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快勝にも浮かない表情、悩める香川をかばうザック

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[1.17 アジア杯B組 日本5-0サウジアラビア アルラーヤン]

 快勝劇の中で、ひとり表情が浮かなかった。この日も日本代表MF香川真司(ドルトムント)にゴールは生まれなかった。

 チャンスはあった。前半44分、MF遠藤保仁の縦パスをFW前田遼一がスルーし、FW岡崎慎司がワンタッチで流す。ゴール前に抜け出した香川はGKと1対1の絶好機を迎えたが、トラップでGKをかわすと、ここでまさかのコントロールミス。ボールは流れ、シュートを打ち切れなかった。

 後半26分にもDF長友佑都のスルーパスに反応したが、トラップが大きくなり、GKがキャッチ。ボールが足に付かず、ピッチに足を滑らせるシーンもあった。

 正確な左クロスで前半13分の2点目をアシストするなどチームの勝利に貢献しなかったわけではない。MF柏木陽介と流動的にポジションを入れ替え、左サイドから中に絞ったり、最終ライン近くまで下がってボールを受けるなど、攻撃のリズムをつくった。

 しかし、ドルトムントで見せている圧倒的なパフォーマンスには程遠いのも確かだ。「チームとして結果をみんなが残しているし、チームとしての手応えはあると思う。あとは個人的にやるべきことをやらないといけない。それを自分のなかで整理して、決勝トーナメントに臨みたい」。ドルトムントでプレーしているトップ下とは異なるポジションへの戸惑いのか、背番号10のプレッシャーなのか。今大会の香川が精彩を欠いているのは間違いない。

 MF松井大輔、MF本田圭佑の負傷により、香川が本職のトップ下に入るかと思われた。しかし、ふたを開けてみれば、これまで通りの左サイド。準々決勝以降、本田圭が戻ってきたときのことを考え、サイドのポジションに慣れてほしいというアルベルト・ザッケローニ監督の思惑もあったかもしれない。

 「(香川の)コンディションは上がってきている。チームのために献身的なプレーも見せてくれているし、私が指示した通りにやってくれている。左気味にスタートして中へ入ったり、外に抜けたり、そういう動きを使い分けてくれている」。指揮官は「足りていないのはゴールだ。今はチームのためにやってくれているので、ゴールはもっといい場面で決めてくれればと思っている」とかばったが、心配はしていないと強調する言葉が逆に深刻さも感じさせる。

 5-0の圧勝の陰で消えない一抹の不安。悩める男がどこかで開き直り、本来の輝きを取り戻さない限り、アジア王者奪還はかなわない。

[写真]日本代表MF香川

(取材・文 西山紘平)

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