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F東京は痛恨ドローも新システムに光明、羽生が“オシム流トップ下”で攻撃に変化

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[5.22 J2第13節 FC東京1-1湘南 味スタ]

 FC東京は開始1分にFWロベルト・セザーが移籍初ゴールを奪い先制したが、あとが続かず。後半33分には一瞬の隙を突かれて失点した。ホームで痛い1-1引き分けとなったが、攻撃面では“光明”があった。平山相太、高松大樹と相次いでセンターフォワードを怪我で欠いたため新システムを採用したが、これがまずまず機能した。

 この日はシステム上は4-2-3-1で、セザーが1トップ、トップ下に羽生直剛が構えたが、事実上の0トップといるもので、前線が流動化した。セザーが引いたり開いたり、また羽生が最前線に構えて裏に抜け出したりと、これまでどこか手詰まり感のあった前線にダイナミックさが生まれた。昨年途中まで標榜していたボールも人も動くスタイルが復活した。

「特に前半は久々に“サッカーをしていた”という実感がある。こうやってやっていこうというのが見えた。効果的なボール回しでチャンスを作ることができたと思う。迷いなく、ボールを最後まで運んで行けたし、そこがスムーズになった」

 羽生が手応えを口にした。今までは長身FWを活かしたポストプレーやクロスから打開しようとしていたが、引いて守ってくる相手だと、前線のスペースが狭くなり、崩せなかった。また相手にも読まれやすかった。前線が流動的なシステムだと、相手守備網に捕まえられにくくなり、中央からも仕掛けることができるようになった。2点目は奪えなかったが、大熊清監督も「これでいくという方向性ははっきりしたと思う」と前向きに話した。

 そんな新システムのキーマンは、やはり羽生といえる。代名詞と言える“考えて走る”プレーが、前線の動きを生んだ一番のポイントだ。「まずは相手の背後を突くことを心がけた。ヘッドアップした時に、セザーがスペースを使えたり、草民がDFの間に入ってこれるようDFラインを下げる動きを意識した。最初のアクションを背後に持って、そこから足下でつなぐか裏を使うか、バランスを取った」と羽生。そこにはやはり、羽生の原点と言える“オシム流”があった。

「そうですね。それはイメージしていました」と羽生は笑顔をのぞかせた。羽生はFC東京に移籍してからは2列目やボランチに入って、ボールをつなぐ役割をこなすことが多かったが、千葉時代は3-5-2や3-6-1のトップ下を務め、マリオ・ハースや巻誠一郎らFW陣、山岸智や水野晃樹らアタッカーのスペースメイクをこなしていた。当時の“長い距離を走るスタイル”を思い出し、再現してみせた。

「勝てる試合だったし、引き分けに終わったことはもったいないが、光の見えるゲームをしたかった。なんとなくブレずに、チームとしてやっていこうとすることは見えた気がする」

 羽生は新システムに前向きだ。問題は、昨年も同様の細かくパスをつなぐサッカーをしていたが、得点不足に陥ったことだ。ファンも心配しているかもしれないが、一つ違うのは、羽生がトップ下に入っている点。チームは怪我人続出で危機的状況にあるが、“オシム流の本職”に復帰したベテランが、救世主になりそうだ。

[写真]トップ下に入った羽生

(取材・文 近藤安弘)

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