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3度目ハットでゴンに並ぶ、岡崎「どれだけ取っても越えられない」

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[1.17 アジア杯B組 日本5-0サウジアラビア アルラーヤン]

 サウジの息の根を止めた。日本代表FW岡崎慎司(清水)が国際Aマッチ3度目となるハットトリックで圧勝劇の主役になった。

 まずは前半8分だ。MF柏木陽介が後方に落としたボールをMF遠藤保仁がワンタッチで前線に浮き球のスルーパスを送る。「陽介の落としもゆっくりだったし、ちらっと見て走り出した」。絶妙のタイミングでDFのオフサイドトラップをかいくぐると、前に出てきたGKをあざ笑うように右足でボールを浮かせて頭上を越し、無人のゴールに蹴り込んだ。

 「ああいう1対1ではいつも余裕がないんだけど、今日は(GKが)出てくるのを待って浮かすことができた」。冷静沈着な一発。すでにグループリーグ敗退の決まっていたサウジアラビアは、これで完全に意気消沈した。

 「裏を取りやすいというのは聞いていた。裏を狙わないと、相手を引かせられないし、自分の特徴を出していかないとと思っていた。足元足元になると、自分の入り方も良くならないから」

 MF松井大輔の負傷に伴い、アジア杯3戦目でめぐってきた待望の初先発。過去2試合、スペースの限られた中で足元のパスが多かったチームは、岡崎の飛び出しで活性化した。

 これで生きたのが1トップを務めるFW前田遼一(磐田)だ。前田が「(岡崎は)動き出しがすごく速い。僕は空いたスペースに入ることができて、すごいやりやすかった」と言えば、岡崎は「感覚的に合うと思っていた。あまり一緒にやってないけど、前田さんのプレーは特別だし、よく見ていた。ああいう選手とやりたいってずっと思っていた」と力説する。

 岡崎と前田がそろって先発したのは09年9月9日のガーナ戦)以来、2度目のこと。それ以外に同時にピッチに立っていたのも昨年10月8日のアルゼンチン戦の6分間(岡崎先発、前田途中出場)、13日のシリア戦の10分間(前田先発、岡崎途中出場)しかない。にもかかわらず、2人のコンビネーションは抜群だった。

 前半13分、MF香川真司が左クロスを上げると、ゴール前でDFの注意を引き付けた前田の背後から岡崎が飛び込む。体を投げ出したダイビングヘッドで2点目のゴールネットを揺らした。同44分には遠藤の縦パスを前田がスルーし、岡崎がワンタッチで前線に流す。ゴール前に抜け出した香川は決め切れなかったが、決定機を演出した。

 ハットトリック達成となった後半35分のゴールは、まさに2人で奪った。前田の縦パスを受けた岡崎が鋭いターンで前を向き、左足を振り抜く豪快な一撃。「先発でもできるぞっていうのを見せられたと思う」。圧巻の3発で、自身が得点した試合は13戦13勝と“全勝神話”も更新した。

 兵庫県宝塚市出身の岡崎にとって、1月17日は特別な日だった。16年前のこの日、阪神・淡路大震災が起きた。「意識はしていなかったけど、頭のどこかにはあった」と言う。しかも、この日は第2子誕生の予定日でもあった。「まだ連絡はないけど、そういう意味でも気持ちが入っていた」と力を込めた。

 09年10月8日の香港戦(6-0)、同14日のトーゴ戦(5-0)に続く1試合3得点。国際Aマッチで3度のハットトリックはFW三浦知良(横浜FC)と並ぶ歴代2位(最多は釜本邦茂の8度)の記録だ。さらに、歴代8位タイの国際Aマッチ通算21得点となり、あこがれの元日本代表FW中山雅史(札幌)にも並んだ。

 「どれだけ取ってもゴンさんは越えられない。偉大な選手ですから」。本人はそう言うが、国際Aマッチ53試合で21得点の中山に対し、岡崎は38試合目。背番号9の後継者として、偉大な先輩を越える日もそう遠くないはずだ。

[写真]ハットトリックを決めたFW岡崎

(取材・文 西山紘平)

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