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「チェフが持つ存在感が自分以上でした」。初先発の李は“あと一歩”でゴール逃すも及第点

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[6.7 キリン杯 日本0-0チェコ 日産ス]

 あと一歩だった。世界的名手のGKペトル・チェフから、もう少しでゴールを奪えそうだった。そんな、この日一番の魅せ場を作ったのはA代表戦初先発を果たしたFW李忠成(広島)だった。

 後半33分、左サイドからFW本田圭佑のクロスにFW岡崎慎司がヘディングシュート。チェフに弾かれたが、こぼれ球に李が鋭く反応した。利き足の左足を伸ばしたが、これもチェフの手に弾かれた。観客がどよめく中、李は悔しそうな表情を浮かべた。

「チェフがどうこうより、あそこは決めきらないといけないと思いますけど、相手もすごくうまく寄せてきたし、まあ、チェフが持つ存在感が自分以上でした。左足で押し込んだんだけど、ちょうどチェフの手がそこにあった。手が出てきたというより、ボールのところに普通に手があった」

 197cmの長身GKの武器といえる手足の長さ、そして何より放つオーラ。チェフの微動だにしない冷静なプレーはさすがだった。李は足に当たったと話していたが、公式記録上はシュートにカウントされていなかった。世界的守護神のオーラがそうさせたのかもしれない。李は1月のアジア杯決勝・オーストラリア戦の延長後半4分に、こちらも名手のGKマーク・シュウォーツァーから決勝弾となるスーパーボレーを決めており、「こないだはシュウォーツァーだったので、今度はチェフから取りたい」と意気込んでいたが、わずかに届かなかった。

 この日、FW前田遼一(磐田)が左かかと痛のためベンチスタート。李は国際Aマッチ8試合目で初先発を果たした。新システム3-4-3のセンターフォワードに入り、体を張ったポストプレーと裏への飛び出しを繰り返した。何より、前田からレギュラーを奪うために、ゴールを目指した。結果的に決定機を決められず、シュートも前半に放った1本のみ。だが、李の中には、たしかな手応えがあったという。

 最初は「初めての3-4-3で、ペルー戦の前半を見てて、俺が入ったらどうなるんだろうとけっこう不安」だったようだが、大柄なチェコ選手を相手にしても、それなりにポストプレーが通用したと感じた。「自分の想像のほうが、はるかに強いディフェンダーを想像していた。得点は取れなかったですけど、次につながると思う。自分のプレースタイルを実戦の中で、味方がわかってくれたのが一番大きかったと思う。くさびも入れる回数がだんだん多くなった。自分のプレーを見せる場面が増えた」と、悔しさの中にも充実した表情が見えた。

「結果を求めないといけないけど、内容を見たときに、すごくポジティブで今後に生きるようなパフォーマンスだったと思う。あのシュートが入っても入っていなくても、自分の中では次につながる。もっともっと上手くなって、決めないといけないところで、決められる選手になりたいと思います」

 李は最後まで前向きだった。ゴールはなかったが、A代表で90分間フル出場を果たし、1試合を通じて自身ができること、できないことが、世界レベルで把握できた。それが何よりも大きかったようだ。ブンデス1部のホッフェンハイムも注目する、成長著しいストライカー。この日の90分間を、さらなる飛躍への“糧”にするつもりだ。

[写真]李のシュートはチェフのセーブに阻まれる

(取材・文 近藤安弘)

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