-16日本代表のFW北川柊斗(3年)は「夏くらいまではまとまりがない感じだった。一人一人がバラバラで、チームとして勝てるチームではなかったです」と崩壊危機にあったことを明かす。主将の森勇人(3年)は「FWが守備に行っているのに、DFがついてこなかったり……。自分勝手に前がプレスに行って、相手に反撃されてました」と具体的に振り返った。

 そんな中で挑んだ8月の日本クラブユース選手権では、決勝トーナメント1回戦で鹿島に敗れた。これで完全に目が覚めた。このままでは日本一になれないと一念発起し、ミーティングで守備について話し合うようになった。遠征バスや移動の電車などでも話し合うようになったそうで、石川は「それまでは話す時もペナルティーエリアに入って、どう崩すかばかりを話してたけど、最近はどう守備をするかという話が増えました」と明かす。

 北川や森らその世代で屈指の能力を誇る攻撃的選手までも守備意識を高めたうえ、チーム全体で連動した守備を身に付けた。「今はDFの声で(プレスに)行っています」と森。この大会では組織的守備が“熟成”され、決勝を含めた全5試合を無失点(得点は15)で終えた。「一人一人のカバーリングの意識が増えて、助け合うことができた。無失点で優勝できて良かったです」とCBの中島康輔(3年)は笑顔を見せた。

 「痛い思いをして崖っぷちだった選手たちが、力を合わせるようになった。個性が強い選手で、やりたいことだけをやってきたやつらが、みんなでやらないといけないんだということが、やっと分かってくれた。このメンバーでやれるのは最後ということで、いいチームとしてまとまってくれた」

 高田哲也監督(41)は“やんちゃな教え子”たちの成長に目を細めた。今大会のメンバーには中学3年生が15人いるが、9人がユースに昇格する。「一回一回の積み重ねで、大きな自信になっていく。ユースにいくもの、高校でサッカーをやるものと分かれるが、頑張ってほしいですね」。『個の力』と『組織の力』の融合が、さらにチームを強くすることを知った名古屋イレブン。進路は分かれるが、この経験を活かしてJリーガーという夢へ邁進する。

[写真]表彰式で喜ぶ名古屋イレブン

(取材・文 近藤安弘)

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