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指揮官の信頼に応えるPKセーブ、川島「自分がやる番だと思った」

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[1.25 アジア杯準決勝 日本2-2(PK3-0)韓国 アルガラファ]

 一度たりともゴールを割らせなかった。2-2のまま突入したPK戦。GK川島永嗣(リールス)がゴール前に立ちはだかった。

 先攻の日本は1人目のMF本田圭佑がゴール右に決め、成功。「こっちが先に点を取った時点で、自分が止めれば、いい流れになると思った」。後攻の韓国1人目、MFク・ジャチョルのキックを横っ跳びでセーブ。力強いガッツポーズを見せた守護神のビッグプレーがチームを救った。

 2-1で勝利目前だった延長後半15分にまさかの失点。直後にタイムアップの笛が鳴り、流れは完全に韓国に移ったかに思われた。「最後に失点して流れも良くなかった。1本目を止めることができれば、いい形でいけると思った」。有言実行のセーブで流れを変えた。

 2人目も日本はFW岡崎慎司が成功。そしてMFイ・ヨンレのキックをまたも川島が弾き出した。右手を突き上げ、人差し指を天にかざす。3人目は互いに枠を外し、4人目のDF今野泰幸が決めて勝負あり。3-0。PK戦では異例のスコアで決勝進出を決めた。

 「フィールドの選手があれだけ体を張ってやってくれていた。最後に失点したけど、最後は自分がやる番だと思った。自信? 自信とかを考える前に、止めることしか考えてなかった」

 名誉挽回の試合だった。13日のグループリーグ第2戦・シリア戦(2-1)で一発退場となり、17日のサウジアラビア戦(5-0)は出場停止。代わって出場したGK西川周作が完封勝利に貢献した。出場停止明けとなった21日の準々決勝・カタール戦(3-2)で先発に復帰したが、前半13分、後半18分といずれもニアサイドを破られ、2失点。特に2失点目は角度のない位置からFKを直接決められ、自身のポジショニング、壁の作り方などに明らかなミスがあった。

 アルベルト・ザッケローニ監督が試合後に「2失点目には4つのミスがあった」と語気を強めるなど、GK交代の可能性も取り沙汰された。韓国戦前日の公式会見では指揮官に対し「カタール戦では川島のパフォーマンスが不安定だったが、GKを選ぶ基準は?」という厳しい質問も飛んだ。

 それでも、ザッケローニ監督はこの日も川島を正GKに指名した。「GKの選考基準は変わらない。良くないからといって、(大会の)最中に代えるのは良くない。いいGKはミスが少ない。しかし、ミスがない選手は存在しない」。そう力説した指揮官は試合前、川島に直接「私はお前を信頼している。落ち着いてやれ」と声をかけた。

 監督の思いに応えたい。この日も2失点し、最終ラインと呼吸が合わない場面もあった。それでも、最後の最後で川島がヒーローになったのは、指揮官と選手の間に信頼関係があったからに他ならない。

 昨年6月29日の南アフリカW杯決勝トーナメント1回戦。やはりPK戦までもつれ込んだが、川島は1本も止めることができず、ベスト16敗退が決まった。「(パラグアイ戦から)変えたことは特にないけど、冷静にできたかなと思う」。210日ぶりに果たした完璧なるリベンジ。「ここまで厳しいゲームを乗り越えてきて、次、勝たないと意味がない」。29日の決勝の相手はオーストラリア。アジア王者を決めるファイナルでも“守護神・川島”が日本のゴールを守り抜く。

[写真]PKを止めるGK川島

(取材・文 西山紘平)

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