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悪夢から歓喜へ、今野の“バースデーキック”で韓国に1997日ぶり勝利

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[1.25 アジア杯準決勝 日本2-2(PK3-0)韓国 アルガラファ]

 浮き沈みの激しいバースデーゲームも、最後はハッピーエンドを迎えた。試合終了間際の延長後半15分に追い付かれ、2-2で突入したPK戦。2-0とリードして迎えた先攻4人目、DF今野泰幸(F東京)の渾身のキックが死闘に終止符を打った。

 「決めれば僕で終わるというのは分かっていた。気持ちを込めて蹴った」。今野の右足から放たれたボールがゴール右に突き刺さる。その瞬間、05年8月7日の東アジア選手権(1-0)以来、約5年半ぶりとなる日韓戦勝利、そして2大会ぶりの決勝進出が決まった。

 今野にとって、この日は28歳の誕生日だった。「負けたら最悪の誕生日になるし、勝って誕生日を自分で祝いたい」。試合前日、そう話していたが、試合は最悪の形で幕を開ける。

 前半22分、自陣からのロングフィードに反応したMFパク・チソンがPA内に走り込み、今野がチェックに行った。肩でチャージすると、パク・チソンが転倒。ここで主審の笛が鳴り、PKを示した。

 「主審には『ボールを見てなかった』と言われたけど、ちゃんと見ていたし、ゴールラインを使ってゴールキックにしようと思った。あれを取られちゃうと……」。そう悔しさをあらわにしたが、「ファウルしないで有名な俺なので。アジアのレフェリーは難しいと思ったし、今大会、自分のファウルは少なかったと思うけど、あれをPKにしちゃいけない。反省材料です」と唇をかんだ。

 とはいえ、切り替えるのは簡単ではなかった。「個人的に落ちてしまった」。大事な先制点。前半のペースは日本がつかんでいただけに、悔やまれる失点だった。それでも、13分後の前半36分にFW前田遼一が同点ゴール。「すぐに(前田)遼一さんが取ってくれて、1失点目は忘れて、0-0の状況だと思ってやった。チャンスをつくってくれると信じてやっていた」。1-1のまま試合は延長戦に突入。そして、今野の思いが通じるように延長前半7分にMF細貝萌が勝ち越し点を奪った。

 日本の勝利は目前だった。延長前半ロスタイムからDF伊野波雅彦が途中出場し、5バックに変更。逃げ切り態勢に入り、2-1のまま時計が進んだ。ところが、延長後半15分、韓国の意地と執念が同点ゴールを生み、試合はPK戦にもつれ込んだ。

 精神的に追い込まれながらも、一方的な展開で制したPK戦。4人目のキッカーとして勝利を決めた今野はゴールネットが揺れるのを確認すると、チームを救った守護神のもとへ駆け寄り、ユニフォームを脱ぎ捨てたGK川島永嗣の胸に飛び込んだ。

 「(川島)永嗣が止めてくれたので、プレッシャーもなく……。いや、プレッシャーはあったけど、楽にさせてくれた。永嗣のおかげです」

 後攻の韓国の1人目、2人目を連続セーブした守護神に感謝した今野に川島も「あれだけ体を張ってくれているし、同じ気持ちで戦っている。僕らだけでなく、そういうところがこのチームの強さだと思う」と応じた。

 川島は「今ちゃんの誕生日がいい誕生日になって良かった」と白い歯を見せた。今野にとって忘れることのできないであろう誕生日。同時にアジア杯準決勝という真剣勝負の舞台で宿敵・韓国に競り勝ち、1997日ぶりとなる白星を飾った日本サッカー界にとっても、歴史的な1日になったのは間違いない。

[写真]日本代表CB今野

(取材・文 西山紘平)

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