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小倉会長、「是非またアルゼンチン代表や南米の代表チームとの試合を実現させたい」

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 日本サッカー協会は18日、公式HPで連載されている小倉純二会長のコラム「今日もサッカー日和」を更新した。第16回は「コパ・アメリカ出場をやむなく断念」という題で寄稿されている。

以下、公式HPよりコラム全文

▽コパ・アメリカ参加を断念

 残念ながらコパ・アメリカの出場を断念せざるを得なくなりました。昨日(5月16日)の朝7時頃に南米サッカー連盟(CONMEBOL)に出場辞退の意を伝え、その後、Jリーグ、Jクラブに連絡しました。このコラムで出場するという見通しをお伝えしたにもかかわらず、残念な結果となり、楽しみにしていたファンの方には大変申し訳なく思っております。

 ご存じの通り、コパ・アメリカ参加については紆余曲折がありました。強豪ひしめく南米サッカーにあって、歴史と権威あるコパ・アメリカに参加できるということは、日本代表チームの強化にとって極めて重要な機会です。そこでJリーグの協力を得て7月にリーグ戦の中断期間を設けてもらい、日本代表をコパ・アメリカに送り出すことにしていました。

 しかし、3月11日の東日本大震災で状況は一変。Jリーグは3月12日~4月22日までリーグ戦を中止せざるを得なくなりました。そのため7月にJリーグをあてなければ今季の日程を消化できなくなり、主力選手を代表として招集することが困難になってしまいました。この状況でコパ・アメリカに参加することが適当かどうか、難しい判断が要求されました。

 CONMEBOLや南米の各国協会と日本は古くから友好関係にあり、また、長年にわたって日本からコパ・アメリカに参加させてほしいというオファーをして快諾してもらった経緯があります。ですから、出場できないと一方的に辞退するわけにはいかず、主催連盟や大会組織委員会の判断を仰ぐ必要があるとして、4月上旬、私は急きょ南米に飛び、CONMEBOLやアルゼンチンサッカー協会の関係者らと面会して、日本の情勢や被害を受けたJクラブの実態など、非常に困難な状況である旨を説明しました。

 しかし、CONMEBOLもアルゼンチン協会(AFA)、大会組織委員会(LOC)も「何としても日本に参加してもらい、困難に直面している人たちと共にいるということを伝えたい」と、日本の参加を強く促されました。

 今回、日本とメキシコがコパ・アメリカに招待されたわけですが、ゲストチームに関しては、クラブは選手をリリースする義務がありません。ですから、欧州の所属クラブに対しては、CONMEBOLも責任を持って交渉すると約束してくれました。我々としても、その熱意と、震災を受けた日本に対する温情に応えたいと、海外でプレーする選手を過半数以上招集し、コパ・アメリカに出場するにふさわしいチームを編成することを条件に、再度、調整に入りました。

▽選手の休養が重要

 4月下旬、CONMEBOLの理事会と総会に招待され、私は再び南米を訪れました。CONMEBOLは、理事会の決定事項として、 FIFAに対してコパ・アメリカの日本人選手の招集に善処してほしい旨を文書にし、まずは、会議の場でブラッター会長に手渡しました。また、日本人選手が所属する欧州のクラブチームに対しても、CONMEBOLとアルゼンチン協会が連盟で同様のレターを送付しました。

 その後、原(博実)技術委員長が、選手が所属するクラブと交渉するため、ヨーロッパに渡りました。チームによってはリーグ戦の終盤を戦っているところ、あるいは終了して契約交渉に入っているところなど、非常に多忙な時期です。

 しかし、CONMEBOLからの要請文もあり、我々のために時間を割いてくれたといいます。また、どのクラブも日本の状況やCONMEBOLの意向を十分理解してくれたそうです。

 しかし、来年はヨーロッパ選手権があるため、来季のリーグの開幕が早くなり、コパ・アメリカが開催される7月は練習や合宿の時期と重複してしまうことになります。欧州のクラブチームで今やチームの主力となりつつある日本人選手。十分休養を取らせることが重要だというのが大方のクラブの見方でした。

 選手は、昨年のFIFAワールドカップが終了してから所属チームに戻ってリーグ戦を戦い、さらにAFCアジアカップに出場しました。その後、またクラブに戻ってプレーしてきたわけです。来月行われるキリンカップについては短期決戦ですからそう支障はないとしても、コパ・アメリカは約1ヶ月の長期のトーナメント戦。しかも相手は強豪ばかりですからね、相当タフな試合になるでしょう。

 交渉にあたってはクラブの状況を理解しつつも、原委員長は、それぞれの選手の個別の休暇のスケジュールを含めて説得にあたりました。時間のない中ですし、CONMEBOL等に対してもズルズル返事を延ばすこともできないため、クラブに対しては5月15日までに招集の可否を示してもらうよう要請し、日本時間の16日まで待つことにしました。

 その結果、Jリーグと取り決めたコパ・アメリカ登録選手の過半数の人員をクラブから送り出してもらう許可を得ることができず、我々としてはコパ・アメリカに出場するにふさわしいチームを編成できなくなり、やむなく出場を断念せざるを得なくなってしまいました。

▽南米サッカー連盟、アルゼンチンサッカー協会の尽力に感謝

 実は5月13日にCONMEBOLのデルーカ専務理事から心のこもった手紙をもらいました。そこには、日本がコパ・アメリカへの出場に向けて最大限の努力をしていることを労い、「(コパ・アメリカの舞台で)日本代表が競技場に入場していく姿は、この大会の中で最も感動的なものになるのは疑う余地もなく、私個人的な願いでもありますが、是非、その光景を目にしたい」とつづられていました。

 また、日本の試合が行われる予定だったフフイでは、日本からの観客が不自由なく移動できるよう、町のあらゆるところに日本語の表示や説明文などを設置しているとも書かれていました。

 CONMEBOL等の関係者の熱い思いは4月から2度にわたって南米を訪れた際にも痛感しましたし、まさか、出場の可否について結論を下すギリギリの段階でCONMEBOLの責任者からこのような手紙をもらうとは思ってもいませんでした。

 1999年のコパ・アメリカに日本代表として出場した秋田豊さんも、「あの素晴らしい南米サッカーの雰囲気を是非、日本代表に味わわせてやりたい、参加させてほしい」と主張していましたし、日本代表の一員である遠藤保仁選手(ガンバ大阪)ら多くの選手がコパ・アメリカを経験したいと切望していただけに、その望みをかなえられなくて本当に無念です。楽しみにしていたファン・サポーターの方にも心からお詫び申し上げます。

 そして、日本の出場を最後まで支援してくれたCONMEBOL、AFAをはじめ、南米の各国協会、大会組織委員会の関係者にもそのご尽力に対して感謝申し上げます。コパ・アメリカという歴史と権威ある大会を見送らざるを得なくなったのは残念ですが、是非またアルゼンチン代表や南米の代表チームとの試合を実現させたいと願っています。

財団法人 日本サッカー協会
会長 小倉純二

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