beacon

PK勝利の陰の立役者は“キャプテン”遠藤、「自分が蹴らないで終わるのは初めて」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[1.25 アジア杯準決勝 日本2-2(PK3-0)韓国 アルガラファ]

 “キャプテン”がチームに落ち着きをもたらした。2-1の勝利目前で迎えた延長後半15分の失点。まさかの展開で突入したPK戦の前にMF遠藤保仁(G大阪)がチームメイトに声をかけた。

 「自信を持って蹴ろう。外したら、それはしょうがない。それよりも迷いながら蹴る方が良くない」

 だれもが「精神的にきつかった」と振り返る状況で、遠藤は冷静だった。延長後半12分にMF長谷部誠が足をつって交代していたため、その後は遠藤がキャプテンマークを巻いた。PK戦の先攻・後攻を決めるコイントスに勝って先攻を選んだのも遠藤だった。

 「試合前も延長戦の前も僕がコイントスに負けていた。ヤットさんが先攻を取ってくれてよかった。PKは先攻のチームがいいから」と長谷部は言う。先攻1人目のMF本田圭佑が決め、GK川島永嗣が韓国の1人目を止めたことで、流れは日本へ傾いた。

 PK戦は4人目で決着が付いたが、当然、PKの名手である遠藤は5人目に控えていた。「PK戦で自分が蹴らないで終わるのは初めて」。そう笑った遠藤は「自分が蹴らないで勝てるのが一番だけど、自分に(順番が)来ても決める自信はあった」と淡々と言った。

 延長前半6分にFW岡崎慎司がPKを獲得した場面では、本田圭に声をかけ、13日のシリア戦(2-1)に続いてキッカーを譲った。「自分が蹴っても良かったけど、(本田)圭佑も得点が欲しい状況だと思うから」。結局、本田圭のキックはGKに弾かれ、こぼれ球をMF細貝萌が押し込む形となったが、遠藤のチーム全体を見渡す冷静さと選手個々の心情を思いやる気配りがチームの結束を高め、選手の能力を最大限に引き出している。

 世代交代を進めるザックジャパンの中で唯一の黄金世代であり、チーム最年長でもある。目に見えるリーダーシップはなくとも、その存在は若い選手たちにとって大きな心の拠り所だ。「先制点を与えるのは良くないけど、先制されても落ち着いてできるのはチームが力を付けてきたからだと思う。みんな決勝に行きたいという強い気持ちを持っていた」。アジア王者奪還まであと1勝。04年大会優勝メンバーである遠藤がチームをアジアの頂点へ引っ張っていく。

[写真]日本代表MF遠藤

(取材・文 西山紘平)

▼関連リンク
アジア杯2011特集

TOP