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[大学選手権]関西大・櫻内、3日前に亡くなった姉に捧げる日本一

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[1.5 全日本大学選手権決勝 中京大1-2(延長)関西大 国立]

 姉に捧げる日本一だった。延長戦の末、中京大を2-1で振り切り、43年ぶりの頂点に立った関西大。国立のピッチに立った選手たちの腕には喪章が巻かれていた。

 DF櫻内渚(3年)の姉が29歳の若さで2日に他界した。決勝に向け、大阪から東京入りする前日に起きた不幸だった。

 ずっと病気だったという姉について櫻内は「長くないということは聞かされていたので、そういうことも受け入れる準備はしていました」と落ち着いて話す。家族には「サッカーを頑張って」と見送られた。

 「こっち(東京)に来てから、みんなの前で『葬式にも出られないから、お土産に優勝を持って帰りたい』と話しました」

 絶対に負けられない。「選手たちは櫻内のためにも勝ちたいとまとまった」と島岡健太監督は言う。チームが一丸となって勝ち取った優勝。主将のFW藤澤典隆(4年)は「後期リーグの頃から苦しんでいたのを見ていたので。最後をこういう形で締めくくれたのは本当に良かった」と言葉をかみ締めた。

 延長後半10分の決勝点は、櫻内が起点になった。櫻内のパスから右サイドを抜け出したFW安藤大介(2年)がゴールラインぎりぎりからクロス。これにFW奥田勇太(1年)が頭で合わせ、優勝を決めた。

 「納得いくプレーはできなかったけど、最低限のことはできました」。作陽高2年だった06年度の全国高校選手権は準優勝に甘んじた。初めての日本一。「これでいい報告ができます」。櫻内はふっと笑顔をのぞかせ、帰りのバスへ乗り込んだ。

(取材・文 片岡涼)
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