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アジア杯制覇、ザッケローニ監督の帰国会見要旨

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 2大会ぶり4度目のアジア杯優勝を果たした日本代表は31日、成田空港着と関西空港着の2便に分かれて帰国し、アルベルト・ザッケローニ監督が成田市内のホテルで記者会見を行った。
以下、会見要旨

アルベルト・ザッケローニ監督
「決勝から2日たち、日本がどうして勝てたのかをふと考えた。試合内容もそうだが、カギになったのはチームが一丸となれたことだと思っている。監督としては戦術やゲームプラン、中東のチームがどうやって戦ってくるか、あるいは韓国やオーストラリアがどう戦ってくるか、そういう研究はしてきたが、どうして勝てたのかを考えると、チームが一丸となったからだと思う。選手だけでなく、他のスタッフ、用具係やトレーナー、テクニカルスタッフまで、関係者のすべてが欠かすことのできないチームだった。素晴らしい3週間を過ごせた。勝つと、選手や監督がクローズアップされがちだが、スタッフを含めて全員のチームスピリットが素晴らしかったということをこの場で言いたい。また、レベルが上がれば、細部を詰めていった方が勝つというのが私の持論だが、その意味でも勝てたと思う。そして、サポーターにもお礼を伝えたい。現地でもたくさんの人が応援してくれたし、テレビを見て応援してくれている人が大勢いるとも聞いていた。とても心強かったし、チームだけの勝利ではなく、日本全体の勝利だと捉えている」

―成田で大勢のサポーターから出迎えられた感想は?
「代表監督という素晴らしい役職に就いて間もないが、昨年10月に韓国から戻ってきたときも温かく迎えてくれた。今日もたくさんの人に迎えてもらえて、最高にうれしかった。こうしたサポーターからの愛情をエネルギーの源として、これからもやっていきたい」

―準備段階から難しい大会だったが、どう割り切ったのか?
「確かに大会前の調整には苦労したが、こうした大会に強いチームが臨むときはだいたいがスロースターター。昨年のW杯のスペインもそうで、最初は良くなかったが、優勝した。フィジカルコンディションを上げるのに苦労したが、1つ後悔というか残念なのは、決勝に臨むにあたってみんなのフィジカルコンディションが100%じゃなかったということがある。今回は若い選手を招集したが、自分のキャリアにとってチャンスだとすぐに捉えてくれた。いい選手たちだが、それ以上に頭のいい選手がそろっていた」

―なぜ一丸となれたのか?
「一丸となった瞬間を振り返ると、ヨルダン戦の引き分けのあとからシリア戦にかけての期間。スタッフの役割を確認しようとして、特に素晴らしかったのは選手たち。ベテランというのは適切ではないかもしれないが、代表経験の豊富な選手が引っ張っていこうとしてくれた。特にキャプテンの長谷部は経験の豊富な選手と若い選手の融合を効果的に図ってくれた。苦労を共にし、一緒に乗り越えたことで強くなれたと思う。これまで長く監督をやっているが、ここまでベンチスタートの選手が途中からピッチに入って結果を出すチームは見たことがない。大切なのは選手全員、チーム全員が1つの雰囲気になってやっていくこと」

―途中出場の選手が次々と結果を出したが、選手交代の基準は?
「この大会に向けてずっと言ってきたのは成長。若い選手に経験を積ませると言ってきた。その意味で日程的には良かった。グループリーグで中東のチームと3試合やり、準々決勝で地元のカタールと完全アウェーの厳しい試合を戦い、準決勝で韓国という素晴らしいチームと対戦した。韓国は日本と並んでアジアで最高のサッカーをする。そして決勝はオーストラリアというまったく違ったサッカーをするチーム。経験があり、完成度の高いサッカーをしてきた。チームが成長する上で、さまざまなタイプのチームと対戦することには大きな意味がある。控え選手のことを確信したのは、シリア戦の前のウォーミングアップを見たとき。そのとき、彼らが試合に入ってやってくれると確信した。大会中に酒井、槙野、松井、香川というケガ人が出てチームを抜けたが、森脇がそれまで槙野のやっていたムードメーカー的な役割をやってくれて、彼のおかげで結束できた」

―アジアの大会を戦ってみて、アジアのチームの印象は?
「結果云々でなく、個人的にいい経験になった。W杯でしか見たことのなかったアジアのサッカーを体感できた。アジアは面積が広い。いろんなチームがあって、それぞれのスタイルがある。アジアのレベルはいいところに来ていると思う。日本と韓国がそのリーダーとなる存在。イタリアの友人、関係者にはアジアのサッカーはこれからますます成長すると話している」

―大会中に一番うれしかったこと、苦しかったことは?
「考えてみると、ほとんどがうれしいエピソード。悔しかったのはオウンゴール(公式記録はヨルダンの得点)で点を取られたとき、レッドカードが出て1人少なくなったとき。また、大会期間中に3人の選手が誕生日を迎え、みんなでお祝いできた。大会中に永田、岡崎に子供が生まれ、それを祝えたのもうれしかった」

―今後、日本サッカーに必要なことは?
「2011年は大切な年。そのスケジュールの中で結果と成長を追求して、チームを伸ばしていきたい。結果を出すにはチームの成長が不可欠。7月のコパ・アメリカではまったく異なるタイプのサッカーをしてくるチームと対戦できる。さらに成長できるだろうし、日本代表にとって大きな財産になる。アルゼンチンに勝って、韓国とアウェーで引き分け、アジア杯で優勝して、これから日本と対戦する国は気が抜けないし、どんなチームも真剣に来る。それにしっかり対応しないといけない。我々の最大の目標はW杯予選突破にある。結果と成長を求めながらやっていきたい。コンフェデレーションズ杯のような大きな大会に出場できることも我々にとっては大切だ。このグループの向上心は素晴らしいし、心配なくやってくれると思う。Jリーグでやっているサッカーに私の要求を加味することは簡単ではないが、選手は私の言ったことを吸収して、ピッチで実践する能力に優れている」

―カタールは開催国として成功したと思うか? また中東のチームの印象は?
「出発する前はカタールという国についてなかなか想像できなかったが、行ってみていいところだなと思った。運営面も素晴らしかったし、ホテルの環境も素晴らしかった。ピッチコンディションは練習場も試合会場も素晴らしく、いいコンディションで臨めた。中東のチームについては、サウジアラビア以外は気持ちやフィジカルを前面に押し出したサッカーをしてくるなと思った。特に日本戦ではカウンターを中心に日本の良さを消してきた。非常にオーガナイズされていて、自分たちのサッカーを明確に持ち、それをピッチで実践していた」

―今大会で監督のコンセプトをチームに浸透できたか? また足りないところは?
「足りないのは経験だけ。Jリーグも素晴らしいサッカーをしているし、Jリーグでやっているサッカーをベースにしているが、Jリーグにはいないようなチームと対戦するときに戦い方を修正するというのがコンセプトとしてある。選手は私の要求通りに実践してくれた。初戦の前に哲学やベースとなるチームコンセプトを植え付けようとした。繰り返しすることはできなかったが、選手は集中してよくやってくれたと思う。プレースピードを上げること、チャンスの数を増やすこと、いい内容のプレーを繰り返すということをよくやってくれた」

―今大会を通じて監督自身が成長できたことは?
「私の持っているサッカー文化がさらに向上したと思っている。これまでやってきたリーグ戦と違うし、欧州CLとも違う大会形式で、対戦相手もこれまでやったことのない相手だった。非常にいい経験ができたと思っている」

(取材・文 西山紘平)

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